第3話 剣術の先生は最高です
年月が経ち、書物庫で本を読み。外の世界の勉強をしていた。7歳になり、父・アランに呼び出された。
「お前も7歳だ。剣術を習いなさい。お前の兄さん達も7歳で剣術を習ったんだ」
父には、4人の妻がいる。オレの母は4人目。
異母兄弟が4人いて長男と次男は会った事がないが会いたいと思わなかった。
正直、グレイブとスタングの印象が悪かったのでまた、アイカに嫌な思いをさせたくなかった。
「聞いているのかレイよ?」
「聞いています、父上」
父は50代ぐらいの顎髭のある渋い人だ。
母は20代になったばかりの時、オレを産んでいるので若い、貴族美人って感じだ。
父によく「お前は母にだな」と言われたが髪と瞳の色は、父譲りなんだよな。
お爺様がイングラシア帝国の軍関係者の偉い人みたいで、戦争映画に出てくる『将軍』って感じのマッチョだ。
今日は、剣術の先生をお爺様に紹介されたようで来ているらしい。
「レイン・カーチス先生だ。ご挨拶しなさい」
「はっ、はじめまして、レイン先生」
「はじめまして、レイくん」
レイン先生はロボ族、狼の獣人で普段は、上級冒険者をしていて、1人で様々な依頼を達成する。
まさに、一匹狼の冒険者だ。
レイン先生が、特別に家庭教師をしてくれる。
「一月の短い間だけどよろしくね、レイくん」
「よろしくお願いします、先生」
「まずは、君がどのくらい出来るのか知りたいから練習用木刀で簡単な試合をしましょう? 私に一撃を入れるか捕まえたら勝ち、5分間、私が逃げ切ったら私の勝ち?」
「ボクが勝ったら?」
「お願いを1つだけ聞いてあげるよ」
「わかりました」
試合開始から3分…
ロボ族は、伝説の神獣フェンリルを先祖に持つ獣人になるだけあって、スピードとパワーで敵を圧倒する種族でレイン先生もかなりのスピードで移動する。
練習用の木刀で戦うがかなり強い……
「凄いやる気なのは分かるが、動きをよく読んで動きなさい。足を読んで動けばよく分かるわよ」
「はい!」
早い、かなりのスピードだ。
一瞬、一瞬だけ捕まえる事が出来れば勝機はある。
(何? 足元から引っ張られる? それに、レイくんからたまに凄い殺気を感じる)
足首をガシッとつかまれた感覚に動く事ができずに一瞬の隙が生まれる。
「チャンスだ!」
ジャンプをして捕まえようとした時……
ゴンッーー
顔面からプレートアーマーにぶつかり、鼻血を垂らしながら地面に落ちる。
「……驚いたわ。すごいじゃない!」
少し興奮気味に頭を撫でながら抱きしめてくれた。
「何かお願いはある?」
「少しだけこのまま撫でてもらってもいいですか?」
「ああ、いいよ」
今まで、頭を撫でてくれる人なんていなかった不思議と心まで暖かくなるような気がした。
自室に戻る途中で、アイカを遠くに見つけた。
「お手伝いかい?」
「はい」
アイカは、7歳になりエリカと共にメイド見習いとしてカトリック家で働くようになっていた。
昔は、喋るのが苦手だったが今は、しっかりとしている。
「今日から、剣術の訓練ですよね」
「ああ、レイン先生っていうんだけどね。スピードがすごく早くて追いつけないんだ」
「……そうなんですか」
「剣の腕も凄くてね、訓練用の木刀でも敵わないよ」
「ふーん」
「それに、すごく優しくてね。5分間の……アイカ?」
涙目でプルプル、震えながら頬を膨らませて早足で行こうとする。
「どうしたんだ?」
「なんでもないです!」
明らかに怒っているし、心当たりがない。
「いや、怒ってるじゃないか」
「怒っていませんし、知りません!」
そのまま行ってしまった。
最近、気難しい……女の子は、成長が早いらしいが、アイカはエリカやアルルと話をしてるとムスッとする時がある。その時と同じだ。
「やっぱり、怒ってるじゃないか」
訳がわからないまま、立ち尽くしていた……
♢♢♢
訓練は非常に楽しい。
レイン先生は、素早いので捉えるのは難しい。
剣術はメキメキ上がりかなり慣れた。レイン先生が、武技や魔法の説明してくれた。
「魔法には、火、水、土、風の四大元素の他に闇、光の特別な魔法があるわ」
「闇と光はなぜ特別なんですか?」
「光は血統が大きく関わるから王族がほとんどだし、闇は魔族の中でも魔王の血統がほとんどだといわれているわ」
絵がかなり下手でイマイチ頭に入ってこない。魔族がよくあるバイ菌みたいだ。
「なるほど、貴族ではあまりいないんですか」
「いないわね。貴族の場合は四大元素のどれかに特化した家系が多いわ、カトリック家は風に特化した人が多いしね」
「風ですか?」
家族が魔法を使っているのを見た事がないので、あまりピンとこない。
「そうね、魔法は重要よ。貴族には、軍関係者になる人が多いから武技も重要になるわ」
「武技か……」
「剣術の技の事よ、槍なら槍の技、剣なら剣の技があり、訓練で覚えるのよ」
「剣術は、誰でも覚える事ができるんですか?」
「訓練しだいね」
貴族だからな、最低限の剣術は必要だよな。でも霊能力があるからな。コッチの世界にも霊能力者はいるのだろか?
「遠くの物を見たり、隠してある物を見つけたり、死んだ人と話したり、物を動かしたりする魔法はありますか?」
「うーん……聞いた事はないかな? どうしてかしら?」
異世界には、霊能力の概念がないのかもしれない、やっぱり人には言わない方がいいかも。
「なんでもできそうだなと思いまして……」
「魔法には呪文の演唱が必要だし、なんでもは無理よー、見た事がないわ」
「そうですか……」
魔法の概念がある世界で、能力を使うのは危険かも知れない、慎重に行動しよう。
♢♢♢
最後の授業が始まった。
「今日で最後の授業になります」
「はい」
「武技も″一閃″に″回転切り″を覚えたし、よく頑張ったわ!」
武技は少しだけ使えるようになった。
霊能力と組み合わせて、自分だけの武技を使えるようになるかもしれない。
かなり、かっこいい気がする。
霊能力の訓練もしていたおかげで、前世の感覚を、かなり取り戻した。
武技についても知識が増えたから対応できる。
相手に魔法と勘違いさせる事も可能だろう。
自分の実力は自分がよく知っていればいい。
「なにか困った事があれば私を頼りなさい、冒険者ギルドで私の事を聞けばすぐにわかるはずよ」
もしかしたらまた、先生に会えるかも。
「はい、その時はよろしくお願いします」
「君は強くなるわ、頑張りなさい」
「はい、ありがとうございました」
次に、レイン先生に会う時は、様々な技を見せて驚かせたいなと思っていた。
♢♢♢
家庭教師が終わったレインは、レイの父親アランの執務室に来ていた。
「一月の間、レイはレイン殿から見てどうでしたか?」
「強くなると思います、私がたまに背筋に悪寒が走る時がありましたから」
「レイン殿が!!」
(レイが……さすがは私の子だ!)
「はい、彼の成長が楽しみです」
「そうですか、たまにレイに会ってやって下さい。あれも喜びます」
「ええ」
レインの中で優秀な生徒として確立されていた。残ったアランは夕焼けを眺めていた。
「あのレイン殿にあそこまで言わせるとわ……将来が楽しみだ!」
アランはアゴ髭を撫でながらニヤけていた。
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