第14話 天使 対 秘密結社


 叢雲 龍之介が瀕死になってまで、レイ達に、情報が持たされた。


 その戦いは、地獄のような戦いだった。



 月明かりの中、その日、魔獣の大森林は獣の声や虫の音もなく、静かな夜だった。

 

 凄じい強者の気配に、龍之介達は仲間の戦士、アベルと2人で取り掛からないといけないと感じ、聖域の入り口で待っていた。


「待っていたぞ! お前達がゴットアベンジャーだな!」


龍之介は息を飲んだ、7人の真ん中にいた男が、龍之介と瓜二つだった。


「やはり、ばればれか……教授に聞いて私は、2つの可能性を考えていた。一つは、自力で異次元から抜け出し、記憶をなくした龍ちゃんが、地元の原住民を助けている」


 男は、後半から震える声で、涙を流し怒りに震えていた。


「もう一つは、……神の人形に成り果てた可能性だ!」


 大剣を引き抜き、光の速度で切り掛かる。

 2つの短刀で大剣を受けるが、彼がなぜ自分を知っているのかが、わからない。


「何故だ! 何故、裏切った龍之介! 奴らが、奴らがグランド王国でやった事を忘れたのか!」


「グランド! 落ち着いてくれ、龍之介なんだぞ」

 

「間違いなく、師匠だ」


「貴方の双子のお兄様なんだよ、師匠は……」


 教授とオウガとキキが、怒りに震えるグランドを落ち着くように叫ぶと、グランドは距離を取った。


「正体は、わかっている。仮面を取れ、この目はごまかせんぞ、お前達は天使だな!」


 仮面を外した龍之介とグランドは、瓜二つで違いはグランドの目の下のホクロぐらいだった。


「ああ、私達はシャクナ・ドルアーク様の御使だが、お前達は、だれだ?」


 龍之介の発言に、グランド達は怒りと悲しみの入り混じった表情に変わる。


「そうか……そういう事が、記憶を消し、人形に変えたのか……どこまで、私達を愚弄すれば、気が済むんだ、貴様達はーー!」


 グランドの体からは、漆黒の風が吹き出しながら、ゆっくりと歩いてくる。


「教授、いや、隼人! オウガとキキと共に待機していろ、お前達は"ナンバー"ではないんだからな! 参戦したら、死ぬぞ!」


 泣き崩れるキキを担いで、教授とオウガが離れる。涙を流し流しながら、叫ぶ。


「竜也! 龍之介を解放してくれ……頼む!」


「ああ、お前達の痛みは受け取った。必ず解放してみせる! 彦、和臣、静夜、奴らを殺すぞ!」


 細身で盗賊のような格好の男が鍵を右手に呆れていた。


「ハァー、“ダブルドラゴン”の片割れと戦うなんて、骨が折れるな」


 日本刀を腰に刺した。学ランのオールバックの男が怒る。


「彦十郎! 真面目にやらんか、竜也の気持ちも考えろ」


 短パンに短髪がよく似合う、小柄の女性が笑った。


「和臣、説得力ないよ。あっ、隼人〜アスラ君も後で来るから、一緒に見学させてあげてー」


 3人は、独特の雰囲気があり底が全く分からなかった。


 彦十郎が右手の鍵を空中で鍵を掛ける動作をした時、何か変わった……


「秘奥義・状態異常錠バットロックこれでお前達は理不尽を強制される」


 体や足腰が急激に重くなる。


「アベル! 大丈夫か?」


「大丈夫だ、秘奥義・流星魔弾撃スターゲイザー


 アベルの槍から放たれた数多の魔弾が龍也達に襲いかかる。和臣が、一瞬だけ驚いた。


「この技は、秘奥義・精幽斬アストラルスラッシュ


  和臣の技が、全ての魔弾を切り裂き空中で爆発する。火の粉が森に引火して燃え始める。


「アベル・ギルベルトだな。お前は……」


 アベルの仮面が割れ、褐色の青年が現れた。


「やはりか、竜也! カラクリがわかったぞ!」


 龍之介と戦っていた。竜也が顔を向けずに大声を出す。


「今言え!」

 

 隙を見て、影縫いをかけるが、漆黒の風に弾かれる。


「くっ! 厄介な」


「無駄だ! 龍之介の事は、知り尽くしている生まれた時からの付き合いだからな、和臣!」


「北欧のヴァルキリア伝説の記憶無しだ!」


 重い一撃で龍之介が後退ると、竜也が納得していた。


「なるほど、シャクナがオーディンか……あの、クソヘビがっ!」


 悪態を吐く竜也と互角に渡り合うが彦十郎の技のせいで動きが鈍い。ジワジワと重さが増していた。


「何で、わかったの和臣?」


 静夜の質問に和臣は答える。


「簡単だ。アベル・ギルベルトはオレが首を切り落とした相手だからな。殺された相手を前にして取り乱さないのは、ありえない」


「なるほどね、アベルは和臣に任せるよ」


 森の中から、仮面を着けたバルパスとカルスが現れて参戦した。黒の包帯を巻いたバルパスと筋肉が隆起するほどのマッスルのカルスも御使で、龍之介の仲間になる。

 

「……やっと、来たか。囲まれると面倒だから待ってたんだ。静夜もだろ?」


「もちろんだよ。私達が来て正解だったね!」


 バルパスの黒い包帯が伸び、彦十郎を捕らえようとした時だった。


「あなたは、私とデートだよ。包帯!」


 円状の刃物であるチャクラムが飛び、包帯を切り裂く。


「あなた、今日は厄日ね……」


 静夜は、不適に笑った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る