第七話 優秀さと人間性は比例しない確固たる証拠を見つけた瞬間でしたわ!
「ごきげんよう」
「先生、おはようございます!」
今日も生徒のみなさんは元気でいいですね。ふふ、可愛い生徒達ですわっ。
おっと、申し遅れましたわ。ここは帝国学園。帝国において、優秀な人材のみが集まり、切磋琢磨する、そんな学園です。わたくしはそこで臨時の教師をしております。この学園で臨時とはいえ、教師を出来るというのは大変名誉な事で、わたくし、誇りに思っていますわ!
廊下の真ん中で胸の前に手を握っていると、クスクスとわたくしを見て笑う生徒達。
こらっ! ちょっと、笑うなんて失礼でしょっ!! プンプンしながら後ろ側の扉から担当クラスの教室に入ると、そこでは既に担任の先生が教壇に立って朝の挨拶を始めていた。
ちなみに、わたくしは臨時の教師なので担任の補助を任されてますわ。この担任の補助というのは、授業のサポートから生徒の進路相談。そして、講義使うプリントの作成まで幅広い事をさせていただく、大変やりがいのある仕事です。そんなわたくしの上司にあたります担任の先生なのですが、ご高齢にも関わらず、いつもわたくしの胸ばかり見るのですよ。大変、御高名な方らしく、講義は素晴らしい内容ですが、わたくしから見たらただのスケベジジイです。いつか引っ叩いてあげますわ。
そんなスケベジジイの元で学ぶ生徒達はどんだけスケベなのかというと、実際はそんな事はありません。あんなのと違って、大変真面目ないい子達ばかりです。こちらに入ってくる生徒達は『恩恵』を授かった時に、優秀だと認められた方、または、剣術、勉学など、他の事で帝国より、優秀だと認められた方のみが入学が許されていた、特別な学園。その為、多少プライドが高いクソガキ、もとい、お坊ちゃまもいましたが、帝国に認められるだけの高等教育を受けている方もいらっしゃるので、わたくしの教育のかいもあってか、幼くても物事の分別がつく方が多いのです。
ほら、そんな今もスケベジジイと一緒にわたくしの胸を見ているお坊っちゃま、もとい、クソガキがおります。恩師直伝の螺旋チョークをぶちかましてあげましょうかしら? あらあら、ぶちかます前に目をそらされてしまいましたわ。残念。
そして、学園にはクラス分けがあって、E、D、C、B、Aそして、優秀な中でも特別優秀な子が集まったSクラスに分かれています。まぁ既に察している方も多いかもしれませんが、このスケベジジイが担当するのがSクラスなのです。優秀さと人間性は比例しない確固たる証拠を見つけた瞬間でしたわ!
とまぁ簡単にSクラスの紹介をしている間に朝の挨拶が終わりましたね。そしたらそのまま実技の講義です。教室から出て、訓練場まで移動ですわ。広大な平地、森林、簡易的な市街地までも用意され、そこで実戦形式、模擬戦、団体戦、魔法の試し打ち等、多岐にわたる訓練が出来ます。どれも申請すれば自由に使えるのは素晴らしいのですが、一点、泳ぐ為の川が無いのが唯一の不満点ですわね。身体の基本は水泳。今度、学園長にいってみましょうかしら。
それにしてもこの学園の生徒達は本当に優秀ですわ。まだ十歳足らずで剣術は既に一級品。魔法も巧みに使いこなしてます。既に今の状態でも並の騎士では歯が立たないでしょう。これが帝国の強さの根底。見ててゾクゾクしますわね。せっかくの講義ですからわたくしも参戦させてもらおうかしら?
「はーい、注目くださいませ! わたくしとやる方はいませんか??」
あら、空気が凍りつきましたわ。そして誰も手を挙げてくれません。初日にちょっとやりすぎたとはいえ、これでは向上心が足りませんわね。まぁ、今日はあの兄弟もお休みですし、仕方ありませんか。あの二人はこのSクラスであっても別格ですからね。わたくしでも勝てるかどうか……。
まぁいないのですから仕方ありません。とりあえず、適当な子を捕まえましょう。わたくしの気配を察した生徒達が一目散に逃げ出しました。ふふ、これは鬼ごっこをしたいって事ですわね。さぁさぁ好きにお逃げなさい。
「どの子にしようかしら?」
まずはこの子。状況判断が甘いですわ。敵は真正面から来る訳ではないのですよ。
「ぎゃーーーーーーー!!」
次はこの子。脚が速いのは素晴らしいですわ。けど、自分より速い方がいた時の対処を考えていないのはいけませんね。
「やめてえええええええええ!!」
ふふ、この子もいただこうかしら。あらあら、気持ちで負けてはダメよ。どんなに能力で負けてても気持ちだけは誰でも勝てる事なのですからね。
「トレビアアアアアアアアアン!!」
「そんな事をしておるから誰も相手をしてくれんのじゃよ」
「何かいいましたか?」
「ハァ……。まぁこれで生徒達が強くなっとるのも事実じゃからのぉ。何も言えんわい」
さぁ、まだまだいきますわよ!!
あぁ、有意義な講義でしたわ。それにしても誰も立てないなんて情けない。
「お主も中々の化け物じゃのぉ」
「いえいえ、わたくしなんてまだまだですわ。スケベジジイにはまだ勝てませんもの」
「わしをそんな風に呼べるのはお主だけじゃよ。……それにしても依頼とはいえ、すまんな」
「いえ、これはこれで、中々楽しいですわ。恩師との訓練の日々を思い出します。あの死んだ方がマシな日々、こちらの学園の訓練はまだ甘くてよ?」
「バカモン。これ以上やったらわしの生徒が潰れてしまうぞい。それにしてもその変装は凄いのぉ。事前に会ってるわしですら、未だにお主が男だとは思えんわ」
「ホホホ、やるからには全力でやらせていただきますわ! わたくし、これでも初めてではなくてよ?」
そんなこんなで話をしていると、少しは体力が戻ったのか、チラホラと立ち上がる生徒達。なんだかんだいっても流石の一言ですわ。
「よし、それじゃあ教室に戻るぞい。身体を冷やすではないぞ?」
「「「「はーい!!」」」」
「さて、わしは次の講義の準備もあるから先に行くからの」
「かしこまりました。わたくしは生徒達と教室に向かいますわ」
「うむ。頼んだぞい」
「ヴァン子先生! 私達と一緒に行こー!!」
「はーい! 今そちらに行きますね」
手招きをしてくれている生徒達の元へと駆け足で向かう。ふふ、ホント可愛い生徒達ですわ。そしてここまでくればみなさまもわかりますわよね? 僕だよおおおおおおおおおお!!
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