特別編 噂の陰キャ兄貴を馬鹿にしに行く その6
「う、うぅ……凄く、凄くいい演奏でした……」
「本当に……。なんていうか、"愛"を感じました」
「きっと、お兄さんには素敵な相手がいらっしゃるんですよね……じゃないと、こんなに感情を込めてこの曲を歌うことなんてできません」
そう呟いて、涙を流す3人。
俺の演奏を聞いたコンサートのファンたちと同じような反応だが……バレてないよねこれ?
そして、なにやら3人はお互いに目を合わせて頷き合う。
横に並ぶと突然、頭を下げてきた。
「ご、ごめんなさい……私たち……実は(あかねに)意地悪なことをしようとしていました」
「ほ、本当は羨ましかったんです……。だから困らせてやろうと思って……」
「うん。でも、お兄さんの歌を聞いてたらそんなの間違ってるって分かりました。嫉妬なんか良くないって」
そう言って、口をそろえる。
「「本当にすみませんでした」」
よかった……"俺への意地悪"をやめてくれるみたいだ。
彼女たちはあかねと関わる事ができる俺の兄という立場が羨ましくて嫉妬してしまっていたらしい。
やっぱり音楽は偉大だ、俺のあかねへの愛情が曲を通じてちゃんと伝わったのだろう。
「分かってくれればいいよ。これからもあかねをよろしくね」
俺がそう言った時、ポケットに入れていた携帯が震えた。
RINEにきたメッセージを見て俺は彼女たちに伝える。
「あかねがもうすぐウチにつくみたいだ。3人ともあかねの親友なんだよね? よかったら一緒に晩ごはんでも――」
「だ、大丈夫です! 私たちもお邪魔しすぎてしまったので帰りますね!」
「演奏、本当に素敵でした!」
「あかねさんには私たちが来たことは秘密にしておいてください! で、では失礼します!」
そう言って足早に3人とも出ていってしまった。
もしかしたら、あかねに黙って勝手に家に来たのかもしれない。
一方的にあかねのことを慕っている女生徒は多い。
であれば、彼女たちが来たことも黙っておいてあげた方がいいだろう。
彼女たちもあかねが心配だっただけで、決して悪気はなかったのだから。
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