第18話 試合が始まっちゃいました
「よし、じゃあこの試合表の通りに試合を回していけ〜」
剛田が自慢の大声で俺達に指示を出す。
「よし、じゃあ俺が剛田に言ってくるよ」
「待って、シ――須田君。何を言う気?」
「椎名さんが腕を怪我していて、試合出来ないみたいですって伝える」
「そんな事したら、須田君に変な噂が立つ。怪我させた、とか」
「今に始まった事じゃないさ、別に構わん」
「私が構う、わがまま言わないで試合しよ?」
「なんで俺が説得されてるんですかね……お前の腕が酷くなったらどうする。俺も困るんだからな」
「じゃあ、私はコートを走り回って、バドミントンをしてるフリをする、須田くんが基本的には球を打ち返して。そして負けないで」
「無茶苦茶言いなさる」
こいつのよく分からない指示に従う事にした。
せめてコートに立とうという心意気は買ってあげたい。
それにここで機嫌を損ねてバンドの練習に来なくなられても困る。
「よろしくお願いします」
「おっ、鬼太郎ペアじゃん! よろしくね〜」
いかにも運動が出来そうなチャラいペアと当たってしまった。
椎名さん、これは1人じゃ無理です。
そんな視線を送るも、椎名は期待に満ちた眼差しを俺に向けてきた。
くそぅ、やってやる!
ガリ勉の意地を見せてやるぜ!
「はぁ…はぁ…っぶね~」
「はぁ…はぁ…鬼太郎、こんなにバドミントン上手かったのかよ……」
俺はギリギリで負けてしまった。
というか、椎名の奴俺のことをボーッと見てるだけで全く動いてなかったぞ。
やってるフリはどうした。
「はぁ…はぁ…すまん、負けちまったな」
「いい、こんなに近くで動いてるシオンを見て堪能できたから」
「俺は動物園の珍獣かな」
次の試合は……女性のペアか。
良かった、今のよりかは楽だろう。
「ちょっと一旦トイレ行ってくる」
「私も一緒に行く」
「なんで女子は一緒にトイレに行きたがるんですかね。男子トイレまではついてくるなよ」
「じゃあいいや」
「どういう事だよ……」
不思議行動がここに極まった椎名を置いて、俺はトイレに行った。
「……ねぇ、椎名って奴超ムカつかない?」
「あのイケメンの早坂君がペアを誘っても断ってたんだよ?」
「しかも相手いなかったし、私達に見せつけてるみたい」
「まぁ、その結果鬼太郎とのペアになったのはウケるけどw」
女子トイレの方から陰口が聞こえてきた。
あいつ、来なくて良かったな。
まぁ、あいつの事だから全く気にしないんだろうけど。
「しかも、試合も全然やる気ないし」
「ちょっと可愛いからって調子乗んなよ、小学生が」
「身体に栄養足りてないんじゃね?w」
「キャハハ、まじウケる!w」
馬鹿言うな、あいつは大食いだ。
差し入れのケーキとか俺が食べかけですら置いておくと帰ってきたらもう無くなってるぞ。
まぁ、椎名以外のメンバーも犯人だったりするんだが……
ハンカチで手を拭きながら、俺は椎名の待つ体育館へと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます