第十九話 もうルンパが手懐けられてる! なんというちょろイン
その後、隠し部屋の場所を教え、掃除も最後まできっちり終わらせた。かなり広い屋敷だったので数日掛かってしまったけど、依頼主にも満足してもらえ、依頼は大成功だったと言える。何より、新しい仲間であるルンパが増えたのが嬉しい。
それにしてもルンパは可愛い。実はケルヒのコロがちょっと羨ましかったんだ。如何にも相棒って感じがして、確かに僕とケルヒだって仲間だけど、僕とはちょっと違った関係性が二人にはあって、それがどうしても羨ましかったんだ。ルンパと僕もそんな風になれたらいいな。ううん、きっとなれるよね。
そんな僕達は今、冒険者ギルドに来ている。理由はルンパの登録だ。ギルド登録ではなく、今回は従魔契約を結ぶんだ。一部の冒険者の中には野生の獣等を手懐けて一緒に戦う人もいるんだけど、手懐けたよーって自己申告で勝手に王都を歩かせる訳にはいかない。なので、ギルドできちんと審査して合格すれば一緒に歩いたりするのを認めてもらえるようになるんだ。認めてもらえなかった場合は一緒にいられなくなるかもしれない。頑張らないと……!
という訳で今、万が一の為、ギルドの守衛の人とケルヒの三人で冒険者ギルドの窓口で登録する為に並んで待っている。守衛の人も勿論冒険者で、万が一、登録前に従魔が暴れた際に取り押さえる為に同行する事が義務付けられている。まだ、従魔として認められてないから仕方ないね。
「お待たせしました」
暫く待っていると僕の順番になり、いつもの眼鏡美人職員さんが待っていた。もうすっかりおなじみの存在になっていて、今回の件は、事前に話も通してあったのでこのまま登録の流れとなった。ちなみに獣と登録する事はそれなりにあっても、魔物と登録する人はあまりいない。というより、魔物の殆どは元々が懐かないので手懐ける事が出来ない。数少ない手懐けた例としては、僕達も乗っていた鎧車のマルマジロ、ルロさんが隊長の『飛翔部隊』程度だ。マルマジロは魔物にしては珍しく、大人しい性格だったので、小さい頃からきっちり育てると、人に懐くことが出来た。『飛翔部隊』では、長い年月を掛けて卵から育てた飛竜という小さめの竜を手懐けていて、それも当時は、かなり悪戦苦闘したらしい。まず、最初の卵の確保が大変で、生まれても育てるのにまた苦労の連続だったみたい。それでも空の戦力補充は重要な事だったので、諦めずに試行錯誤された結果、何とか無事、手懐ける事が出来たらしい。なので、今のルンパが特別な事をする事なく、普通に懐いている状態は極めてレアなパターンである。
さて、ギルドの裏にある広場にやってきた。ここでは冒険者同士の模擬戦や、訓練、今回のように、従魔契約の確認等、幅広い事が行えるようになっている。事前に予約さえすれば、誰でも使え、僕も訓練するのによく借りている場所だ。他にも使っている人がそれなりにいるので、ルンパが珍しいのか、たくさんの人から視線を感じ、いつもよりちょっと居心地が悪い。
「それでは始めましょうか」
気を使ってくれたのか、眼鏡美人職員さんが早めに声を掛けてくれる。こういった細かい気配りが出来るのは本当に凄いと思う。
「はい、よろしくお願いします!」
「二人共、頑張れよ!!」
守衛の人はあくまで引き渡すまでが仕事なのでそのまま帰り、付き添いのケルヒはコロと端っこで待機している。よし、とりあえず周りを気にするのは後だ。今はルンパと普通に王都で歩けるようにしなくちゃ。
「それでは従魔契約をする為の確認事項です。まず、他人に危害を加えない事。主人の言葉をしっかり守れる事。もし人や物に対して、故意に損害を起こした場合は主人であるヴァンさんが責任を取る事。こちらの事が出来なければ、従魔として一緒にいる事は出来ません。こんな感じになりますがよろしいですね?」
「大丈夫です。何かあった場合、勿論、僕が責任を取ります」
「かしこまりました。それでは、そのルンパちゃんがきちんと言うことを聞くのか、他人に危害を加えないか確認したいと思います。まず、ルンパちゃんが私のところまで来させる事は出来ますか?」
「わかりました。ルンパ、あのお姉さんのところまでいけるかな?」
肩に乗っていたルンパが僕から下りて、眼鏡美人職員さんの方へ向かう。よしよし、流石ルンパだ!! そのままぷるんぷるん跳ねながら眼鏡美人職員さんのところまでたどり着くと、そのまま持ち上げられた。急な事にも特に反抗しないルンパ。偉い偉い! 後で魔石をたっぷりあげよう。
「いきなり持ち上げても攻撃する事はありませんね。触っても私に異常はなしと。すみませんがこの子の餌ってありますか?」
「あります。この魔石がルンパの餌です」
「そしたら私に渡してもらえますか?」
「はい、一つでいいですか?」
「大丈夫ですよ。私に持たせてから食べるのを待たせて下さい」
鞄に入れておいた魔石を一つ渡す。
「ルンパ、まだ食べちゃ駄目だぞ。僕がいいっていうまで頑張って待つんだ!」
眼鏡美人職員さんが持っている魔石をぷるんぷるんしながら食べるのを我慢している。何この生き物。めっちゃ可愛い。
「はわわ、何だかこっちが悪者みたいになっちゃいますね。可愛すぎます」
「でしょ! うちのルンパはめっちゃ可愛いんです!!」
眼鏡美人職員さんもメロメロだぜ。ケルヒに勝ち目はないな。
「うっせぇ、この野郎」
「あぁ、もう可哀想なので食べていいって言ってあげて下さい!」
「わかりました! ルンパ、食べていいよ」
待たせていた分、勢いよく食べ始めたルンパ。
「やん、ちょっと、く、くすぐったいわ。ふふ、ゆっくり食べなさい。誰も取らないわよ」
もうルンパが手懐けられてる! なんというちょろイン。そしてぷるんぷるんとしたルンパが眼鏡美人職員さんと戯れている絵面はちょっとあれな感じがする。端的にいうといやらしい。
バタンっ。あ、ケルヒが倒れた。
それからいくつか指示を出して、それにしっかり応えるルンパ。ルンパはかなり頭がいいらしい。そして、何とか無事ルンパと従魔契約を結ぶ事が出来た。今はギルド寮の帰り道。って言ってもすぐ隣なんだけどね。それにしても契約出来てよかった。まぁ失敗するなんて全く考えて無かったけど、万が一ってあるからね。
ついでにケルヒのコロは従魔契約しなくていいのか聞いたんだけど、コロの場合は、ケルヒのあくまで魔法の一部だから契約は必要ないらしい。そんなコロだけど、最近になって、ずっと『召喚』されたまま、ケルヒの肩にいるようになった。どうやら、ルンパに対抗しているらしい。ケルヒも仕方ないな、とそのままにしてるけど、まぁ信頼関係を深める事は悪い事じゃないからいいんじゃないかな?
けどロリフィーはいただけないよ? 他の人も見てるんだからね? 気をつけなよ?
そんなこんなで何とか今日を終える事が出来た。あぁ疲れたけど、今日も一日頑張ったなぁ。漸く、この生活にも慣れてきたし、これからはルンパ、コロも入れて、四人で頑張らないとね!! 気合いを入れ直して、明日からまた頑張るぞ、おー!!
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これにて、第二章終了です。閑話を数話入れて、第三章に入ります。
閑話も暫くお付き合いくださいませ。
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