第19話 女子も準備

 共学の女子は男慣れしているはずだから、二人きりで買い物とかそういうイベントも大して意識しないはずだ……と、ダンシコーは思いこもうとしていた。

 自分ばかり意識して、それを相手に悟られるのが嫌だからだ。

 しかし、実際のところ……


「ど、どうしよう……このミニスカート、すっごいお気に入りなんだけど……一回目のデートでこれは気合入れ過ぎかしら? ちょっと短いかも……お尻の軽い女だなんて思われないかしら? 同じ足を出すならば、ホットパンツでも……うぅ、でも……」


 共学の女子だから男に慣れているとかそういうのは、実際の所は人それぞれである。

 白河エルザは少なくとも「慣れていない」部類であった。


「でも、デートなんだし……勢いよくデートにしちゃったけど……あぁぅ……男の子と二人でお出かけなんて初めてよ……どういう格好の方がウケがいいのかしら?」


 男子から告白をされた回数はそれなりに多かった。

 しかし、一度も交際には至ることは無かった。

 中学ではそういったものにあまり興味なかったことと、高校生になってからは入学して間もないころに見に行ったラグビーの試合で気になる人が出来てしまったから。

 それが……


「でも、ダンシくんは……エッチなことに興味あるみたいだし……どうなのかしら? 男の子は女の子にそういうのばかり求めて? 私とてそういうのはやぶさかではないけど、それはやっぱりもっと互いを知って親密になって……うん、ダンシくんのことやっぱりいいな~って改めて認識することが出来て、それで好きとかそういうのを確認できてから……でも、最初のデートが全てを分けると言っても……あぁ、どうすればいいの!?」


 常に整理整頓されて掃除もこまめにされている綺麗なエルザの部屋もこの時は散らかっていた。

 投げ捨てられる上下の服の組み合わせ。下着に至るまでもベッドの上に並べて様々なシチュエーションを妄想する。





そして、結局最後は最も仲の良い親友たちに相談するしかなく……




エルザ:―――で、どっちがいいかしら?


雪菜:やはりミニスカートがいいと思います! 自分のお気に入りで勝負するべきです!


ヒナタ:初めてならミニスカもホットもなし。キュロットでいいよ。初回で勝負服着てったら二回目で困るよ? っていうか、まだ彼氏彼女じゃないんでしょ? 露骨すぎ


エルザ:にかいめ? ガクガク((( ;゚Д゚)))ブルブル


雪菜:それは盲点でした! 確かに一度で終わりではなく、これからも……


ヒナタ:相手は女の子慣れしてないんだろうし、短いスカートもホットパンツも視線のやり場に困ると思うよ? 会話も頭に入らないだろうし。それなら「いつもの制服とは違って私服!」てな感動を与えるだけに留めて、デート楽んじゃおうよ~。慣れてない男の子が女の子の足を意識するのは最初だけ。その後はずっとパンチュが見えるかどうかしか気になんないと思うよ~?


エルザ:でも、「つまらない格好」って思われないかしら? 私、キャラ的にセクシーな私服で来るって期待されているような気も……


ヒナタ:相手がウェイ系ならね~。でも、エルちゃんのしゅきぴは意外と純情ボーイでしょ~? それとも初回でホテルに連れ込むとか? ごめん、私も流石にそこまでのアドバイス分かんない……


雪菜:ホテル?! は、はれんちです! バレたら退学ですよ!?


エルザ:行くわけないでしょ! ……でも、彼がホテルまで考えてたらどうなのかしら? 高2でヴァージンどころか交際経験もない私なんて「つまらない、めんどくさい」なんて思われて2回目からデートに行ってもらえなくなったら(((p(≧□≦)q)))グスン


ヒナタ:そんな男の子付き合わなくていいから、むしろやめなさい。


エルザ:でも……念のため、コンドーム買っておいた方が良いのかしら?


雪菜:ysねいあ


雪菜:誤字です。やめるのです


ヒナタ:うん、やめなって。あと、たぶんだけど男の子って予定があってもなくてもコンドームを一個財布に忍ばせてるみたいだから万が一でも……


エルザ:やっぱりミニスカートで下着も一番のを


雪菜:だめです! 子供が出来たらどうするんですか!


エルザ:(._.)


ヒナタ:ねぇ、それはそれでとか思ってるんなら怒るよ?


エルザ:でも、二人はどうなのよ! 二人だって、佐塚くんと荒木くんとデートできたとして……


雪菜:私はまずは楽しくおしゃべりできればそれで……今期始まった続編のアニメも語らいたい!


ヒナタ:私は普段あまり笑わないサンガくんの笑顔が見れればそれでいいな~(これで私の好感度爆上げ)


エルザ:待ちなさい、それだと私が、いやらしいみたいじゃない! っていうか、あなたたちもどうなのよ! 高2ヴァージンってもう少なくなってきてるわよ!?


雪菜:え!? そうなのでしょうか? でも、私は……まだそこまでは……



 そして、結局その相談は深夜まで及び、途中脇道それることもあったものの、結論として白河エルザもデートをメチャクチャ意識をしていたことを、ダンシコーも元ムサクル男子たちも知らなかったのだった。

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