第十一話 苦労したから必ずいいのが出来るなんて時代遅れだよ! ※掃除回

 澄み渡る空。こんな素晴らしい日にも関わらず目の前に見えるのは、ゴミ、ゴミ、そしてゴミ。


 こちらのお屋敷はいわゆるゴミ屋敷。本人曰く、全て必要な物らしいのですが、一言でいえばゴミです。


 とりあえず先日の件は何とか落ち着いたし、今日もお仕事頑張ろうっと! 本日、ご一緒させていただいておりますのが、ケルヒ、コロ、アイさん、リスさん、ルンパのフルメンバー。実はフルメンバーは初めてなんだよね。むしろ掃除の方でコロ、アイさん、リスさんが来るのが初めて。コロなんて最初からいた筈なのに、ケルヒが中々参加させてくれないんだからっ。このロリヒャーめ!!


 はい、まずはお外からやってきましょうかね? 目の前にあるこのゴミ山。ルンパに回収させましょう。本人の許可? 処分は依頼者より許可が出ていますので二年間で一度も触っていない物は全て処分です。物の整理をするのに明確な基準を決めておくと、捨てるのに苦労しませんよ。捨てるには残さない勇気です。無くなっても実際使う事って無いですから大丈夫ですよ。って誰にそんな事いってるんだろ?


 これだけでも地面が見えるようになってきた。ただ伸び切った雑草。ゴミが乗っかってしまっていた場所は逆に地面が剥き出し。こりゃ参ったぞ。


 まずは残ったゴミ以外をまずお屋敷の中に入れ、外の掃除が終わったら、中の物も併せて、更にいる物といらない物を仕分けしよう。その為にもまずは外の掃除から。まずは、伸び切った雑草から処理かな。ここはチマチマとみんなで手分けをして抜き取る。ここでもルンパが大活躍。雑草だけ食べてくれるし、分裂する事でそれぞれの近くにルンパを配置出来るから一まとめにしなくても回収できちゃうから本当に楽ちん!


 雑草が無くなったところでアイさん出番です!!


「『守護陣』」


 草刈りしたい場所の周囲を『守護陣』で囲む。次はケルヒ!!


「よし、コロ頑張ろうな! 『風麟刀ふうりんとう』」


 相変わらずかっこいい刀だなおい! ほぼ透明な刀身だけど、日光の当たり加減で碧色に反射してて、それがまたいいんだよね。芝生には切り戻しが大事。見た目は勿論、次の成長させる為にも必要な作業。ただ、今の時期は寒くなってきてるからやりすぎちゃうと弱ったり、光合成が出来なくなっちゃうので注意。茎は残しましょう! 茎までやっちゃうと枯れちゃいます。本当は複数回で分けるのがいいんだけど、今回は掃除するのがメインのお仕事だから、そこから先は庭師の方に任せて、僕達は少し長めに切るだけにしとこう。っといってる間に『守護陣』にぶつけるように『風麟刀』で横切りを繰り返す。よしよし、茎まではやってないな。ケルヒの腕が順調に上がってるね!


「俺だって頑張ってるんだよ!」


「ナイス、ロリヒャー!」


「あとでぶっ飛ばす」


 テンション上がってきたね!! そして『守護陣』の端っこに集まった、芝生の残骸を僕とルンパで回収。これを何度も繰り返して芝生の刈り入れ完了! あとは目土入れを本当はしたいんだけど、寒い時期にやっても成長は遅いから凹凸だけなくなる程度に土を入れておくだけにしておく。温かい時期になったらそこはまた新しい目土を入れて、成長を促していけばいいと思う。そしてその間にリスさんにも一仕事。一本銀の矢を頭上に掲げる放つ。


「『銀羽』」


 すると芝生に等間隔に極細の幾本もの銀の矢は突き刺さり、魔力が無くなると消えていった。これはいわゆるエアレーションで通気性を高めるのに必要な行為。意外と湿気に弱いので、通気性も大事。終わったらそこに目土を入れるとなおよしです!


「こんな使い方を指示されたの今まで初めて」


「わたしもです」


「魔法の無駄遣いだよな」


「これが効率的だからいいの!!」


 失礼しちゃうな! この方法が楽で尚且、手作業より綺麗に出来るからいいの。苦労したから必ずいいのが出来るなんて時代遅れだよ! 工程も魅せる作業ならともかく、必要なところに必要なだけ力を使うのが一番。残業なんて本来必要ないし、仕事はなるべく、短時間で効率的にやらないとね。偉い人にはそれがわからんのですよ!!


「それにしてもお掃除が始まってから、ヴァン様の雰囲気が変わりましたね」


「別人」


「いつもの事だから気にしたら負けだぜ?」


 なんだかいわれたい放題である。


「だってさ、みんな、掃除したあとのピカピカを見ると興奮しない!?」


「まぁそりゃ、するけど……なぁ?」


「うん、気持ちいいけど……ねぇ?」


「普通はここまで人は変わらない」


「うわあああああああん! みんながいじめる! ルンパ! ルンパは僕の味方だよね!?」


「…………」


 キミの味方だよ? うん、きっとそういってる筈。ぷるんぷるんして可愛いから何でもいい!


 さて、冷静になったところで次の作業。むしろ芝生の手入れとか僕のやる領域じゃないってさっきいったばかりだったよね。失敗、失敗。


 そしたら次は、壁の汚れ落としかなぁ……。外壁って人でいう肌だし、綺麗な肌の人って思わず見ちゃうよね。逆にせっかくのイケメン、美女でもお肌が汚いと勿体ないと感じると思う。どの物語を読んでも美女、美少女のお肌はツヤッツヤのぷるんぷるんでしょ?


 ということでこちらで大活躍するのがまたまたケルヒ!


「コロ、違うのになってもらうぞ。悪いな。『水龍刀』!!」


 今度は、久しぶりの登場、『水龍刀』。刃は白く、蒼い刀身。波のような刃文。鍔には蒼い龍が描かれている。この刀も相変わらずカッコいい。僕にもこんな刀ほしいんだけど。ケルヒばっか羨ましい。そして一振すると飛び出てくる水の龍。実はこの龍、ケルヒが自在に操る事が出来る。今回はこの水の龍をグリグリ回転させながら壁を駆けずり回ってもらった。隙間なく、端から端まで。


「水の龍がこんな使い方をさせられるなんて……」


「こんなにカッコいい龍なのにね……」


「なんか哀れ」


「だから効率が――――」


 割愛。てへ。ちなみに一般的な水魔法が使える方は、イメージをぎゅっとして圧力を上げれば、似たような事が出来る。ルンパなら疑似精霊の力を使って同じ事が簡単に出来た。あれだね、ルンパがいれば今日やってた掃除って全部終わるんじゃ……。っといけない、余計な事を考えてしまった。みんなの力で一致団結!


 これで外壁までは完璧。むしろ外は大体これだけでも綺麗になったと思う。あとは屋敷の中だけど、気がついたらもう日が暮れ始めている。あとは明日、続きをやろうかな。みんなもなんだかんだでヘトヘトだし。


「みんなお疲れ様!! 今日はここまでにしよっか」


「おう、マジ疲れたぜ……」


「コロ〜〜……」


「こんなに掃除したのはじめてです」


「従者でもここまでやらない」


 この中で元気なのは僕とルンパだけ! もう、みんなだらしないぞ?☆


「……さっきの言葉忘れてないからな?」


「ギクッ! ハハハ、何の事だったかな……?」


 その後、お風呂に入って、いつものギルド食堂で夕食をみんなで食べて解散した。解散した後に結局ケルヒと鬼ごっこをして僕までヘトヘトになった。もう、ちょっとロリヒャーっていっただけで怒るんだから! え? 当たり前だって?


 さて、明日は屋敷の中の掃除にやっと入れる。本当の予定では今日だけで中まで終わらせる予定だったんだけどなぁ……。外の掃除に気合を入れすぎちゃったかな? さて、明日も気合を入れて頑張ろうっと!


 ちなみに今日、出たゴミは全てルンパが食べてくれてます。本当に優秀。一家に一匹ほしいわぁ。

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