特別編 噂の陰キャ兄貴を馬鹿にしに行く その3
「あ、あの……ご用件は――」
今更声を変えるわけにもいかないので、そのままの爽やかボイスで俺は彼女たちにもう一度声をかける。
「わ、わわ、私っ! あかねさんの
「私もあかねさんと大親友の木村です! あかねさんとはもはや心の友です!」
「守谷といいます! あかねさんの一番の大親友は私です!」
3人は急に元気よく俺に自己紹介を始めた。
あかねの友達か……この3人は初めて見たな。
やけにあかねとの仲の良さをアピールしてるけど……。
あかねは女子にもめちゃくちゃモテるからなぁ。
「あかねの同級生なんだね。いつも妹がお世話になってます。悪いけどあいつは今日入学パンフレットの撮影でまだ帰って来てなくて――」
「いいえ! 今回はお兄さんに用がありまして!」
「俺に……?」
山本さんの意外な答えに戸惑う。
「え、ええと……! その! あかねさんがお兄さんの話を学校でされていましたので、気になってお会いしたかったんです!」
「あかねが……学校で俺の話を……?」
木村さんの言葉に俺は首をひねった。
どういうことだ……?
あかねと俺が兄妹であることは学校ではほとんど知られていない。
陰キャな俺がキッカケであかねが虐められたりしないようにするために信頼できるやつ以外には隠している。
あかねも俺という存在を恥じているのだろう、誰にも言ったりはしない。
前にあかねが可愛い女友達に「あかねってお兄ちゃんがいるって聞いたんだけど本当? 会ってみたいな!」と言われていたのを偶然見たときも「いないわ、絶対にウチには近づかないで」なんて言ってその友達を睨みつけていたし……。
(――ということは!)
俺は理解してしまった。
あかねを怒らせすぎて、ついに我慢が出来ず"俺への愚痴"を彼女たちに漏らしてしまったのだろう。
彼女たちはきっとあかね大好きファンクラブだ。
兄妹であるのをいいことに毎日あかねを困らせていることを知って俺に説教をしにきたのだろう。
いや、俺ほどのシスコンになると通報もありえる……!
「……と、とりあえず中に入ってお茶でもどう?」
「はい! 突然押しかけてすみません、お邪魔します!」
俺は冷や汗をかきつつ彼女たちを家の中へと招き入れた。
とにかく、穏便に。
どうにか通報は勘弁してもらう必要がある。
俺があかねを怒らせてしまうのは純粋な愛ゆえだ。
何とかしてそれを分かってもらって、許してもらえないだろうか……。
玄関に足を踏み入れると、すぐに彼女たちはこそこそと何かを話しだした。
「う、上手く誤魔化せたわね……」
「話が違うじゃない……! こんなにとんでもなく格好いいお兄さんがいるなんて……!」
「で、でも家の中に入れたわ!
きっと俺に制裁を加える作戦会議だろう……。
俺は覚悟を決めた。
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