第四話 眼鏡美人職員さんの可愛さが凄い! そして後ろにいる二人の視線も凄い! え、何これ凄い!!

 帰りは何事もなく王都に着き、そのまま冒険者ギルドに向かった。いつものように喧騒とした冒険者ギルドに入ってやっと依頼を終えられたんだなと実感出来た。


 おっと、危ない危ない。まだ報告も、黄蛇の素材も渡せてない。勝手に終わった気になっちゃいけないところだ。


 いつもと違って四人で並んだ為、ちょっとソワソワしながら順番を暫く待っていると、漸く、眼鏡美人職員さんの前までたどり着いた。眼鏡美人職員さんは、アイさんとリスさんをチラっと見たけど、何も言わず、とりあえずスルーしてくれるみたいだ。まぁ僕達もまだこの二人については何もわかってないから質問されても困るんだけどね。


「お疲れ様でした。こちらにいらっしゃったという事は先日の依頼に進歩があったので報告という事ですね?」


 眼鏡美人職員さんの笑顔が、なんだかいつもいり眩しい気がする……! 後光が見えるというか、なんというか。そして眼力が凄い。そして気にしない様にしてるんだろうけど、どうしても二人が気になっているのが隠しきれないのか、チラチラ二人を見ている。ここはさっさと話を終わらせて後日、改めて説明にくるべきかな。


「えっと、進歩というか討伐してきたので、討伐報告ですね。討伐証明もありますし、素材も持ってきましたのでいつでも出す事は出来ます」


「なるほど、なるほ……、へ? もう討伐されたのですか? どこかの冒険者パーティーと合同で討伐でもされたのですか?」


 眼鏡美人職員さんにしては珍しく取り乱している。それ程、黄蛇の討伐って難しい事なのかな? けど、僕達って確か、先日のルンパの件で八級に昇級したばかりの初心者だよ。それだって地道に掃除をしたり掃除をしたり、魔物を狩ったり、掃除したり程度なんだけどね。ただ単純に今回は魔力の限界値が高いのと、それに対する戦闘がそれなりに出来るからって話だったよね?


「えっとですね、黄蛇は基本的には六級以上の冒険者が適性だったんです。けどお二人は双頭鷹を討伐出来る程の実力をみせていたので討伐出来る可能性があの時、一番高いと判断しました。けど、その成功するにもどこかの冒険者パーティーと組んで、合同で討伐に行くもんだと思ってました。自分達でどうやったら討伐出来るか考え、企画し、実行する。その流れを覚えていただければとも思ってたのですが。それがまさかお二人で倒しちゃうなんて……」


「あっと、実は僕達だけで討伐したんじゃなくて、ここにいる二人にもちょっと手伝ってもらって四人で討伐しました。ちょっと詳しくは話せませんけど、流石に僕達だけじゃ厳しかったですよ」


 ここで二人で倒せたか、それとも他に誰かがいたかによって、次の依頼にも関係してくるから嘘をついてはいけない。見栄を張るのは簡単だけど、それに伴った実力を持つにはそれなりの努力が必要だ。正直まだ僕達二人だけでは、黄蛇は討伐出来るか微妙だと思う。また討伐してくれって言われた時に困ってしまう位ならしっかりとここで話す方が後々を考えると正解だと思う。


「そうなんですね。流石に無闇に二人じゃ行きませんもんね。行ってませんよね? 私からもその場で説明すべきだったかもしれませんが、こちらのギルドにある蔵書『魔物大全』にも記載されている魔物ですし、勿論、討伐に向かう前に確認しましたよね??」


 あれ? 普通に二人で行っちゃってるね。背中から出る冷や汗が止まらない。隣のケルヒを見てみると同じように、焦った顔をしている。すると頬を膨らませて怒った表情をした眼鏡美人職員さんに睨まれてしまった。どうやら僕達は結構無謀な事をしていたのかもしれない。


「全くもう、命は一つしかないんですよ。どんな依頼であれ、全力は尽くしてください。わかりますか? もう一度言いますが、命は一つしかないんですよ。……お二人がいなくなってしまっては寂しいです」


 あ、ケルヒが倒れた。それにしても今日の眼鏡美人職員さんの破壊力が凄い! いや、むしろ僕達はもっと反省すべきなんだけど、それより、眼鏡美人職員さんの可愛さが凄い! そして後ろにいる二人の視線も凄い! え、何これ凄い!!


 ケルヒも倒れてしまい、このままでは埒が明かないので、黄蛇の素材をギルドの素材置き場に置いて、後日精算する形でギルドを後にした。まだ説教したそうな顔をしていたけど、今日は勘弁してほしい。何よりアイさんとリスさんをあまり待たせたくなかった。落ち着いた場所に行きたかったのでそのままギルド食堂へ。ケルヒは、ルンパを顔にくっつけて平和的に起こした。やっぱルンパって優秀だ。そして可愛い。睨まれたけど、倒れたケルヒが悪いんだ。僕は知らないっと。


 まだ食事する時間じゃなかったので飲み物だけを頼んだ。食堂のおばちゃんもいつもならもっと絡んでくるのに、気を遣ってくれて飲み物を置くとすぐにいなくなってくれた。


 アイさんとリスさんは若干緊張した面持ちで飲み物を見ている。思わず、待っている僕達まで緊張してきた。状況的に二人が他国から来たのは間違いない。現状だと他国から、このパナソニ王国に来る事は殆どないらしい。二国の間には、広大な森を挟まれた物理的な距離もあるけど、そもそもトゥーシバ国って鎖国をしていて、交流自体をしてない筈だ。


そんな交流をしていない国から来た二人。何か重大な事があって来たに違いない。意を決したのか、一口飲み物を飲み込むとこちらに目を向けてきた。


「まずは、改めてお礼から言わせてください。先程は危ないところを助けていただき、ありがとうございました」


 二人揃って頭を下げてくる。


「ちょ、ちょっと待ってください。助けられたのは僕達も同じです。お互い様って事でもう終わりにしましょうよ」


「そうだぜ。俺達だけだったら危なかったんだからよ。もうお互い、言いっこなしにしようぜ」


「そう言っていただけるとわたし達も助かります。そして、これが本題なのですが、もうお気づきかもしれませんが、わたし達はトゥーシバ国の者です。そしてわたしは、トゥーシバ国の巫女をやっています。リスはその従者。今回、王国へ報告があってこちらまでやってきたのです」


 え? なんだか思った以上に壮大な話になってきた……。


「ちなみにその理由はお聞きしても?」


「国家機密になってしまうので本来は話すべきではないのかもしれませんが、こちらの王国でも既に異変が起きているので、お二人には話しておいた方がいいかもしれませんね。端的に言いますと、世界の危機が迫っています」


「せ、世界の危機!?」


「驚かれるのもわかります。いきなりの事で、信用してくださいとも言えません。けど、異常な事が起きているのはヴァン様、ケルヒ様にはわかるかと思います。わたしは巫女としてチノカミ様から神託を受けました。その神託は、わたし達だけでは対処できる問題ではなく、王国、帝国、獣国が協力しなければ解決出来ない事だと考えております」


「ようはアイさんとリスさんはトゥーシバ国から世界の危機を伝える為にこの国にやってきたって事なんですね。そしてそれはこの国だけじゃなく、帝国、獣国にも伝えたい……と」


「そうです。ご理解いただけて嬉しいです。お二人はこの国の長に会う方法はわかりますか? 出来るだけ早急に伝えたいのです」


 長って王様の事だよね。王様に会う方法? ケルヒの方を見てもまだこの事態を飲み込み切れてなさそうで考えるどころじゃなさそうだ。ケルヒだけじゃない、僕だってそうだ。まさか、世界の危機だなんていきなりいわれても正直ピンとこない。確かに今回の依頼を含めた最近の魔物の異変はおかしいなとは思うけど、それが世界の危機に繋がるとは思えない。ただ、わざわざ他国からここまでやってきたって事は適当な事を言いに来た訳ではないのも確かで。


「えっと、すみません。僕達では王様に会う方法はわかりませんが、一緒には探せると思います。今日は時間も遅くなってきてますし、先程行ったギルドに明日行ってみて相談してみませんか? 本当なら僕達だけで答えが出せたら一番だったのですが、お役に立てそうもないので、せめてギルドまで行って一緒にお話出来たらと思います」


「そう言っていただけるだけで嬉しいです。優しい方々に巡り合えて本当によかったです。それでは明日ですね。わかりました」


「二人はいい男。ありがとう」


「ちょっとリス! あなたはもう……! ちょっと変わった子なんですみません!!」


「あはは、気にしないでください。アイさん、リスさん。それでは明日、よろしくお願いします」


「よろしく頼むな!」


「よろしく」


「はい! よろしくお願いします!!」


 その後、今夜泊まるためのお金を渡し、明日の朝またここに集合する事にして二人とお別れした。まさか黄蛇の討伐依頼でこんな事になるとは思わなかったけど、一度聞いてしまったら無視する訳にはいかない。他にも何か方法はないかちょっと考えてみて、明日に備えよう。


 あぁ、なんか凄く濃い一日になっちゃったなぁ……。

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