閑話一 女の子だったらお友達になりたかったのになぁ

 あたしの名前はルロ。王都の『飛翔部隊』の隊長をしているの! 何だか最近、やたらと忙しくってお休みがもらえないんだよ! もう、ひどくない?? 今までだったらこんなに忙しい事って無かったのに。そんな今だって近くでワイバーンが出たっていうから現場まで討伐に出てるんだよ。ワイバーンってよく物語で出てくるあのワイバーン何だけど、本来、この付近にはあまりいない筈なんだけどなぁ。この前も似たような事があったし、ホント最近おかしい。ま! とにかく討伐命令が出てるからには行かないとなんだけどね!


 ちなみにあたしの『恩恵』は『飛翔魔法』。物を浮かべたり、飛ばしたり出来るんだよ。この魔法の力であたし自身も今みたいに飛んでいるの。この魔法があるから『飛翔部隊』でも隊長が出来るんだよ! あたし達『飛翔部隊』は主に、空の魔物の処理するのがお仕事。あたし以外のみんなはそれぞれ飛竜に乗って、今ワイバーンを探してくれてる。攻撃力が一番高いあたしがそれを待って、現れたところを『飛翔魔法』で叩く! 役割分担が大事だね!


 暫く待ってると、周辺が騒がしくなってきた。そろそろかな? 予想通り、飛竜に乗った『飛翔部隊』がワイバーンを引き連れてすぐにやってきた。流石、あたしの部隊だね! うんうん、計画通り! あとはあたしの出番。こちらまで来た仲間達が左右に分かれていく。ワイバーンは急に獲物がバラけたので戸惑っているみたい。ほら、目の前に可愛い獲物がいるよぉ。おっと、気づいた! さぁここまでおいで。


「咲き誇って『蒲公英たんぽぽの舞』」


 『魔名まな』を唱えると、背中の鋼の翼が分解されていく。その姿は、まるでそれぞれの花びらが舞っているようで、この様子を見るのがあたしは大好き。バラバラになった翼が今度は蒲公英のような形に変わってあたしの周りを浮いている。


「さぁいっちゃええええええ!!」


 言うが先か行くが先か、蒲公英の花達は回転しながらワイバーンへと一直線に向かっていった。まさかの攻撃にワイバーンは全く反応出来てない。ワイバーンの翼を貫通しつつ、次々と狙い落としていく。ホントは頭を貫通させて一撃で倒したんだけど、流石に頭は硬いから落とすしかない。もっと火力欲しいなぁ。ふふ、今頃慌てたって遅いわ。空中線はキミ達の専売特許じゃないのよってね!


 この攻撃だけで半数以上のワイバーンを落とす事が出来た。落とした分の処分は部隊のみんなに任せてっと。あれだけ落としてもまだ三分の一は残ってるなぁ。思ったより数が多い。ワイバーン達が口から炎を溜め込んでいる。一斉にこっちに撃ってくるみたいね。まぁこれも予想通り。


「戻っておいで。次、あたしを包む盾となって『薔薇の楯』」


 あたしの蒲公英達が分解され、右手に集まる。その一枚一枚が盾へと変わり、その中央では薔薇が咲いていた。これしきの炎であたしの盾を破れると思わないでよね!


 全ての炎を防ぐと次はあたしの番。このまま残りを撃ち落として終わりよ!! 


 部隊のみんなと連携しながら全てのワイバーンを倒す事が出来た。最後、ワイバーンに逃げられそうになった時にはちょっと焦ったけど、飛竜の方が速いから何とか助かったよ……。飛竜はワイバーンと違って飛ぶのが速いからね。その代わりに火を吐く事は出来ないし、耐久力も低いの。けど、攻撃は魔法で補えばいいし、速い方があたし達は助かるから飛竜の事がみんな大好き。人懐っこいし、意外と甘えん坊さんなんだから。


 討伐したワイバーンの素材を運びつつ、王都に向かうあたし達。今日も何とか怪我もなく、終わる事が出来てよかったなぁ。ん? 王都の様子がおかしくない? 王都で双頭鷹そうとうようと戦ってる!? 急いで助けにいかないと!!


「あたしは先に行ってる! みんなは後から来て!! まだ双頭鷹がいるかもしれないから周囲の警戒!! じゃあ行くよ!!」


 全速力で王都まで急ぐ。見た感じ、討伐自体は殆ど終わってるっぽい? これだけの双頭鷹をあたし達抜きで討伐するなんて……。あそこにいるのは『水の指揮者コンダクター』? 彼がいるからこれだけ討伐出来たのかしら? それより、双頭鷹の上にいる子を助けに行かなくちゃ!!


 そう思っている内に、変化が起きた。なんと、双頭鷹の残っている一つの頭を拳で砕いていた。


 わーお! カッコいい。っとそれどころじゃない。あたしみたいに飛べる訳じゃないんだから、落ちる前に助けなきゃ!!


 全速力でキャッチ!! あー、なんとか間に合ってよかったぁーーー! おっと、まずは安否の確認ね。それにしてもこの子可愛い。あれ、けど、この子、男の子かな? 何だか男の子なのが勿体ない気がする。女の子だったらお友達になりたかったのになぁ。


「キミ、大丈夫?」


「だ、大丈夫です。ありがとう…ござ…います?」


「いーえ。みなさんを守るのがあたしの仕事だからね」


「えっと……」


「あー、あたしはルロ! 『飛翔部隊』の隊長、ルロよ! よろしくね!!」


 こちらを見て笑顔で頷いてくれた。可愛い。そしてそのまま目が閉じられていく。


「あぁ!! ちょっと、キミ!!」


 あら? 気絶しちゃった? さっきまで戦ってくれてたみたいだし、限界まで頑張ってくれたのかな。それにしてもどうしようこの状況。


「姫様ー! お待ちくださーい!!」


 あっ! やっとみんなも追いついた。まだ残りがいないか確認しなきゃ!! とりあえず下にもお友達っぽいのがいるから降ろしておけば大丈夫かな。


「今は姫様じゃなくて、隊長!! 呼び方を間違えちゃ駄目でしょ!!」


 可愛らしい男の子を降ろすと、鋼の翼を広げ、あたしはまた飛び立った。うーん、それにしても今の子気になるなぁ。後でお見舞いにいこっと!!

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