第638話 生首を見てギョッとする
一方、リューとマヅン率いる領主軍が交戦していた草原であるが…
…否、それは「交戦」と呼べるものではなかった。
戦闘開始からまだそれほど時間は経っていないが、既に騎士達は壊滅に近い状態。集められた衛兵達は戦闘に参加する事なくほぼ全員逃亡済みという状態で、残るはマヅンと数名の騎士だけであった。
最初に人質のことを告げなかった事をマヅンは後悔したが、後の祭りである。
人質など取らずとも、生意気な冒険者を正面から力で叩き潰し、痛めつけて後悔させてやろうなどと考えていたのだが、ほんの短い時間の間に多大な被害が出てしまった。
だが、念のため人質を取る二重作戦を取っておいて良かった。これで逆転できる…
…とマズンは思ったが、なぜかリューは人質の事を聞いても動じる様子がない。
それはそうである。エライザにはランスロットという絶対の護衛を付けてあるのだから。なんなら既に念話でエライザが無事である事は報告を受けているのだが、それをマヅンは知る由もない。
そこで、リューはパーシヴァルを呼んだ。(ランスロットを呼ばなかったのは、護衛としてエライザの側を離れさせたくなかったからである。)
突然姿を顕わした骸骨の仮面を着けた怪しげな人物? に驚くマヅン。
マヅン 「!? 誰だ、仲間か?! どこから顕れた?」
だがリューは答えず、パーシヴァルに目で合図を送ると、パーシヴァルが手に持ったモノを掲げた。ソレは、血が滴る生首であった。
生首を見てギョッとするマヅン。
生首は、よく見れば、エライザを捕らえに行った班のリーダーのリッソであったのだ。
リュー 「宿のほうは片付いたようだぞ?」
マヅン 「リッソ……くそ、他にも仲間が居たのか? 調査が間違っていた? いや、そんなはずは…」
マヅンは作戦開始前にしっかりと敵の戦力の調査・確認は行っていた…はずであった。
宿の宿泊者全員を把握、リューとエライザには他に仲間は居ないはずであった。
※スケルトン達は宿に宿泊していないのだから把握できるわけがないのだが。(以前はランスロットが宿に一緒に泊まる事もあったが、食事もしない、眠ることもないランスロットが泊まる意味はあまりないので、最近は宿には亜空間からこっそり出入りするだけで、正規の宿泊はしないのであった。)
街や冒険者ギルドや街での目撃情報でも、リューとエライザ以外には確認されていなかった。今回、街ではリューとエライザ二人だけで行動していたためである。
マヅン 「くそ、まんまと騙されたか…」
リュー 「…エライザを捕らえる作戦は、お前が考えたのか?」
マヅン 「作戦…? まぁ、そう、だが…。領主が指示し、私が実行案を考えた…」
実際にはサルタ子爵が人質を取れなどと具体的な指示を出してはいない。だが、
リュー 「そうか」
それを聞いたリューが剣を抜き、高速でマヅンに迫る。
剣を抜き応戦するマヅン。
マヅンも若い頃は達人と言われていた暗殺者である。かなり腕は立つ。リューの
だが、暗殺者であるがゆえ、得意なのは暗闇の中である。明るい日中の、障害物もない草原の中ではそれほど力を発揮できるものでもない。何より、とっさに攻撃を剣で受けようとしてしまったのが失敗であった。リューの持つ武器は、普通の武器では受ける事など不可能なものであったからである。
リューが手にした
呻くマヅン。光剣は高熱で傷口を焼灼してしまうため血が吹き出る事はなく、激しい痛みはあるが死ぬことはない。
リュー 「さて。じゃぁボスのところに乗り込みますか」
マヅンの襟首を掴んで持ち上げるリュー。マヅンを生かしたまま領主のもとへ連れていくために、リューは光剣を使ったのだ。
ちなみに、何人か残っていた騎士達はパーシヴァルが瞬殺していた。騎士達の遺体は当然、スケルトン兵が亜空間へと引き取っていく。
死んだ騎士達はスケルトンとして復活させられ、長い地獄の訓練期間を過ごす事になるのだ。
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メイド長 「旦那様! 大変でございます!」
サルタ子爵 「なんだ騒がしい!」
メイド長 「それが、マヅン様が…。リュージーンと名乗る冒険者と…」
サルタ 「ああ、マヅンが例の冒険者を捕らえてきたのか。そんな事は騒ぐほどの事ではないだろう? わざわざマヅンを遣ったのだ、むしろ遅かったくらいだ」
メイド長 「いえ、それが、そうではなくて、ですね……」
サルタ 「?」
メイド長 「リュージーンと名乗る冒険者が、旦那様に遭わせろとやってきているのです。その、マヅン様をぶら下げて……」
サルタ 「ぶら下げて?」
メイド長の報告では要領を得なかったが、玄関ロビーまで出てみてサルタは意味を理解した。そこでは、両手両足を切り落とされたマヅンが、床に座らされていた。手足がないのでリューが襟首を掴んで姿勢を保ってやっている状態である。
サルタ 「マヅン……なんという様だ…」
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次回予告
部下が勝手にやったこと!
私は命じていませんから!
乞うご期待!
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