第三話 それは誠に遺憾でござる!! ※掃除回
結果からいうと予想以上の食いつきで了承されました。ヴイさんにそのまま連れていかれるかと思った……。愛されてるね、僕。
そして案の定、断れなかった。いや、あれ無理だよ。尻尾フリフリしててあんなに男らしい人なのに、子犬のようだった。どんな強面の人でもあれはイチコロだよ、きっと。
っと、話が逸れてしまった。まぁそんなこんなで訓練する場所も確保出来たし、順調といえるスタートをきれた。流石に毎日訓練って訳にはいかないけど、定期的には訓練出来そうだ。
そうそう、『双闘大会』は次の碧の月になったら開催されるらしい。今、黒の月に変わり始めて、寒くなってきたので、この寒さが和らいだ頃に『双闘大会』をするって事だね。そっか、この旅を始めて一年経つのか。
最初は、ケルヒと二人でどんな旅しようって話をしてたのに、気が付けば、仲間が増えて、魔王が復活したっていわれたり、こんな僕みたいな平民が、王女様と仲良くなったりしちゃってるし。世の中何が起こるかわからないもんだ。
そして今、僕は獣人の運命を背負っている。あれだけ偉い人の前で宣言したんだから、これで勝てれば奴隷から解放してくれる筈だ。皇帝陛下ほどになれば、そんなの知らん! っていわれたら誰もいい返せなくなりそうだけど、そこは信じるしかない。これでダメだったら僕は獣人と共にいくつもりだ。どんな形であれば最善を尽くす、そんな覚悟で今回は挑もうと思う。
とまぁ時間がちょうど空いたところで何をしよう、掃除しよう♪ レッツクリーニング☆
えぇー、唐突に始まりました。掃除の時間です。本日のテーマはこちらっ!
『飲食店』。食べるところなんだからそんなに気にしなくていいでしょー。どうしても食べ残しとか落ちると綺麗にしきれないじゃーん。それではいけません!
汚れていればそこから菌が繁殖して、食中毒になってしまったり、何より口にするものが汚れていたところから出てくるのって不快でしょ? 繁盛してるお店は必ず衛生面を重視してるのです。
という訳で、掃除スタート☆ といいたいところだけど、まず大事な事なので、先に。これは日常生活でもそうなんだけど、まずは溜め過ぎない。特に水回りの油汚れ! 溜めれば溜めるほど、苦労して、嫌になってしまうのです。それを防ぐ為には、清掃時間の確保と、空いた時間にもこまめに掃除をする。これが一番。理想は毎日少しでもいいから溜まりやすいところを掃除する事。そして、こまめに掃除するのにも適当にやりやすいところだけやっていては意味がなくなるので、全員がわかるようなマニュアルを作りましょう。従業員にしっかり基準を統一させ、どこを重点的にやり、優先順位を決める事が大事です。
清掃をしない時間=汚れの溜まる時間。
これを意識すべきです。それを防ぐ為には、空いた時間だけじゃなく、清掃時間をきっちり確保しなければ汚れは落としきれません。それを怠って、溜まりすぎた結果、僕達みたいな
とまぁ前置きはここまでで。掃除スタート☆
まずは玄関から。入口から汚いお店なんて誰も入らないです。第一印象が大事! 砂埃、泥を『吸引』。泥よけを置いているならこまめに変える。外壁の汚れはいつも通り、綺麗にしたから完璧。まるで新築だぜ! ケルヒの掃除刀が役に立ちました。沈んでるように見えるけど気のせい気のせい。
そしたら次は客席。ここが一番大事です。なんたって客席はお店の人より接している時間が長く、食事をする際には一番気にしなければならない場所だからです。
ポイントはベタつき。
食事をしていた場所はどうしても汚れてしまうので、お客さんが帰る度にきっちり拭きましょう。テーブル拭きはこまめに交換、洗浄。拭く為の布巾が汚かったら汚れを広げてるだけだからね。そしてテーブルのサイドをしっかり拭いてからイスも拭く。結構見落としがちなのがイスの隙間。埃だけじゃなく、料理のカケラが挟まってる事も……。
「子供がそういう隙間に埋め込むのが好きだったりするんだよね」
「……ヴァンさんってお子さんがいるんですか?」
「え、いないよ?」
「「…………」」
えっと、次、次!! といってもこれで最後! そう、厨房だね。ここが綺麗じゃないと料理なんて出しちゃダメ、ダメ!! 万が一にも虫が湧いたりして混入でもしたら最悪だよ。少なくとも僕はそんな店には入りたくないな。それに見える範囲の厨房の内部がピカピカだったら安心しない?
という事でここで登場。『重曹』!! 魔法の粉だぜ。これがあればどんな汚れもイチコロさっ!
コンロの近くは特に油汚れがひどくなるので、日頃からこの『重曹』を使って、重点的に掃除する事を心がけましょう。『重曹』には、色々な使い方があって、粉のまま使ったり、水に溶かしたり、ペーストにしたりと、用途で変化してくる。今回みたいにひどい状態なコンロは、ペーストだ! 油汚れに染み込ませて汚れを浮かせるんだ。ほら、汚れちゃん、もう逃がさないぜ。
「ヴァン、キモい」
「直球でひどい!!」
気を取り直して、次は床! といってもここも『重曹』を溶かした水を散布してゴシゴシ磨くんだ。床にゴミや残飯が残ってしまうと悪臭の原因や、カビ、食中毒の原因にもなってしまう。さらにヌルヌルしてしまうと滑ってしまったりする事もあるから油断しちゃいけない。ちなみにこの水に溶かした『重曹』はテーブル拭きにも使えるから活用するんだぞ☆ っと、今ちょろっと出たけど、残飯。これは必ずその日に処理をしないといけない。理由はもうわかるよね?
「どう、ケルヒ?」
「何言ってるのかよくわかんねぇ」
「話聞いてた? ケルヒって
「いつから同じ枠組みにされてるんだよ! 巷じゃ俺ってヴァンの奴隷扱いだっての!!」
「それは誠に遺憾でござる!!」
こんなやつはほっとこう。残飯は汚れ、悪臭、カビ、虫やネズミなどの害虫、害獣も寄ってきちゃっていい事なんて何もないんだから。そして意外と難しいのがこちら。
掃除の際には必ず水気を取りきる。『重曹』もしっかり残さないようにしよう。白く残ってしまうので。あとは、主にカビと悪臭が出てきちゃうからなんだけど、濡れていると思わぬところで転倒したりする危険性もあるからね。雨の日、床掃除をした時は特に気を付けよう。濡れ布巾と乾いた布巾はセット! はい、みなさんもご一緒に!!
「濡れ布巾と乾いた布巾はセット!!」
「…………」
誰もいってくれない……。
「言うか!!」
「それはちょっと……」
「無理」
そんなこんなに本日の掃除は終了♪ お疲れ様でした!!
あぁいい汗かいたわ。今回はケルヒの掃除刀もルンパもほとんど、使わないで普通に掃除してやったんだぜ。あのままじゃ僕のアイデンティティが失われてしまうところだった。え? もう遅い? そ、そんなまさか。
ごほん、それにしても最近、予約ばっかで依頼をこなせてないんだよね。『双闘退会』も控えているし、狩りにもたまには出るし。これは今後の課題だなぁ。現状、待ってもらっているけど、いつまでも待たせるのは悪いし。けど、これ以上ペースを上げるのも無理だしなぁ。
今の仕事は楽しいけど、このままじゃ依頼人を満足させられないかもしれない。これから対策を考えていかないと……。現状のサービスを維持しつつ、仕事量を増やす。そんな都合のいい方法はないよねぇ。
今後の課題だなぁっと思いながら、ため息をついて、いつもの宿へと帰っていくのだった。
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