可能性
『31階層への転移が許可されます』
『突破報酬を選択してください
・適した装備
・良い消耗品
・魔力レベルアップ』
そんな表示が俺の視界に浮かぶ。アナウンスと呼ぶ事にしたこの音声は、詳細情報が解禁されてからは視界にまで映り込んで来るようになった。ただ、問題はそんな事ではない、新たに俺のステータスとも呼べる項目に追加されて魔力レベルと言う概念についてだ。
スキル《捕食》
基本魔力7122
魔力レベル1
合計魔力7834
俺の体内の感覚では、体内の魔力量は7800と少し。つまり、合計魔力量が正しい数値と言える。しかし、30階層のボスで増えた魔力量は7100程度までだったはずだ。つまり、この魔力レベルという何かが、俺の魔力を約10%増やしている事になる。
だとしたら、俺が選ぶ物は一つしかない。
「魔力レベルアップ」
『魔力レベルが2になりました』
そんなアナウンスの後、俺はステータスを表示する。
スキル《捕食》
基本魔力7122
魔力レベル2
合計魔力8546
やはり、魔力量が魔力レベル1に対して10%向上するのか。本当に魔力を増やすために作られたような場所だ。このダンジョンと言う建造物は一体なんなんだ? 知れば知るほどに謎めいてくる。誰が何のために作った場所なのか、そして何故これを地球に出現させたのか。賢者の記憶が疼くのだ、この謎を解明しろと。ただ、今は黙ってろ、もっと速く強くならないといけないんだから。
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「さっむ……」
砂漠とは真逆、その場所は雪山だった。直ぐにコインで防寒具を買って、着ていく。
「動きにくいな」
防寒具を来た状態だと身体捌きにかなり制限がかかる。ただでさえ寒さで手がかじかむのに、この状態で真面戦えるだろうか。仕方ない、この階層は魔法主体で戦うしかなさそうだ。
「白い鬼……?」
現れたのは白い肌を持った、ゴブリンに近い魔物だった。ただ、二階層からの草原のゴブリンと比べて大きく異なるのは、その群れの規模と体格だ。筋骨隆々とでも言うのか、オーガとはまた違った質の強さだ。パワーに振り切っていたオーガに比べて、こいつらは敏捷性、脚力に優れる。
この数の魔物が、高速で攻撃してくるのは厄介以外の何物でもない。しかもこいつら、この雪景色に擬態してる上に、寒さによる悴みを受けていないように見える。
「
既にその魔法の
「ギギャ? ギギャギャギャ」
ゴブリンたちは俺を見て笑みとも取れる表情を浮かべていた。
「なに笑ってやがる」
だが、ただ速いだけで賢者の魔法は破れない。
四五術式、
「
この魔法は無機物を固定化し、砂や水を一個の個体とする魔法だ。
これを雪に発動すれば、ゴブリン共は雪に脚を奪われる。
「
その状態で、この魔法は避けられない。
炎に飲み込まれたゴブリンは焼失していく。
ただ、それでも完全には倒しきれていないのは、跳躍中の個体もいたからだ。
「ッチ、捕食」
使った魔力を即座に吸収し、大規模な魔法を組み上げる。
悪いが加減できそうにない。
ボスでもないが、全力で行かせてもらう。
「第四八術式、
身体から剣が生えるその魔法の最大の特徴は、その無限性にある。
その魔法の持続による消費魔力は決して燃費の良い物とは言えない。
八番台の魔法を一発撃てるだけの魔力を使って、風狼脚のような強化を経ったの10秒間付与できるだけ。
ただし、この魔法を10秒発動できるという事は、要するに勝利を意味する。
身体から剣を生やす。
ただそれだけではない。
伸縮自在であり、同時制御数は名の通り千。
いや、今の俺なら1200は行けるか?
「スピードが自慢なんだろ? 避けてみろよ?」
その剣は自在に伸び縮みし、弾速は秒速100m。
更に、好きなように曲げられる。
俺の身体から放たれた魔力の劔は、全方向に対して刃を放出し、雪ゴブリンを捉える。
幾らスピードが早かろうが、秒速100mの剣速から逃れる事など出来ないし、出来たとしてもその数の前には無力だ。
「ギッ……」
貫ぬいた状態のまま、効果時間の10秒が終了する。
ただ、その時立っていたゴブリンは皆無だった。
「捕食、
さっさと抜けさせて貰おう。
死体から吸収した無尽蔵の魔力を使って、ゴブリンを手駒として復活させる。
こいつら、そこそこ強い癖に保有魔力は7000を突破しても居ない。
つまり、狩るメリットは全くない。
さっさと終わらせてしまおう。
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詳細情報の解禁の有用性が、ここにきてようやく分かってきた。ステータスが追加されていくのなら、その機能の解放は必要なことだろう。それにこの機能は、道具の詳細情報を表示してくれる。普通に考えて、ポーションなんて拾ったとしても飲もうとは思わないだろう。ただ、詳細情報があればそれが回復薬である事が解る。俺は賢者の知識によって、それが回復薬であると理解はできたが、普通ならアナウンスの声だけで判断しなければならない。地味にありがたい機能だったんだな。
それに魔力レベルの詳細も確認できた。魔力レベルはその名の通り、肉体の保有する魔力量の補正をするステータスだ。レベルが上がるほどに、基本の魔力量にレベル分の魔力を追加した器を与える。つまり、これが有るだけで、俺の魔力量は事実上無限に伸びる訳だ。まあ、魔力レベルに上限が存在するならその限りではないのだが。
この魔力レベルの上げ方に関してだが、階層を更新するのが一番簡単な上げ方だ。これ以降の10の倍数の階層の突破報酬には、必ずあの選択肢が現れる。そこに魔力レベルが含まれているという事らしい。詳細情報は、その項目に対して知りたいと思う殆どの事に応えてくれる。それには、階層更新以外の魔力レベルの上げ方にも記載があった。それは、ボスモンスターの魔石を吸収する事。ただ割ればいいらしい。まさかこんな簡単に魔力を上げる事が出来るとは驚きだ。ダンジョンが何のために存在するのかは分からないが、前世の世界に有ったなら、喜々としてここに潜る魔術師は絶えなかっただろう。
俺は直ぐに亜空倉庫に会ったボスの魔石、計5つを割る。
『魔力レベルが上昇しました(7)』
1つ1レベル分か。中々な効率である。ただ、ボスは復活しない為、この方法は使用回数に制限がある。それと、ボス魔石というのを調べた結果、この魔石ダンジョンの外に出ると消滅する事が解った。そして消滅した魔石のボスはまた復活する。つまり、このボス魔石は自分の為にしか使えない。しかも、パーティーで入る場合、ボス魔石の総合的な獲得数が減る。
つまり、ソロトラベラーほど魔力を増やしやすいという事だ。
ただ、これは俺にとっては幸運なニュースと言える。何故なら、俺の強さはもっと加速されるという事なのだから。
『49階層への転移が許可されます』
30~50階層までは一つの領域で繋がっていた。今まで通りなら、10階層事にボスモンスターが居て、それを突破しなければ次の階層へ行く事はできなかったが、この階層だけは30~50階層の20階層分が同じ雪景色となって統一されていた。
40階層にボスは居らず、そのまま素通りできてしまった。それなのに40階層の突破ボーナスで魔力レベルアップは出来たのだから運が良いというのか悪いと言うのか。俺としてはボスモンスターの魔石を入手してレベルアップしたかったところではあるが、居ない物はどうしようもないか。
そんな事を考えていながら49階層から50階層への扉を探していた。
そうしていると、俺は驚くべき人物との出会いを果たしていた。
「お久しぶりです。陰瑠さん」
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