白熱のきみ

 春の陽気は気まぐれ


 天真爛漫な風が


 満開の桜を葉桜に変えた


 東から昇った月は満月


 白く冴えた月光


 急に柔らかく注いだ


 午前一時


 お宮には人影


 こんばんは

 こんばんは


 きみは優雅にくるりと


 回転してみせる


 白銀の猫に姿を変える


 月にたった数刻の逢瀬


 きみは冒険を語る


 ぼくはただの猫だから


 昼間のきみのそばには


 いられない


 白熱したきみは


 顔を赤らめて


 僕にまだ知らない世界を


 教えてくれる


 ああ、いつか

 きみと旅に出たいな


 きみはふわりと髪を揺らした


 僕の額に


 魔法のキスを落とす


 ああ

 きみの瞳はトパーズ色だ


 あなたの瞳はアクアマリンの色ね


 ぼくたちに虹が降る


 真っ暗な神社の境内


 不思議なリズムの


 汽笛の音色がしてる


 やがて


 きみは朝陽に溶ける


 ぼくはまた


 軒下や草むらに


 身を潜め


 きみが来てくれるのを


 じっと待つんだ









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