第15話 対神特殊部隊 キルゴット
魔獣の大森林の一部が燃え上がり、炎に照らされる中で、戦いは激しさを増していた。
竜也が放つ、斬撃が龍之介を襲いかかる中で、二本の短刀は限界を迎えて折れる。
「くっ! 大剣を使っているとは、思えない程の斬撃だな」
折れた短刀を投げつけ、体を捻りながらバク転をし、腰にある二本の扇子を抜く。
「人形とは、思えない程に……昔のままなのだな」
着地と共に見た竜也の顔には、懐かしいような深い悲しみの目をしていた。
「極技・
「極技・
赤い光に包まれた龍之介に対して、竜也は漆黒の炎に包まれた。
両者が進んだ後は、燃え上がる真紅の炎と漆黒の炎が立ち登り、衝突した瞬間に、2人を中心にして、大地に巨大なクレーターを作っていた。
2人の放った衝撃で大森林は、真紅の炎と漆黒の炎にわかれ、大火災になっていた。
周りにいた者は、衝撃波を魔法で防いでいたが静夜と和臣は喚いていた。
「アイツら、迷惑過ぎない」
「全くだ! 彦十郎、なんとかしろ!」
突然、自分に振られて驚きながらも、諦めたように彦十郎は鍵を握り締めた。
「しょうがないか、デカいのは、頼んだぞ! 極技・
彦十郎の技が回りから、一瞬だけ色をなくす。
「指定コード。魔炎・神炎、ロック!」
世界から色が戻るのと同時に、炎だけが消えていた。
「彦ちゃん、ご苦労さん」
「よくやった、彦」
大技のせいで、魔力がなくなり、疲れ果てた彦十郎に、静夜と和臣が偉そうに声をかけてくる。
「おまえら、なんで……そんな……感じなんだ」
倒れた彦十郎を遠くにいる、オウガ達の方に静夜が投げ飛ばす。
「オウガちゃん、頼んだぞ!」
オウガが彦十郎を受けるのとほぼ同時に、バルパスの黒い包帯が、静夜と和臣を包む。
「アベル、カルス! チャンスだ!」
「いくぞ、カルス!」
「おうよ、アベル!」
アベルとカルスが、構えるとタイミングを合わせ、同時に技を放った。
「極技・
「極技・
アベルの槍が、突き刺さると大爆発を起こし、カルスの拳が、バルパスの黒い包帯と周辺一帯を砂状になるまで、粉塵していた。
「残念でした! 変わり身だよー」
カルスが突然、背後から静夜に話しかけられて、ほんの一瞬だけ体が固まった。
「極技・
和臣の刀が、次元の壁を切り裂き、カルスの体が細切れになりながら、異次元に吸い込まれる。
カチンーー
和臣の刀が、竿に収まると次元の裂け目が消えさり、カルスは魂ごと消滅した。
「アベル! 避けろ!」
バルパスの叫び声が、砂漠化した戦場に木霊したが、アベルの反応は遅すぎた。
「極技・
槍、刀、大剣、斧等あらゆる武器が空間に出現
と1つ1つに、意思があるよう動き、アベルに突き刺さり、血の雨を降らせた。
突き刺さる武器の隙間から、光の粒が昇り消えていく。
「カルスに続き、アベルまでもが……」
呆然と座り込むカルパスに、静夜と和臣が近づいてくる。
「あとは、包帯。 あなた、だけ……」
怯み、後退りするカルパスを和臣と静夜が追い詰める。
「なんで……お前がいるんだ。探し続けていたんだ。10年以上の間……」
声の方には、和臣と静夜の背後には、アスラがいつの間にか立っていた。
アスラの顔は、怒りに歪みながら涙を流し唇を噛みしめ、血を流していた。
「アスラ君、何をして……」
静夜が、質問しようとしたがアスラは、構わずにカルパスに問いただす。
「答えろ! 15年前に、なぜ聖王国の孤児院を襲った!」
叫びながら、カルパスに斬り掛かるが、黒い包帯でガードされる。
「15年前? 何を言っている」
「とぼけるな! 家族のように育った兄弟を、親のように育ててくれた神父様にシスター達を! お前達が、殺したんだろうが!」
「アスラ! 退け、命令だ!」
和臣が命令を下すが、止まりそうにないので、静夜が命令を下す。
「対神専用特殊部隊”神殺し《キルゴット》"の4番である"
軍隊の一面を持つ、彼らの中で番号を持った人物は、将軍クラスに等しい。
部隊名と番号に、コードネームまで宣言した上での命令違反は、有り得ない事であった。
「静夜様、いや、師匠! 奴は、私が求めていた復讐するべき相手なのです!」
アスラが、諦めずにくいさがる間に、黒い包帯を戦っている。龍之介に伸ばし続けていた。
極技同士のぶつかり合いの時に、片腕を吹き飛ばされ、片腕で逃げながら交戦していた、龍之介の足にカルパスの包帯が巻きつき、勢いよく引き寄せる。
「逃すか!」
竜也が追いかけてくるが、引っ張る力が凄まじく、気がつくとカルパスがいた。
「なっ!」
「受け取ってくれ! 龍之介!」
龍之介の頭をカルパスが鷲掴みした瞬間、眩い光と共に、カルパスの記憶が流れ込む。
「行け! 神に情報を伝えてくれ!」
黒い包帯が全身を包むと、遙か彼方に飛ばされていた。
「……」
龍之介は、立ち尽くしたあと、レイの元に、カトリック合衆国に向かった。
命をかけて、戦った仲間達と、助けてくれたカルパスに、感謝と謝罪を思いながら……
「すまない……みんな……すまない」
流れる涙だけは、止まらなかった。
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