第5話 これがオレの実力だ
12歳になり、魔法の適正を調べる為に教会で儀式を受けなければいけないらしい。この世界では
今日から成人になる。
「ココ? 隠れんぼかい? 今日は、町に行かないといけないから、ココはお留守番かな?」
「留守番、ダメ!」
「ハハ、居たね。かわいいなココは」
ココは、オレの腕に尻尾を巻きつきながら頬の近くまで登ってくる。ココをなでながらため息がでる。
イングラシア帝国では、12歳の成人までの貴族は表に出る事はない。貴族の子供は政治に深く関わって来るからだ。
だから今日オレは、いつも着ない豪華なマント付きの服を着ている。腰ベルトのサーベルに違和感ありまくりだ。ノックと共にアイカが声をかけてくれる。
「準備は終わりましたか?」
「終わったよ」
アイカも、成人式で今後はお付きの護衛になっていた。8歳の頃から武術の訓練に入り、かなり強くなり武技も多数の獲得に成功している。
今年から、3年間は寄宿学校に通い、政治・歴史・戦術・魔法学あとは忘れたが勉強しなければならないがアイカは従者としてついて来る。
「すごくきれいだよ……」
「レイ様も、素敵ですよ」
黒の軍服を基調に金色が入った制服だが、アイカは白を基調に青が入った制服でかなり綺麗だ。
アイカは、この5年で身長が伸びて胸が膨らみかわいいから綺麗にグレートが上がった。
「はぁー」
「また、ため息ですか?」
「兄上達に会いたくない、一度あった事があったがもう関わり会いたくないと思ったよ」
「グレイブ様とスタング様ですね」
「ああ、あの2人だ」
長兄のウォルスタンはすごく真面目な人で、金髪の七三分けのメガネで財務省で働いている。
次男のカインは肉体派だが優しく良い人だ。
三男のグレイブとスタングでジャ◯アンとスネ◯みたいな感じで、性格は最悪で嫌味なやつらだ。
初めて会った時に、アイカにすごい悪口を言ったので足を折ってやったが、あれからは来なくなった。
「ココもキライ」
「キライだよなー、ココ」
「レイ様……わたし……」
「大丈夫だよ、何かあったらオレが守るから。アイカを悪く言う事は許さない」
「はい……」
少しだけ頬を赤らめながら、嬉しそうにアイカが微笑んでいた。
屋敷のホールに行くと兄達がいた。
「久しぶりだな、成人おめでとう。これはプレゼントだ」
ウォル兄さんがメガネをクィッと上げながら、綺麗なラッピングされたプレゼントをくれる。
「ウォル兄さん、ありがとうございます。これは?」
「万年筆だよ。今年から学生だから、いい万年筆で勉学にはげみなさい。いいね」
メガネをクィッとあげながら話すウォル兄様は相変わらず生真面目らしい。
「久しぶりだな。大きくなった。オレからもプレゼントだ」
ナックルガード付きサバイバルナイフをくれた。
「オレが使った中で、1番いい刀鍛冶に作らせた。間違いなくこれから使う。持っとけ」
「カ、カイン兄さん、ありがとう」
成人にナイフか、カイン兄さん、らしいかな。
突然、扉を勢いよく開くと、相変わらず肥満で腹の出たグレイブが偉そうに言ってくる。
「まだ、獣人を連れているのか? お前も貴族なら、その獣を連れ回すのはよせ!」
「グレイブ兄さん! アイカはオレの従者になりました! オレの従者を蔑むのは、やめて頂きたい!」
「生意気なヤツだ。兄の優しさがわからないのか?」
相変わらず、取り巻きのようなスタングが嫌味を言ってくる。
「自分の優秀な従者が悪く言われて、笑っていられるほど、オレは人間が出来ていません!」
コイツらは、昔のままやな奴らだ。変わらないどころか酷くなっていた。
「獣人風情が優秀な従者だと! 貴様、笑わせるなよ! 家畜が従者になれるはずが、あるまい」
「アイカの侮辱はこれ以上は許しません!」
2人の言い合いに我慢の限定を迎えたウォル兄さんが、説教を始めた。
「よさないか! めでたい日になにを考えている! グレイブ、いい加減にしろ。カトリック家の人間が差別を言うのは許されない事だ」
「わかりました。しかし、カトリック家は世間から見たら変わり者だ。お前はなにも理解していない、私達は帰らせていただきます。スタング帰るぞ」
怒るグレイブに後ろについて帰るスタングが帰ったあと、カイン兄さんがオレに言って来た。
「アイカを、本当に連れて行くのか?」
「もちろんです」
「考え直さないか? アイカの為にもだ……」
「「!?」」
アイカもカイン兄さんがそんな事を言い出すとは思わなかったらしく絶句していた。
「私も同じ考えだ」
「ウォル兄さんまで!」
心配そうなウォル兄さんがメガネを上げながら話を続ける。
「貴族の中には絡め手を使う者もいる。事が起きてからでは遅いんだ。アイカを大事に思うなら連れていない事を考えた方がいい」
「大丈夫です、オレが守りますから……」
「成人になったばかりのレイが本当に守れるのか?」
父様と母様が部屋に来たが、場の空気に気づいた2人に今までの事をウォル兄さんとカイン兄さんが話をした。
「なるほど、ウォルとカインの言葉も一理ある」
「父様まで……わかりました。では、オレが実力を示せば、アイカを連れて行ってもいいんですか父様?」
「力を示す? どうするんだ?」
突然、地震が起き窓からの日差しがなくなり暗くなる。
「地面が!」
「ゆれている!」
「この世の終わりか!」
「きゃーー」
「にゃーー」
ウィル兄さん、この世の終わりって……よく考えたら、地震にあった事がない。地面が突然、揺れたら無理はないか。
「みんな、庭に出て下さい!」
庭に出ると、10メートルを超える岩が浮かんでいる。地面には巨大な穴が開いいた。
地中の岩を、地上に持ち上げ浮かしている。
空の岩に全員が絶句していた。
「な、なんだアレは……」
「これが、オレの力です!」
こぶしを握りしめると、岩が紙のように縮んでって砂になって消えた。
「……レイ? ……なんだね? それは?」
10メートルの岩を砂に変えたあと父様が絞りだすように呟いた。
「見ていなかったんですか? では……ではもう1度!」
構えるとウォル兄さんが急いで、止めに入る。
「待て待て! 父上、落ち着いて下さい。また、地面がゆれますよ」
「……はー」
「マリア殿しっかりして下さい」
「レイパパ、カッコイイ」
「なんだそれは、聞いていないぞ!」
ココを見た父様が驚き叫ぶ。
母様が、目眩を起こし倒れるが、カイン兄様が倒れないように支える。
「母様をベットに運んでくれ」
「にゃー、マリア様」
エリカが母様を連れて行った後、みんなが冷静になるまでにかなりの時間がかかった。
母様をベットに運んでから、みんなで部屋に戻り落ち着く為にエリカ達に紅茶を用意して貰った。
「……はー。知らぬ間に謎のモンスターを飼い、どんでもない力に目覚めている。……ウォルとカインよ。どうしたらいい? パパ、どうしたらいい?」
「父上落ち着いて下さい。私も正直、どうしたらいいか……はははは」
ウォル兄さんが、メガネをクィッと上げながら乾いた笑いをする。
「そうだな、しばらく弟に会ってなかったら、弟がどんでもないトラブルメーカーになってるなんて夢にも思わないからな」
呆れるようにカイン兄さんが呟く。
「しかし……どうしますか? レイの寄宿学校の件は? こうゆうのもなんですが、下手をしたら寄宿学校が物理的に吹き飛ぶますよ。……父上?」
父様がみるみる青ざめていく。
「まずい、ひじょーにまずい。貴族の子供達が皆殺しになりかねん。地獄絵図になる」
「父様、いくらなんでも大丈夫ですよ」
「本当か? 本当に大丈夫なのか?」
父様がオレに何度も確かめる。
「父上、現実問題として入学は国が定めた規則です。それは止められません。そうだ、アイカは護衛でしたがレイが問題を起こさないようにお目付役にして定期的に報告をするようにすれば……」
「なるほど! では先程のココ? だったか? お目付役にして監視させればいいんじゃないか?」
「そうだな、とりあえずそれで行こう」
父様が立ち上がりアイカとココの前に行く。ガシッとアイカとココの手を交互握り。
「くれぐれもレイが馬鹿な事をしないか監視をしてくれ、頼む!」
「にゃー、わかりましたから当主様、おやめ下さい」
「ココ、だったか? レイを頼むぞ」
「ココわかった」
ココは元気に応えている。
心配そうに椅子に腰掛けながら父様が呟いた。
「本当に大丈夫だろうか? 心配しかないが…」
「これからはアイカとココと常に行動しなさい! いいな!」
今までと何一つ変わりがない事を、みんなに言われながら成人の為に街に向かった。
成人は何事もなく無事に終わった。
オレには、魔法の才能はないみたいだが神官が何度も何度も首をかしげていた。
アイカは風と火のダブルの適正みたいだ。
「それにしてもレイ様の力は魔法ではないんですか? あんなにすごいのに……」
「魔法適正なしって言われたからね」
「神官様は何度も首をかしげてましたよ、小声で『おかしいな』って言ってましたし……」
「ココも聞いた、言ってた」
「そうなんだ、みんな耳がいいな」
ココの頭を撫でていると喜んでいた。
今度、ゆっくりと街で遊びたいなー。
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