第642話 領主にお仕置き(後)

リュー 「さて、お前は何になりたい? 同じく人食い花としてコイツと一緒に仲良く生きていくか?」


サルタ 「やめてくれ、助けてくれ、魔物にされるのは嫌だ!」


リュー 「選ばないなら、人食い花って事で」


サルタ 「待ってくれ、植物は嫌だ」


リュー 「そうか、植物系は嫌か。じゃぁ、ゴブリンで」


サルタはどうせ逃げられないなら、自分で死ぬ事ができる魔物のほうが良いと考え、思わず言ってしまったのだが…


サルタ 「え、ちょまって! お願い、助けて! 反省してます! 二度と約束は破りません、誓いまぐぎゃ…ぐぎゃグギャ? ゴギャァ~~~!!」


言っている内に、サルタは緑色の醜い小鬼ゴブリンへと変わってしまった。


リュー 「言っておくが、お前の場合は死んで生まれ変わっても次もゴブリンだからな? 自殺しても無駄だぞ? …いや、今は人間だった時の記憶が残っているから辛いだろうが、死んで生まれ変わったらそれもなくなる。そのほうが楽かもしれんな…」


ランスロット 「武士の情け…今すぐ殺してあげましょうか?」


ランスロットが剣を抜いてサルタだった魔物に向けるが、そのゴブリンは怯えて震えだし、ついには走って森の中へ逃げていってしまった。




  * * * * *




エライザ 「それで、領主とその呪術師? はゴブリンにされてしまったというわけ? うわぁ…」


ランスロット 「呪術師のほうは人食い花ですけどね」


エライザ 「人食い花って、あの気色悪いヤツでしょう…?」


顔をしかめるエライザ。


エライザ 「そんなのになってまで生きるくらいなら、死んだほうがマシねぇ…」


ランスロット 「人食い花は自殺する意識もなさそうでしたが……領主ゴブリンのほうは、死んでも同じ魔物にしか生まれ変われないと言ってましたね?」


リュー 「いや、あれは嘘だ。からかってやっただけだ」


ランスロット 「おや? 不死王様の技術であれば、生まれ変わってもその種族に固定してしまう事ができたはずですが? ああ、わざとしなかった、というわけですか」


リュー 「まぁ、そこまではかわいそうかと思ってな。クズ領主だったっぽいのは確かだが、実際のところはどんな感じだったのか、詳しくは知らんからな」


ランスロット 「まぁ、ああいう輩はきっと、ほじくればいくらでも悪事が出て来るでしょうけどね…」


リュー 「スケルトン兵にしたかったか?」


ランスロット 「いえ、あまり性根が腐ってるのは、鍛えてもあまり良い兵士にはならないんですよ…」


肩をすくめて見せるランスロット。


リュー 「しかし……【呪い】ってのは、気づかないだけで、思ったより濫用されているのか?」


ランスロット 「そうかも知れませんねぇ。生きていれば、人間関係で苦労するのが世の常、呪い殺したいと思う人間が出てきてもおかしくはないでしょうからね」


リュー 「それは、まぁ、理解できる。みんな、家族を養うために、クズ上司やクズ客に頭を下げ、歯を食いしばって耐えながら生きているからな。長く生きてれば、居なくなって欲しいと思う奴の一人や二人、出てくるもんだ…」


リューは、前世の日本で、勤めていた会社に居たパワハラ上司の事を思い出していた。あんな奴こそ、ゴブリンに転生させてやりたかったと思う。その上司の事は皆が嫌っていた。死んでくれないかと影で言ってる人間さえも居た。人に死を願われるような人間にはなってはいけないだろうとリューも思ったものだ。


おそらく、そういう存在はこの世界にも居るだろう。というか、こういう世界だからこそ、多いはずだ。そもそも、この世界の貴族は、基本的に威張り散らすクズがデフォルトなのである。どれだけの平民がその被害にあっているか……


リュー 「人の恨み・憎しみをいたずらに買うような言動はしないほうがいいよな。何も良い事はない。なるべく目立たず、人と関わらないように生きるのが一番良いんだと思うよ…。だが、食っていかなければ生きられない世界では、なかなか人と関わらないというわけにもいかないからな、辛いよな…」


ランスロット 「食わずともよい存在になれば良いのですよ、私のように」


リュー 「まぁ、そう、なのかも知れんが…、じゃぁスケルトンになりますって言える生物は、あまり居ないだろ」


ランスロット 「なってみれば、なかなか良いものですよ? リューサマもなってみませんか?」


リュー 「いや遠慮しとく」


ランスロットがエライザの方に目線を送ったので、リューはエライザを自分の後ろに隠すように庇った。


リュー 「エライザ、目を合わせちゃだめだぞ!」


ランスロット 「あら、なんか疎外感がありますね、悲し…」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


馬車の完成はまだか……


乞うご期待!


― ― ― ― ― ― ―


☆新作です


異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)


過労死したプログラマーは、気がついたら異世界に転生していた。魔力がゼロで魔法が使えなかったが、前世の記憶が残っていたので魔法のソースコードを解析して魔法陣をプログラミングしてなんとか生きて行く事にした。


https://kakuyomu.jp/works/16817330651859595907


リュージーンさんのほうとは異なる砲身いや方針で書いて居ます。


よろしくお願いしますm(__)m





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る