第32話 特別スタジオへようこそ

 

 全員で門をくぐると、俺はみんなの先頭に移動して「ゴホンッ!」と咳払いをした。


「――俺もここに来るのは久しぶりだが、案内するよ。カギは渡しておくから、次回からは好きに使ってくれ」


 そう言って俺は登録者のいないスペアのカードキーをメンバーのリーダーであるしおりんに渡した。

 みんなを引き連れて玄関までを歩きながら軽く説明を始める。


「ここにはダンススタジオに録音機材、楽器も一通り置いてある。防音や音響も完璧だ、練習で汗をかいたら大浴場やサウナ、屋上にはプールもあるしな」

「…………」


 俺の説明をみんなは呆けたような表情で聞いていた。

 玄関につくと、今度は静脈認証だ。

 俺の手をかざすと玄関の扉が開いた。


「この扉は登録制だ。後でしおりんたちも登録しよう」

「…………」


 相変わらずみんなは静かに俺の話を聞いてくれている。

 いや、聞いてる……のかこれ?

 みんな魂が抜けたような顔をしているけど……。


 家の中に入ると、久しぶりに来たにも関わらずエントランスには埃一つ落ちていない。

 雇っているハウスキーパーの方がしっかりと仕事をしてくださっている証拠だ。

 庭の木々も手入れされてたし、今度お礼の手紙と飲み物でも送ってもらうように事務所にお願いしておこう。


 金装飾のシャンデリアがぶら下がった天井と家の中を見渡して、頬に一筋の汗を伝わせながら琳加が口を開いた。


「お、おい……リツキ。スタジオって普通こんなに立派な場所なのか……?」


 そして蓮見もグルグルと目を回す。


「ひ、広いよぉ~、家の中なのに落ち着かない……。隅っこにいたい……! 助けて……助けてぇ……」


 そんなことを呟きながら玄関でしゃがみこんでしまった。


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