第12話 キョーガクの女子たち
白河エルザは親友と共に、休日の学校に足を運んだ。
「いや~、今日は誘ってくれてありがとうございます。まさか、エルザがラグビー好きとは知りませんでした!」
「うん。私のお父さんも学生の頃からやっていて、私がまだ小さい頃もクラブチームでやっていたから、試合を見に行ったりしていたの」
「なんと、そうでしたか! では、今日は一緒に応援しましょう! 相手は全国区の強豪校のようですが、無名の弱小校が強豪に挑むというのは、まさに王道の燃える展開だと思います!」
「そうね……でも、自分たちの学校を無名の弱小校って酷いわよ?」
入学してまだそれほど日にちは経っていない。
まだ学校にも慣れていなければ、学校にどのような人たちがいるかも分からない。
部活のレベルも実績としてなら分かるが、どの程度に力を入れ、そして情熱を持っているかも分からない。
そんな中でラグビーというのは女子が多いキョーガクにとっては異質のスポーツ。
しかしそれでも今日は、上級生や下級生問わずに休日の学校に……主に女生徒が多く集まっていた。
「あら、観戦している人が多いわね。これもラグビーワールドカップ効果かしら?」
「そのようですね! 男たちの熱きぶつかり合いに刺激を受け、興味を持つ女子が増えているのかもしれませんね!」
「ええ。日本もラグビーの人気が……ん? いえ……これは……」
元々ラグビー好きだったエルザとしては嬉しいと思った……が、すぐに理由が分かった。
「きゃ~~~、キャプテ~ン!」
「後輩く~ん、がんばー!」
「あんた、応援してあげるんだから頑張りなさいよ! 別に私はどうだっていいんだからね!」
「だいちゃん、ファイト!」
「兄さん!」
キョーガクに男子は少ない。ゆえに、男子の運動部は学校にとってはアイドルのような存在なのだった。
カッコいい男たちの姿を見たい。
意中の相手がいる。
良い新入生がいたら今のうちに……など、そういうミーハーな観戦が多かった。
「なるほど、そういうことね」
「あ、あはは、そのようですね……でも、応援には変わりありません! 私たちの応援で強敵に立ち向かう仲間たちを後押しです!」
親友は苦笑しながらも前向きにそう言うが、エルザは微妙な気持ちだった。
なぜならば、エルザのラグビー好きは、そこそこ「ガチ」だったからだ。
自身もテニスなどのスポーツをする。スポーツは見るのもするのも好きである。
特にラグビーは父親もやっており、子供の頃から試合を見ていたこともあり、自分の中ではかなり上位に好きなスポーツでもあった。
しかしだからこそ、戦う男たちがどのような者たちなのかもある程度分かっているつもりだった。
そのため……
「なんだか、これから試合なのに……みんなイチャイチャしたり、気が緩そうだったりね……大丈夫かしら?」
闘争心が感じられない。エルザが自分たちの学校のチームを見て真っ先に思ったのがその印象だった。
一方で……
「頼むぞぉお、ダンシコー!」
「うおおおおおお、羨ましいなんて思わねえ、俺達には友情があるさ!」
「やっちまえええ! ハカイーっ! 暴れろぉお!!」
「サンガーッ! タックルぶちかませえええ!!」
相手チーム。ムサクルラグビー部の応援に来ていると思われる男子たちが居た。
その目には涙やら炎やらが見え、思わずエルザたちもギョッとした。
「ムサクルの応援かしら?」
「ええ、すごいですね! 応援からこの熱の入りよう……練習試合と聞いていましたが、この情熱、流石は全国区の強豪校ですね!」
「ええ……確かに、熱を感じるわ……試合前から応援団でこの熱……ならば選手たちは一体どれほどの?」
男たちの気合がビリビリとエルザには伝わっていた。
思わず胸が高鳴るほどに。
そして、エルザがグラウンドに目を移すと、そこにはユニフォームを着た男たちが既にアップを始めていた。
そして、その中にエルザの目につく選手がいた。
「いい体……そして顔つき……ファイティングスピリッツを感じるわ。特に……あの……スタンドオフの10番……6番のフランカー……3番のプロップは……ちょっと身に纏う雰囲気が違うわね……」
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