第4話:暴露

 ライエン公爵邸の大広間には、溢れんばかりの王侯貴族が集まっています。

 ずっと金欠で、いえ、極貧で舞踏会もパーティーも開催できなかったのです。

 ですが、私が全費用を負担する事で、ようやく開催することができました。

 私個人の家臣使用人だけでは、集まった王侯貴族に最高もてなすことができませんので、縁を繋いだ商家の方々に最優秀の侍女と従僕を手配してもらいました。


「オッホッホッホッ、オッホッホッホッ」


 ラナディアが、私のツケで買ったドレスや宝飾品で着飾り高笑いを浮かべていますが、集まった人達からは蔑みの目で見られています。

 当初は妖艶な美貌でもてはやされたラナディアですが、その頭が空っぽなのがバレてしまい、誰も社交の相手とは認めていません。

 もっとも、その怪しい魅力は未だに健在で、貞操帯さえなければ、金さえ払えば簡単に抱ける相手として、利用したい貴族は結構いるでしょう。


「まあ、王太子殿下ったら、そんな事を仰っては照れてしまいますわ」


 ブル―ノ王太子と妹のリナビアナが人目も憚らずイチャイチャしています。

 多くの良識ある王侯貴族が眉をひそめていますが、一部の紳士が嫉妬の目で見ています、全員リナビアナと肉体関係があった者達です。

 いえ、中には報告になかった紳士も混じっていますから、片想いしているか、もしくは調査に漏れがあったのでしょう。

 再調査を命じなければいけませんが、それは後でもいい事です。


「ブル―ノ王太子殿下、これはいったいどういう事でございますか?

 殿下の婚約者は私であって、妹のリナビアナではありませんが?」


 少しは申し訳なさそうにすれば、王侯貴族を味方につける事もできるのに、完全にリナビアナの魅力に溺れているのでしょう、私を憎々しげに睨みつけます。


「ふん、公爵家と縁を結ぶために婚約してやったし、結婚もしてやるが、それは愛のない政略結婚だという事くらい分かれよな。

 子供を作るまでは抱いてやるが、その後は好きにさせてもらうぞ!」


 皆が政略結婚なので、それに対する暗黙にルールがあるのです。

 どれほど夫婦仲が悪くても、それを社交の場で公言することや、相手を罵ることは貴族として厳禁なのです。

 こいつはそんな事も理解できない馬鹿だと、この場の皆に知られてしまいました。

 もう王族として敬われることも、秘密を打ち明けられる事もないでしょう。

 馬鹿に秘密を打ち明ける賢明な王侯貴族はいませんから。


「いえ、子供は作っていただかなくて結構でございますよ。

 だってもう王太子殿下は、リナビアナとの間に子供ができているのですから。

 ライエン公爵との政略結婚はそれでいいかもしれませんが、私はどうなるのです?

 一人の淑女、マリアンヌを裏切った責任はどう償ってくださるのです?」

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