第8章 角姫の最期

 建仁元年、五月。幕府軍による越後城氏への本格的な攻撃が始まった。


 鳥坂城に立て籠もった越後勢およそ千名は角姫を先頭に幕府軍に抵抗し、大きな損害を与えることに成功する。

 その猛る鬼神の如き戦い振りは敵味方の賞賛を恣にし、女武将の鑑として後の世まで語り継がれることとなる。


 角姫――即ち板額御前。


 当時を記す歴史書は、板額について、


「之〔ママ〕額御前。雖爲女姓之身。百発百中之藝越父兄也

(この板額御前、女性の身といえども父兄を越える百発百中の(弓の)芸なり)」 ※香竹訳


 と特筆している。


 やがて板額が負傷し敵に捕らえられると、越後勢の護りは崩れ幕府軍に敗北し、城一門もまた滅び去った。


 こうして、建仁の乱は幕を閉じたのである。


 幕府軍の捕虜となり、鎌倉へ護送された板額は、頼家の命により御所へ引き出されることとなった。その際、鎌倉殿や居並ぶ側近らを前にしても全く怯む様子を見せず、毅然とした態度を貫く女武将に鎌倉中の御家人達は揃って感嘆したという。



 その後、角姫は天寿を全うしたと伝えられている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る