第五話 やっぱ持つべきものは友達だ!!

 結局あの後、ケルヒと明日について話をしたが、ギルドに相談する以上の案は出てこなかった。所詮は、一般的な冒険者である僕達に出来る事は少ない。こればかりは仕方ないんだけど、無力感を感じてしまった。だからこそ、出来る限りのお手伝いはしたいなと思う。


「おは」


「ヴァン様、ケルヒ様、おはようございます」


「おっす!」


「おはようございます」


 そして二人がやってきた。よし! 頑張ろう!!







「流石に私ではその相談のお答えは出来かねません。お力になれず、申し訳ないです」


 ですよねー。いきなり王様に会わせてほしいっていって会えるなら苦労はないもんね。さて、どうしよう。いきなり出鼻をくじかれてしまった。とりあえず城門まで行ってみるしかないかな? 一応仕事で川掃除をしている時に門番さんと話をしたりするから面識が全く無い訳じゃない。けど、それで王様に会わせてっていってもうまくいくとはとてもなぁ……。


 不安そうな顔で僕の方を見てくる三人。いやいや、ケルヒも一緒に悩んでよ! なんかこういう時って僕ばっか考えてる気がする。


「俺そういうの考えるの苦手だし……なっ?」


 なっ? じゃないし! 僕の肩に腕を乗っけたって駄目なんだからね? 全くもう。まぁケルヒこういうのあんまり考えるの得意じゃないもんね。直感は優れてるんだけど。おっと、話が逸れちゃった。うーん、とりあえず城門まで行ってみてそこで考えてみるしかないかなぁ。


「えっと、そしたらとりあえず城門へ行ってみませんか? 門番さんにちょっと話をしてみます」


「そうですね。何もしないよりはその方がいいですし。よろしくお願いします」


 元気がなく、トボトボと歩く四人。元気なのはルンパだけ。今も僕の周りをぴょんぴょん跳ねながら付いてきている。癒やされるなぁ。……よし! こんな簡単に諦めるなんて僕らしくないぞ。なんとかして王様に会ってみせるんだから!!








「坊主、そりゃ無理だ。一応上には話しておくが、期待しない方がいい。いつもこの堀の川を綺麗にしてもらってるから悪いけど、こればっかりはな」


「そうですよね。無理をいってすみませんでした」


 ですよねー。よく物語だと、なんかいい感じの依頼を受けて、王様に呼ばれちゃう話なんかもあるけど、そんなの現実では起きる事じゃない。王様って僕達にとっては雲の上の存在で、大きな催し物があったときに遠くから見る事が出来ればいい方なんだから。


「アイさん、リスさん。お力になれなくて、申し訳ないです」


「俺なんて、アイデアすら出せてねぇ。すまねぇ」


 二人で頭を下げる。なんて無力なんだ。それにもし、この世界の危機が本当であれば、このままではまずい。この危機が訪れるのが今日なのか明日なのかわからないけど、少なくともこの王都では異変が起き始めている。この異変が大きくなった時に間に合わないでは困る。なんとかして王様、それが無理ならそれに繋がる偉い人に話が出来ないと……。


「お気になさらないでください。こうやって手伝っていただいただけでも感謝しきれない事ですから」


「助かった」


 そういわれても頭を上げる事が出来ない。全然力になれなかったし、結局このままじゃ問題は解決しないよね。知らなければこのままでも問題なかったけど、一度知ってしまえば無視する事なんて出来ないよ。


「飛べ〜〜♪ 飛ぶんだ〜〜♪」


 んっ? なんか可愛らしい歌が聴こえてくるな。しかも聞き覚えのある声だ。えっと誰だったっけ? 頭を上げてみるとそこにいたのはパンをいっぱい抱えたルロさんだった。


「あらあら。ヴァン君じゃん。あたしの事覚えてる? ルロだよ!」


 忘れる筈がない。相変わらず可愛らしい人だ。


「覚えてますよ。だって、ルロさんと僕は……お友達なんですよね?」


 あの後から結局会ってなかったので若干不安になった。名前は覚えてくれてたけど、お友達かどうかは別だ。否定されたら三日は寝込んでしまう自信がある。


「うっ! 相変わらずの破壊力。これで男の子とは恐ろしい。もう、お友達に決まってるでしょ。飴ちゃんは今日ないからこのパンでもあげよか?」


 ニカっと笑顔で返してくれる。よかった、今もお友達のままだ。あれ? ルロさんって『飛翔部隊』の隊長さんで偉い人だよね? ちょっと厚かましい事かもしれないけどひょっとして?


「そういえば、キミ達はここで何してるの? 女の子二人連れてもしかしてデートかな? にくいね、このこの!」


「ちょ、違いますよ! そういえばルロさんって『飛翔部隊』の隊長さんなんですよね?」


「そうだよー。これでも──」「す、すみません!! あなた、夢とかで神様が出てきませんか!?」


 急にアイさんが間に入ってきた。そういうタイプじゃなさそうなのに珍しい。それに夢? 神様が出てくる? アイさんの問いかけにルロさんの表情が一瞬変わる。けど、それは一瞬で、すぐにいつもの笑顔に戻った。


「えっと、何の事を言ってるかわからないかなぁ……ハハハ」


 どうやら、アイさんの勘違い? だったみたいだ。表情が変わったのは気になるけど、本人が否定してるし、追求はしにくい。


「そうですか……。お話中、失礼しました」


「ううん、大丈夫だよ。気にしないで。えっと、話は戻すけど、あたしは『飛翔部隊』の隊長さんってやつだよ。それがどうかしたの??」


「えっと、ちょっとお話が長くなるのですが……」


 アイさんとリスさんの事、世界の危機。僕が知ってる限りの事をルロさんに伝える。その間、アイさんはずっと考えているみたいで話半分といった状態だった。やっぱりルロさんの何かが気になるらしい。


「そういう事ねぇ。んーと、いいよ。今、王都の魔物の問題が全然進展がなくてお手上げ状態だからちょうどいいかも。ちょっと上の人に聞いてみるね。すぐには無理だから明日、結果だけここまで聞きにこれるかな? 門番さんに声をかけてもらえばあたしに話通すように言っておくから」


「助かります! 今日の今と同じ位の時間でいいですか?」


「たぶん大丈夫だと思う。ただ、確定ではないからそれだけは了承しといてね」


「勿論です! 可能性が出てきただけでも僕達としても助かりますから」


「いいんだよ。これであたしの方も進展すればお互い様になるしね。それにしても相変わらず、ヴァン君は優しいなぁ。そこの二人が羨ましいよぉ。今度あたしともデートしてよね?」


 デ、デート!? 僕と、ルロさんがデート!? てか今やってる事もデートじゃないよ?


「ふふ、それじゃあまた明日ね。他の子達もまた明日ね。バイバーイ!!」


 こちらから挨拶する事もなく、あっという間に行ってしまった。それにしてもルロさんとデート? いやいや、きっと冗談だよね。頭の中がパンクしそうになって他の三人を見てみると、それぞれが目を細めてこちらを見ていた。うん、冷静になった。


「えっと、とりあえず、王様、またはそれなりの地位の人に世界の危機を伝える事が出来る可能性が出てきてよかったですね。まだどうなるかわかりませんが、一安心です」


「あのようなお綺麗で優しそうなご友人を持たれてるなんてヴァンは羨ましいですね?」


「ホント」


「全く人たらしな野郎だな」


 あれ? 何この反応。何か責められてる? 僕何か悪い事した!?


「……ふふ、ちょっと羨ましくなっただけですよ。本当に助かりました。確かにどうなるかはわからないかもしれませんが、少なくともわたしとリスだけでは今の状況にも出来てなかったと思います。明日も是非、よろしくお願いしますねっ」


「ありがと」


「俺は何の役にも立ってねぇけどなっ」


「本当だよ!!」


 みんなで笑いあった。やっぱ少しでも成果が出るとそれだけでも気分が明るくなる。それにしてもどこで人と人とのつながりがこうやっていい方向に作用するかわからないものだなぁ。ルロさんとの出会いだってたまたまだし。ケルヒはともかく、アイさんとリスさんと出会った事で出来たつながりもどこかで意味のある事になるんだろうか? まぁその答えは今出せないんだけど、これだけはいえるね。


 やっぱ持つべきものは友達だ!!

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