第3話:愚者
私はなかなか返事をしないルガレッタに疑問を持ちました。
確かに私の質問は調べることが難しい事だと分かっています。
複数の男性と肉体関係がある女から、腹の子供の本当に父を調べるというのは、そう簡単にできる事ではないでしょう。
特にその一人が王太子であり、王家に王太子の種ではない子を押し込もうとしているのなら、情報が漏れないように警戒を厳重にしているはずです。
「簡単に調べられない事は分かっています。
今直ぐとは言いませんから、これからも引き続き調べてください。
それに、私の望みをかなえるだけなら、別に誰の種でも構いませんから」
「いえ、そうではありません、そうではないのです」
本当に珍しいこともあるものですね。
ルガレッタは謀略も苦手ではありませんが、本来は正々堂々とした戦いが得意な、竹を割ったような真直ぐな性格をしているのです。
難しい調査が少々遅れたくらいで、このように返事を濁す事はありません。
「まだ調べ切れていませんが、必ず調べてみせます」そう言い切る女です。
いったい何を悩んでこんなに言い難そうにしているのでしょうか?
「いったい何が言い難いのですか?
何時ものようにスパッと言い切ってください」
「いえ、言い難いのではなく、私には理解できないのです。
これほどの馬鹿が、いえ、何も考えずに生きることができる人間がいることが」
なるほど、そういう事でしたか、リナビアナの天然馬鹿に戸惑っているのですね。
だとすると、返事はだいたい想像できますが、確認しておかなければいけません。
私も昔はリナビアナの天然馬鹿に驚かされたものです。
最近でこそ慣れましたが、天然馬鹿の予測不能の行動に、何度綿密に計算した計画を台無しにされた事か!
今回も気を付けないと、大切な計画が破綻させられてしまうかもしれません。
「今の話でだいたいの予想はつきましたが、確認したいので話してください。
気にする事はありません、世の中にはリナビアナのような天然馬鹿がいるのです」
「はい、信じ難い事ではありますが、現実は認めなければいけませんね。
では、報告させていただきます、リナビアナ様自身が、腹の子の父親が誰か分かっていないようです。
いえ、それ以前に、腹の子が誰の子であろうと構わない、気にしていないように思われます」
やはりそういう事でしたか、リナビアナらしい考え方ですね。
本当に父親が誰であろうと関係ない、王太子と関係を持ったのだから、できた子供は王太子の子供にすればいい。
調べる方法などないから、自分が王太子の子供だと断言すればすむと思っている。
まあ、実際問題、誰の子供か分からないリナビアナが、ヘリドスの子供として認められていますからね。
さて、これを計算に入れて私の計画を修正すべきかどうか、少々悩みますね。
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