閉話 アイカとレイの添い寝の始まり


 時間はカトリック家崩壊から、少しあと……



 アイカ達は、帝国の追ってから逃げていた。

 エリカの傷は、完治していなかったが、普通に生活出来るまで回復していた。


 レイは12歳で、精神的な負担が大きかったのかカトリック家崩壊の後から、寝込むようになりカインとアイカが、帝国からの追ってを撃退していた。


「フレアアロー、しつこいにゃー!」


「アイカ! 大丈夫か、まだ追ってくるか?」


 馬車の逃亡中、帝国の騎兵に見つかり、アイカ達は追われていた。


「逃亡者を捕まえろ」


「大人しく捕まれ!」


 叫ぶ帝国兵を無視して馬車は走る。


「カイン様、2人左から来ます」


「わかった、エリカ? レイは大丈夫か?」


 馬車の中でエリカが、座席に横になって寝ているレイを落ちないように押さえている。


「大丈夫にゃー、みんな、頑張ってにゃー」


「みんな、がんばる。ココ、レイパパ、まもる」


 ココはレイの上てレイにしがみ付いている。


「フレアボム、フレアボム、フレアボムやられろにゃー!」


 フレアボムは対象が接触した瞬間に、爆発する魔法で攻撃魔法として弱いが、逃げるのに向いている。


 後ろで軍馬がフレアボムを踏み、爆発して転倒して後ろの騎兵が巻き込まれて落馬していた。


「グワッ」


 バキッーー


 走る軍馬から落馬し、転がりながら首の骨が折れる。

 アイカ達を追う者はいなくなった。


「やったにゃー、カイン様、もう大丈夫です」


「よし。急いで逃げよう」


 馬車を急がせる、しばらく走ると廃墟になった家を見つけたので今日は一晩過ごすことにした。


「すまない、みんなオレがしっかりしないといけないのに……」


 レイは安眠できず食事をしてもすぐに吐いてしまう為、青白い顔に深い隈ができていた。

 精神的に追い詰められていた。


 アイカに肩を借りながら謝る、レイにかける言葉が見つからない。

 みんな、心配していたが何をしたらいいか分からずにいた。


「寝たかい?」


「はい、でもまたうなされている、みたい」


「12歳のレイには、厳し過ぎる現状だ。仕方ない、正直アイカとエリカがいて助かっている」


「私は何かできないでしょうか? 自分が歯痒はがゆくて……」


 カインは首を振りながらアイカをなぐさめる。


「いやいや、アイカはよくやってくれている。これからもレイの側にいてやってくれ」


「そうにゃー、よくやってるにゃー」


「アイカママ、よくやってる」


 ココはパンにかぶりつきながら喋っている。


「姉さん……ココ……ありがとう、私レイ様の様子を見てくる」


 アイカはレイの部屋にいく。本当は自分が頑張らないといけないと思う、エリカだが何も出来ないでいた。



 部屋にはいるとレイが幽霊達を昇天させていた。眠りが浅く熟睡できない。


 カトリック家崩壊後、彼の側にずっといたアイカにはレイに触れなくても幽霊を昇天させる時だけ見えるようになっていた。


「ダメです、安静にしないと……」


「彼等を安息に導く時だけ安らぐんだ……今はこんな事しか出来ない」


 青白い顔に悲しみを含んだ横顔を見て、自分の抑えていた感情を抑えきれず、泣きながらレイに抱き付く。


「私があなたを癒したいのに……私は何もできない! ごめんなさい……」


「ありがとう……」


 押し倒して抱きついていたら、様子がおかしいのに気がつく。


「にゃ? レイ様?」


 幸せそうに寝ていたアイカの胸に顔を埋めながら


「……」


 静かにレイを抱きしめ直すと安心したように深い眠りに付く。

 レイを抱きしめながら、アイカは寝た。


♢♢♢


 次の日、レイの顔色はかなり良くなり普通に食事をできるようになっていた。レイが起きる前にベットから出て朝ご飯をエリカと作っていた。


 朝ご飯を食べているレイに、カインは驚いた昨日まで死にかけにしか見えなかったがかなり回復していたからだ。


「おー! どうしたんだ? 顔色はいいし、隈もほぼ無くなっている!」


「カイン兄さん、おはようございます。なんだか昨日は久しぶりにぐっすり眠れたようで体調がすこぶるいいんですよ」


「そうか、よかったー。安心したぞ、でも昨日なにがあっ……」


 たまたま、レイの後ろにいたアイカが目に入るとアイカは真っ赤になりながら、首と手をブンブン振り回して止めようしていた。


「昨日、アイカが部屋に来た事は覚えるんですが、記憶が無くてあんまり覚えてないんですよ」


 呑気に答えるレイにカインはアイカが不憫に思えたがアイカが嬉しそうにしていたのでよしとした。


「レイ、お前は幸せ者だよ」


「?」


 レイはカインが何を言っているのかわからなかったが深く考えずに食事を楽しんだ。

 この後、レイの体調は良くなりアイカがレイを添い寝する日課ができた。

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