第20話「答え」
「神楽坂さん、一つ確認させてもらってもいいかな?」
思考を巡らせて一つの結論に至った俺は、今もなお抱きついてきている神楽坂さんに声をかけてみた。
神楽坂さんはビクッと体を震わせてしまい、恐る恐る俺の顔を見上げてくる。
怯えている、そんな事はすぐにわかった。
「大丈夫、ただ一つ確認をさせてほしいだけだから」
怯えてしまっている神楽坂さんを可哀想に思った俺は、再度優しい声を意識して彼女の頭を撫でた。
最初は強張っていた彼女の体だけど、優しく頭を撫でていくうちに段々と体から力が抜けていく。
そして怯えの表情が弱まった事を確認し、俺は再度口を開いた。
「えっと、こんな事を聞くのは恥ずかしいんだけど……もしかして俺たち、体の関係は持ってないのかな?」
核心をつくと、神楽坂さんは再度絶望をした表情を浮かべて俯いてしまった。
もうこれが答えなのだろう。
店長さんは状況についてこられていなくて、怪訝そうに俺たちの顔を見つめている。
だけど今はそちらに構っている暇はない。
ちゃんとここは神楽坂さんと話を付けておく必要があるからだ。
「大丈夫だよ、本当は体の関係を持っていなかったとしても今更君を追い出したりはしない。ただ、本当の事を教えてくれると俺の気持ちが楽になるから教えてほしいんだ」
例え体の関係を持っていなかったとしても、神楽坂さんは色々と俺のためにしてくれていた。
ましてや昨日なんてぶっかけてしまっているのに、彼女はその事に対して何も俺に言ってきていない。
体の関係を持ったと思い込まさなくても、ぶっかけられた事で脅しをかける事も出来ただろう。
そんな事を彼女はしなかったし、求めているのは養ってほしいという事だけ。
今ここで彼女を追い出してしまうと彼女は宿先を求めて変な男のもとに行ってしまうかもしれないし、そこで何をされるかもわからない。
よく知らない子ならまだしも、神楽坂さんは佐奈の同級生だという事がわかっている。
相手が妹の知り合いで、何か事情がある以上簡単に見捨てるわけにもいかない。
幸い養うだけのお金はあるのだし、実は彼女に騙されていたとしても少しの間は面倒を見てあげようと思う。
「お兄さん……」
優しく言ったのが効いたのか、神楽坂さんはギュッと自分の胸の前で手を握ると、ジッと俺の顔を見つめてきた。
そして、ゆっくりと口を開く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます