第十二話 今じゃすっかり新築のような見た目で、依頼者さんもびっくりドン引き! ※掃除回
うーん! 今日もいい天気。さてさて、本日は昨日に続き、お屋敷の掃除の時間だよ! 外装を依頼者と一緒に確認したけど、全く問題なしだった。これで気にしないで中を掃除出来るね!
「問題なしってか、依頼者の顔が完全に引きつってただろ」
「最初の仕分けまでしか見てませんでしたからね。次の日にあれ見たらそりゃ、あぁなりますよ……」
「依頼者の反応が普通。ヴァンが異常」
なんかさ、みんなはっきりとひどい事いってくるようになった気がする……。僕は普通に掃除してただけなんだけどなぁ。あ、そういえばサラさんも最初は褒めてくれてたけど、最後の方は呆れた表情してた。まぁ掃除に慣れてきた頃にはサラさんの部屋もついでに掃除していつもピカピカにしといたからね。サラさんってメイドなのに掃除はそんなに得意じゃなかったもん。食事の片付けとかはいつの間にか終わらせてたり、戦闘もいつの間にか終わらせられたり(気がついたら朝だった)だったけど、唯一掃除だけは僕が勝ってたかも? ふ、この程度の締め付けなんぞ、慣れたものよ。うそうそ! このままじゃ死んじゃうって!!
果たしてこの服の呪いはいつ解けるのだろうか?
おっと、話が逸れちゃった。さて、本日もフルメンバーで掃除をしていく訳ですが、僕とルンパ以外は屋敷の中の仕分けをしてもらい、僕とルンパで掃除をしていきます。みんなと話し合った結果なんだけど、『掃除機魔法』が使える僕と、それに準じたルンパが掃除を中心に、それ以外でゴミを片付けるのが効率的だからだって。決して僕の掃除についていけないって事じゃない筈。そうだよね?
「「「「…………」」」」
「誰か返事して!?」
もう、みんなひどいよ。掃除仲間はきっとルンパだけだね。あぁこの気持ちいいぷにぷにボディー。いつまででも触ってられるよ。けど、いつまでも癒やされている訳にもいかない。それじゃ、掃除開始だ!!
といっても特段、変わった事はないんだけどね。上から下、端から始める等はルンパも既にわかってるし、今更だ。ただ、今回他と違うのはこれ。ベッドのお布団を綺麗にするんだよ。普通であれば天気のいい日に外で干すんだけど、今回はあいにくの曇り。そこで僕の『掃除機魔法』ならお外で干すより清潔に出来るんだよ。今回の合言葉は『UVとたたきと吸引』。意味のわからない単語もあるけど、僕もよくわからないから安心してね!
それではいってみよー!!
まずは、今回の通常掃除をルンパに任せて、お布団掃除は、僕がメインでやっていく。実は、前回の掃除で、ヴァンっていうだけであまり役に立ってないっていわれてカチンときたんだよね! 確かに思い返してみたらゴミの仕分けと雑草掃除位しかしてなかった。何もいい返せなかったよ。今日こそは『
それではまず、お布団の上に優しく両手を置きます。
「『吸引』」
今回の吸引は優しく、布団に吸い付かない程度に弱める。この繊細な制御が最近になって出来るようになってきたんだよ! 魔物もたくさん倒してきたし、魔法ってやっぱ使えば使うだけ制御も出来るようになってくるからね。
「『温風』『UVランプ』」
そして今度は『吸引』を継続しつつ、ダニを殺す為に少し温かい温風を出す。その温度おおよそ六十度。これによって表面のダニを殺しつつ、温風で布団の中の湿気をなくし、ダニの繁殖を防ぐ。さらにここに『UVランプ』を使う事で除菌にも繋がるのだ。
そしてトドメがこちら。高速たたき! 絶妙な力で布団を叩きながらゆっくり、ゆっくり進み続ける。強く叩きすぎると布団の繊維まで傷つけてしまい、弱すぎてはほこりや、ダニの死骸、フンの吸引が上手く出来ず、叩く意味がなくなってしまう。この絶妙な力加減が大事なんです! しかもそれをゆっくりと! 腕が死にそう……。けど、これによって、外で布団を干すより清潔に寝る事が出来るんです! 腕は死にますがね。
今日中に全部の部屋のベッドを掃除しないといけないので、この作業がまさに地獄。結局その作業だけで夕方いっぱいまで掛かってしまった。当然、他のみんなは先に全部終え、ルンパに至ってはその間に、掃除を二周やってた。マジ優秀。
それにしても、この掃除が終わった後の満足感が半端ない。ちなみに僕の掃除において、このベッド掃除が一番人気。どうしても天候の関係や、掃除するにも数が多すぎたり、干す場所にも限りがあるし、ダニを殺すならこの方法が一番。まぁ他の人には真似出来ないけど。
最近では僕が掃除をする日を宣伝に使って、宿泊の呼び込みをする宿泊施設まで出てくる始末。しかもそれで売上がだいぶ違うってところが嬉しいよね!! おかげさまで指名依頼が結構増えたり、定期的な正装契約があったりと嬉しい悲鳴。中でも一番のお得意様はまさかのギルド! 職権乱用して、自分達の掃除を優先させる、恐ろしい組織である。
とまぁ、二日間に渡ってゴミ屋敷の掃除の依頼を終える事が出来た。今じゃすっかり新築のような見た目で、依頼者さんもびっくりドン引き! けど、これで完璧でしょ!?
さて、無事依頼も終わったし、お風呂で汗を流して、ギルド食堂で美味しいご飯を食べたいね!!
今日は、まだ予定があるからとアイさん、リスさんとは現場でお別れ。ケルヒとルンパ、そしてコロの四人でお風呂に向かった。といっても、コロとルンパはお風呂入らないんだけどね? 仕事の後のお風呂って最高だよね!
無事に汗を流して、ギルド寮へ向かうところで一組の騎士? みたいな格好の人達が道のど真ん中で喋りながらこちらとすれ違うように歩いてきた。あれは確か、騎士学校の人達だったかな? その中でも一人だけ後ろを歩いていた男が気になったが、気にせずそのまま素通りして先を歩くケルヒに追いつこうとする。
その時、
「おい、ミスドおせぇぞー!」
耳に入ってしまったその名に思わず振り返る。それに反応して一人遅れていた相手の男もこちらを振り返った。そのままお互いに目が合ってしまう。
ま、まさか? いや、間違いない、領主様に似ている。前に壁ごしにだけど、一度だけ話をしたあのミスド様だ。こんなところで会うなんて……。僕の顔は見られてなかったし、あれから何年も経ってるから僕の事なんてわからないと思うんだけど。
「おい、何か用か?」
相変わらず態度がでかそうな男である。そりゃ将来の領主様だもんな。
「いえ、ちょっと知り合いに似た人がいた気がしたのですが、気の所為でした。失礼します」
なるべく、興味なさげに。心の平静を保って。ミスド様は、訝しげな顔をしていたけど、興味を失ったのか「そうか」とだけいって前を向き、そのまま歩き出した。
「おい、ヴァン! 何してんだ? はやく行こうぜ!」
今度は、ミスド様が振り向いた。こちらの顔をまじまじと見てくるが、首を横に振って再びグループの中へと戻っていった。
僕もなるべく、気にしないフリをしてケルヒのところまで歩いていった。
「おい、どうした? 汗が凄いぞ?」
「ううん、大丈夫」
こんな広い王都でまさかミスド様と出会うなんて……。まぁけど、騎士学校に行ってるみたいだし、もう会う事はないでしょ。心ではそう思ってても嫌な予感が消えない。モヤモヤした気持ちをそのままに、ギルド寮へと向かうのだった。
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