第五章 双闘大会編
第一話 いやいや、これもコミュニケーションだよ! さぁ逝こうぜ!!
「とりゃああああああああ!!」
「させません。『守護陣』!」
「その隙に、はい」
「うおっと!?」
ここはギルドの隣にある訓練場で、今、僕達はそこの一部を借りて、二対二の模擬戦を行っている。チームは僕とケルヒ、アイさんとリスさんだ。これは双闘大会のパートナーを選ぶ為に試す、練習試合をしてるんだ。
それにしてもアイさんとリスさんの連携が切り崩す事が出来ない。勿論、殺傷能力のある武器、魔法の使用を禁止してたり、ケガはさせないように制限はあるけど、それを抜かしたとしても、勝てるかどうかわからない実力だ。
変幻自在に武器を切り替えて攻撃してくるリスさんと、的確に攻撃を防ぎ、時には障害物にしたり、リスさんの足場代わりに『守護陣』を出すアイさんの柔軟さは、リスさんのトリッキーな動きをより複雑化させてしまっている。目の前にいるのに近づける気がしない。まともに正面から戦っても翻弄されるばかりだ。
本当ならこちらもケルヒの『
僕は元々が素手、ケルヒが普通の木刀に対して、アイさんの『守護術』は、元々殺傷能力がないし、リスさんは、自由自在に変化させる事で殺傷能力を抑えられるからって理由で『
それにしてもリスさんの『銀闘術』は実に優秀だ。状況に応じて、遠距離の弓、近距離のトンファー。中距離になったら棍にもなっていた。更に驚いたのは、こちらを拘束する為に鞭にもなっていた事だ。あれにはあと一歩でぐるぐる巻きにされるところで危なかった。
本人の使い方次第でどこまででも強くなれる、恐ろしい技だと思う。それを自分の手足のように扱っているリスさんも凄い。おそらく、アイさんを守る為に、相当の努力をしてきたのがよくわかる。アイさんが信用している訳だよ。
「はぁはぁ……」
「ぐあああああ、疲れた」
「だらしない」
「お疲れ様でした」
結果は僕とケルヒの惨敗。これ本気でやったとしてもやばいかもしれない。それほど、二人の連携は完璧だった。
休憩がてら、端っこの座席に座る。ここでは、冒険者同士で決闘も行われたりもする為、観覧席が用意されている。僕達はその端っこで休ませてもらった。
「うーん、『双闘大会』は、やっぱ俺とヴァンか?」
ケルヒが首を捻りながらなんともいえない表情で聞いてきた。
「このままだと、そうなるかな。僕とリスさんでもよさそうだけど……」
「無理。戦いにくい」
「デスヨネー」
「わたしはあくまで補助がメインですからね。これが三人でしたらわたしが入ってもいいのですが」
そうなんだよね。アイさんはあくまで後衛の補助がメインで、リスさんはトリッキーな動きが特徴的だ。特にリスさんと組むとなると、その動きにどれだけうまく合わせるかが鍵となってくる。それが中々難しく、アイさんが自然と出来ているのは、長年一緒に戦ってきたからだ。僕達もそれなりに一緒に戦ってきたが、二人に比べたらまだまだ短い。それなら、一番連携が合っているケルヒが今のところ、一番よさそうなのが現状だ。
「仕方ねぇ、俺が一緒に頑張ってやるか!」
「ありがとう、ケルヒ」
「それにしてもあの巨漢が二人となると、『魔法』だけじゃなく、肉弾戦もこっちが不利になりそうだな」
「うん、軽く背中叩かれたときは吹っ飛びそうになったもん」
実際には、若干吹っ飛んでたんだけど。そこはちょっと恥ずかしいから内緒だよ。
「そりゃあのガタイだからな。腕でも掴まれたらそのまま折られそうだぜ」
「それに『双魔魔法』がどんな事が出来るかもわからないからね」
帝国学園でのクリサンちゃんとセアムちゃんは、『双魔魔法』どころか、身体強化にも魔力をほとんど使っていなかった。純粋な身体能力だけでもあのSクラスでトップクラスでいられるだけの能力があるのだ。あ、勿論、魔法の講義では魔力使ってたけどね。ただ、最小限にしか使わないからどれくらいなのか、見当もつかない。
「まぁ実際に戦ってみないとわからねぇからな。だけど、どんな強敵だって俺とヴァンなら大丈夫だって。まさかあのガビより強いって事はねぇだろ」
「だといいけどね……」
あの皇帝陛下が許可した位だ。相当の自信なんだろう。これまで『双闘大会』で負けた事がないっていってたし、皇帝陛下の魔力にも平気な顔してたしね。
「おいおい、やる前から弱気になるなよ。負ける訳にはいかないんだろ?」
「そうだね、ケルヒの言う通りだ。うん、頑張るよ!」
目的を果たせたし、訓練場を後にする。本番までにもっと連携を深めていかなきゃいけないしその間に溜まってた依頼もこなさなきゃ。やる事がいっぱいだ。
「それじゃあとりあえず、訓練がてら、ひと泳ぎいこっかな? ケルヒも勿論一緒に行くよね?」
「いや、お、俺はちょっと」
「いやいや、これもコミュニケーションだよ! さぁ逝こうぜ!!」
「若いっていいですねぇ」
「リス達と変わらないよ?」
呆れた顔でこちらを見ているリスさんと、妙に優しい笑顔で見てくるアイさん。それじゃあ、頑張ってくるよ!!
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