第636話 エライザ無双
エライザ 「私もそれなりに強いんですけど?」
剣を抜くエライザ。
騎士 「馬鹿め、大人しくしていれば痛い目を見ずに済むのに……っておい、まさか、ソイツは…」
エライザの横に居たエディが巨大化していく。ただの犬の姿から元のフェンリルに戻ったのだ。その巨体とを見て騎士達は相手がSランク超の魔獣である事に気付かされる。
騎士 「フェン…リル?」
次の瞬間、大地を揺るがすような重低音の咆哮が響き渡る。エディが吠えたのだ。
それは
…それだけで何人かの騎士は震え上がり動きが止まってしまった。
ランスロット 「やれやれ、この程度で竦んでしまうようでは、期待はずれですなぁ…」
もちろん、宿のエライザ達の側には、護衛としてランスロットを配置してある。
ランスロットなら騎士が何百人来ようが負けるはずはない。そもそも、ランスロット率いるスケルトンの
だが、今回は、一応万が一に備えて詰めてはいるが、出番はない予定となっていた。エライザが自分でやると言うからだ。リューと並んで戦う事を望み、エライザは冒険者になったのだ。幼い頃のように、ただ守られているだけの自分ではない。冒険者として立派にやっていけるとリューに示したいのだ。
エライザ 「ランスロット、手を出さないでよ、私がやるから!」
ランスロット 「ええ、私が出るまでもないようです」
騎士 「他にも仲間が居たのか…」
エライザ 「安心して、彼は手を出さないわ。私一人で十分よ。もし私に剣で勝てたら、大人しくついていってあげる。どう?」
騎士 「一騎打ちというわけか、いい度胸だ」
エライザ 「ちがうわ、そっちは一人じゃなくていい。順番でも、全員同時でもいいわよ? さぁ、掛かってきなさい!」
騎士 「舐めるな!」
騎士が無造作に斬りかかってきた。両手剣であるが、片手で振っている。それだけエライザを舐めて掛かったのかと思ったが…
それにしては鋭い
それは、なかなか鋭い攻撃ではあったが…
エライザにとってはスローな攻撃でしかなかった。
エライザは、竜人の里でそれなりに剣の腕を磨いてきたのだ。竜人の里にはそれほど剣の腕の立つ者はおらず、師には恵まれなかったが、それでも、竜人の身体能力でふるう剣を相手に練習をしてきたのである。人間の腕力で振る剣など相手にはならないのである。
振り下ろされる剣を軽く往なし反撃するエライザ。それをかろうじて飛び退いて交わす騎士。その後、二度ほど切り結ぶ音がした後、騎士の剣は折れ、エライザが騎士の喉に向かって鋒を突きつけていた。
エライザ 「私の勝ち♪」
騎士 「くそ、全員で掛かれ!」
部下の騎士達がエライザを取り囲む。
騎士 「自分で全員を相手にすると言ったのだ、卑怯だなどと言うなよ?」
エライザ 「問題ないわ」
実際、問題はなかった。竜人であるエライザの身体能力は人間など遥かに凌駕している。速さも力も数倍は強い。そして、剣の腕もなかなかのものであった。
全員で掛かったとて、同時に攻撃できるのは二人~三人が限度である。それを捌き倒すのは、エライザの力量であれば難しい作業ではない、はずであったのだが……。
思いの外、エライザは手こずっていた。それは、エライザが騎士達を殺さないように手加減していたためである。エライザは里でかなり剣の腕を磨いてきたが、殺し合いの経験はなかったのだ。エライザにはまだ、即殺の覚悟はなかったのである。
双方剣を抜いており、しかも一対多の戦いである。殺したとしても許される状況ではあったのだが、できるだけ殺さないようにエライザは手加減をしていたのだ。
さすがに傷つけずに終えるという事はできないが、なるべく致命傷にならないように、しかし戦闘続行不可能な傷を与えるようにする。斬り捨てるよりずっと高度な技術が要求される。なかなか難しい作業であったが…
…エライザはなんとか全員を戦闘不能に追い込む事には成功した。何人か手足を切り落とされてしまっているが、仕方がないだろう。
エライザ 「死んではいないから許してね。治癒魔法があれば
騎士 「くそ、小娘一人を捕らえられないとはな…」
ランスロット 「エライザ、腕を上げましたね」
ランスロットはエライザが幼い頃、チャンバラごっこで遊んであげていた日の事を思い出して目を細めた(骸骨なので細める目はないのだが)
『らんちゅろっと~~えいっ(ぽこ)』
『や~ら~れ~た~(ばた)』
ランスロット 「ヨチヨチ歩きだった頃とは見違えましたよ」
エライザ 「いくらなんでもそんな幼い頃と比べないでよ…」
ランスロット 「ですが…、詰めが甘いですね」
エライザ 「?」
リーダー格の騎士が目配せをしていた。すると、倒れている騎士の何人かが何かの魔道具を懐から出し、エライザに向けて放ったのである。
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次回予告
ランスロット師匠
乞うご期待!
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