第16話 懐かしい協力者


 龍之介が片腕と仲間達を犠牲にしてまで、もたらした情報は大きかった。


 ゴットアベンジャーは、神に対する準備と今まで謎に包まれていた過去には、彼等がなぜ怒り、復讐しようとしているのか。その足がかりが分かるかも知れない。


 彼等の怒りの核が分かれば、協力関係が築けるのではないか。そうすれば、真の平和が、姉であるリリーナとの関係修復も可能ではないかとゆう思いがあった。


「龍之介の話を文字に起こし、一つ一つを確認するんだ!」


 叫ぶレイの声に、全ての部隊が一斉に動いたがウィンドラを呼び止める。


「ウィンドラ、君にはある人達に、手紙を渡して欲しいんだ」


「手紙かい?」


 渡された名前を見てウィンドラは納得した。


「なるほど、これは骨が折れるし、ボクたちじゃないと無理だね」


 溜め息混じりのウィンドラにいつも、無理難題を言ってばかりなので、労いの言葉を送る。


「いつも、すまない。君達が優秀だから、オレは頼ってしまう」


「だ、大丈夫だよ。仲間達もいい待遇だって喜んでるし、レイが苦労しているのは、ボクもわかってるから……」


 急に言われたウィンドラは内心、慌てていた。いつも、強気で最前線で動き、策略を巡らせている人が、しおらしい態度にキュンと来てしまっていた。


「暇な時でも、食事を奢らせてくれ」


「う、うん。楽しみにするよ」


 2人のやり取りと、赤くなったウィンドラを見て、カインとウォルが呟いた。


「ウォル兄さん、レイはタラシの才能があるのだろうか?」


「そのような、才能は困るが、甥っ子の顔は早く見れるかもなぁ」


「まぁ、羽根や尻尾がある甥っ子になるな……」


「合衆国の象徴として、大々的に発表しよう。カインも、そのつもりでいろよ。同時に2人や3人はあり得るからな……」


 2人して、お茶を飲みながら、未来は明るいと考える、2人の兄がいた。



♢♢♢


 一月後〜


 合衆国では、聖域のその後の確認作業とグランド王国の情報収集が、急ピッチで行われた。


 ゴットアベンジャーやキルゴットについては、隠蔽されていて分からない事だらけだったが、グランド王国についてと聖域については分かった。


 聖域は、破壊されメイド達は、無残な姿に変わっていた。竜神協会の元、合衆国で手厚く埋葬されたが、龍之介の右腕的な存在、リューネストの確認が取れなかった。


 龍之介に、リューネストが生存の可能性がある事を伝えた。


「そうか……そうか……レイ、助かる。ありがとう。オレは、なんでも協力するから言ってくれ」


 龍之介は、リューネストの生存の可能性によろこんでいた。

 塞ぎ込んでいたが、明るさを少し、取り戻していた。


 謎のグランド王国は、西の大陸にある事がわかった。


「呪われし王国?」


 ハーピー隊の情報だと、数十年前に信託に逆らい、神罰が下され一夜にして滅びた呪われた王国とゆう事しか分からなかった。


「レイ、が探している人達とウィンドラが接触しました。どうやら、聖域の件で来ていたようです」


「ありがとう、アイカ。所で、何? その格好はどうしたの?」

 

 赤いフレームのメガネに胸が強調されたビジネススーツ、赤いパンプス、ガーターベルトでエッチな家庭教師みたいだった。


「龍之介殿が、秘書とはこの様な格好をすると聞きました」


 アイカは、胸を張るたびにプルンと揺れていていた。


「なんでも、ハイヒールと言うのは、慣れてないと危ないと言うので、龍之介殿が監修の元にパンプスを作って頂きました」


「何やってるの、龍之介殿は! 協力ってそう言う事?」


 オレの知らない内に、龍之介が何やら斜め上の協力をしているらしい……


「ママ、カッコいい! できる女って感じ!」


 アイカの周りを、ココが飛び回り褒めていた。


「そうでしょ! これで、レイ様はいつも、私に夢中に……」


 アイカが、何かニヤニヤしながら、呟いていたが嬉しそうなのでいいか。


「近々、西の大陸に行かないといけないか……」


「レイ様、私も行きます! 秘書ですから!」


 エロ家庭教師姿のアイカが胸を張りながら、オレの呟きに答える。


「そうだね、アイカがいると助かる……隠密に優れた、ナターシャ。情報収集に優れた、ウィンドラも必要か……」


「ココも、ココも……」


 オレの肩に乗りながら、ココがペシペシと頬を叩く。


「ココが来るのは、当たり前だからいいんだよ」


 最初から頭数に入っているのを知ったココが、肩の上で腕を組み、嬉しそうにしながら、ふんぞりかえっていた。


「ふん! ココは偉いのだ!」


 アイカの部下の1人が、アイカに耳打ちをする。


「レイ様、お客様が参りました。手紙のお客様です」


「そうか、すぐに来てもらってくれ」


 扉が開き、五人の人物がいた。


「お久しぶりです。ピースメーカー、斑目まだらめ雫殿……」


 雫が、レイを見た瞬間に驚愕の顔に変わる。


「久しぶりだね、レイ殿。なるほど、私達が呼ばれた意味がわかったよ」


「さすがです。あなた達と、協力関係を築きたいと思い呼びました」


「君は、超越者ちょうえつしゃか?」


「はい、オレは超越者になりました。アルク・カルスの導きにより……」


「レイ様、超越者とは?」


 超越者は、地球で特殊な能力に目覚めつつ、この世界でも能力が目覚めた者が、自由に神に会う事ができる人の称号になる。


「オレは、地球で霊能力者でした。悪霊を払い、千里眼を使えましたが、超能力は使えませんでした。この世界で、超能力を覚醒させ超越者になったんです」


「そうか。なぜ、私達なんだ?」


「ゴットアベンジャーを止めないと、最終戦争ハルマゲドンが起きます」


「最終戦争?」


 オレの言葉を理解できず、雫達は立ち尽くしていた。

 

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