閑話二 空では今の気分を表すように雲が広がっている
私は、王国乗合便護衛部隊十番隊隊長だ。みなからは真に恥ずかしながら、『水の
先日の双頭鷹との一戦以来、これといった大きなトラブルはないが、あの時の二人に挨拶出来なかったのが少々心残りだな。それにしてもあの二人には助けられた。本来、真っ先に動くべき騎士団より先に動き出し、女の子を無事、救出。双頭鷹にも結局勝ったんだから。あれには私も驚いたよ。私との模擬戦ではあそこまで戦えるとは思ってなかったんだが。男子、三日会わざればってやつだね。それでいて、まだまだ伸び代がたっぷりある。今後が楽しみな少年達だ。あぁいう子達が騎士団に入ってくれれば安泰なんだけど。けど、それも無理な話で、そもそも条件が合わない。騎士団に入るにはまず、騎士団学校を卒業しなければならない。本当はもっと規律を緩め、門戸を広くしてもらえれば助かるのだけど、頭でっかちな者達が上であるうちは無理だろうね。だが、身内だけになってしまうといずれは内から腐ってしまう。今はまだそんなにひどくないが、一部の者は既に腐り始めてしまっている。憂慮すべき事だ。まぁ、今嘆いても仕方ない事なんだけどね。
それにしても最近はおかしな襲撃ばかりだよ。普段は出てこない筈の魔物が多すぎる。やはり何かの前触れ? 隊を預かる身として、何が起きてもいいように気を引き締めないと。隊員達もあの模擬戦以来、訓練への姿勢が違う。やはりあの時、二人を誘っておいてよかった。どうしても同じ事を繰り返していると人はモチベーションを保ちにくい。それは私であっても変わらない。気が付かない内に気が緩んでいたのがあの状況を作り出してしまったのだから。
今も、私の隊は鎧車に合わせて歩いているけど、ピリピリした空気になっている。悪い意味ではなく、いい意味で。だいぶ頼もしくなってきたね。そんな風に考えていたら、副官がこちらに向かって走ってきた。どうしたんだ?
「一番前の鎧車が止まりました。近くに魔物がいるようです。戦闘の準備を」
「了解。総員、戦闘準備。民間人への護衛を怠るな? 盾隊前へ!」
「はっ!!」
私の号令に合わせて隊員達が一斉に動き出した。よし、よく動けている。これならいつ来ても大丈夫だね。
暫くすると、前方で戦闘が始まった。今回はこちらまでは出番は無さそうかな? まだ油断は出来ないけど、慌てる必要もない。
「『水の
前方の戦闘を観察していると、不意に後ろから聞き覚えのある嫌な奴の声が聴こえてきた。
「部隊をむやみに動かす必要があるかい?」
こいつに何を言っても無駄だから話は最小限だ。
「へいへい。薄情者はそんなもんでしょうよっと。隊長が薄情者だと、隊員も薄情者になっちまうな? 嫌だったらいつでも俺の十一番隊に来ていいぞ! こんな奴よりよっぽど俺の方が出来るんだからな!!」
はぁ……。また言ってる。こいつは私の騎士学校時代の同期で次席だった奴で、優秀だけど、ちょっと性格がね。周りの隊員達を見ても冷ややかな反応だ。これで隊の人間が喜ぶとでも思ったのかな?
そんな事を考えている内に、前方にいた魔物がこちらに逃げてきた。これは私達で対処しなければいけないな。
「魔物がこちらに来たぞ! 総員、準備! 魔物が逃げたら追わなくてもよい! 守る事を優先せよ!!」
「ちっ、まぁせいぜい頑張れや」
自分の陣営まで戻っていったか。全くいちいち何か言わないと気がすまんのかな? あれで無能だったらまだいいんだけど、半端に出来るから始末に負えない。
幸いにも、魔物達は私達の陣形を見て、森へ逃げていったようだね。誰も怪我をしないですんでよかった。
「周囲の警戒は継続しつつ、前方に合わせて前進だ!」
ふぅ、今回も何とか何事もなく、進めそうだ。今回の襲撃もここ最近のパターンか? 後で確認をせねば。
やっぱりそうだったか。前方の隊にいる民間人の中に魔力の限界値が高い者がいたらしい。今回の襲撃の原因はそこにあるんだろう。これは、嫌な予感がする。そう、あれは水竜と戦った時のような……。これだけ魔力の限界値の高い者が狙われるのはどう考えても偶然ではない。誰の策略だろうか。もしや、魔族か? いや、そう決めつけるのは早合点だろう。あと少しでタスキン都市に着くけど、王都は大丈夫だろうか。数日すればまた王都に向かう事になる。それまでに何事も無ければいいんだけどな。
空では今の気分を表すように雲が広がっている。
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第二章まで読んでいただきありがとうございました。これにて第二章終幕です。次話より、第三章に舞台は移ります。
おい、やっと次のヒロインか! けど絡みが少ないじゃねぇか! もっと絡んでいちゃいちゃしろ! 応援してるぞ。楽しみにしてるから頑張れ! そう思っていただける方、ぜひ☆評価、フォローをよろしくお願いします。励みにさせていただきます。
それでは引き続き、『掃除機魔法が全てを吸い尽くす!!』をよろしくお願いします!
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