第625話 ハレンチなドラ息子
冒険者2 「ああ? なんだぁ、お前?」
ルイ(メリンダを見ながら) 「ほらぁメリンダが騒ぐから、痴漢と勘違いされちゃったじゃないか?」
ルイ(エライザのほうを見て) 「僕は恋人と仲良くしてただけだけよ? それが何か?」
エライザ(鋭い目付きで) 「…嫌がってるように見えるけど?」
エライザ(受付嬢に向かって) 「この人、あなたの恋人なの?」
メリンダ 「違います!」
ルイ 「そんなツレナイ事言うなよ~、先日も一緒に食事しただろう?」
メリンダ 「あれは! 私が食事しているところに押しかけてきて、逃げられないように取り囲んだだけじゃないですか!」
エライザ 「いい加減手を放しなさい、いつまで触ってるの? 痴漢なら衛兵に突き出すわよ?」
冒険者1 「てか、オメェ誰だよ? 見かけねぇ顔だな?」
冒険者2 「お前さっき、Fランクの掲示板の前に居たよな?
冒険者3 「新入りか」
※実は、この街のギルドは、ランクごとに依頼を貼る掲示板が分けられている。
他のギルドではどのランクの依頼も一箇所にランクごちゃまぜで貼り出される事が多い。だが、それだと掲示板の前がごった返しになってしまう。
気の利いた職員が居るギルドなら、ランクごとに貼る領域を分けている場合もあるが、そもそも、ひとつの掲示板の中で領域を別けても狭さは変わらない。
だが、このギルドでは掲示板を複数設置し、ランクごとに分けてあるのだ。その分、掲示板のスペースを広く取る必要があるが、混雑は避けられるし、自分に合ったランクの依頼だけを見る事ができるわけである。
ただ、どの掲示板を見ているかで、その冒険者のランクがひと目で分かってしまうという弊害? もあるのであった。
リュー 「ああ、まぁ、新入りだな、
リューがエライザの後ろまで来て言った。
冒険者2 「ああ、だから知らんのか。お前ら、このルイ様を誰だと思ってるんだ? ルイ様だぞ?」
冒険者1 「バカ、それじゃ意味分かんねぇっての。ああ~、ルイ様はだな、この街の領主の息子、様だよ、御貴族様だ」
冒険者2 「だから衛兵なんか呼んだって無駄だぜ。衛兵もみんな領主のサルタ子爵に雇われている立場なんだからな」
冒険者3 「ああ、あれだろ? もしかしてお前も、ルイ様に構って欲しくて絡んできたってわけか?」
ルイ 「ほう! そうか、なるほど! いやぁ、モテる男は辛いな。二人共、僕のために争わないでおくれ…」
ルイがやっとメリンダの胸から手を離し大仰に言った。
エライザ 「二人共って、誰と誰の事よ…?」
冒険者1 「…まとにかく、この街ではルイ様
ルイ 「いや待て! お前…、よく見たら可愛い顔してるな。どれ、先輩冒険者であるこの俺様が手取り足取り
カウンターの内側から出てきてエライザに近づこうとしたルイだったが、その前にリューが立ちふさがった。
リュー 「(エライザに)不用意に近づくなよ? 良くない事が起きるかも知れんぞ?」
軽く威圧を発動しながらリューが睨むと、ルイは一歩後退った。
ルイ 「お、お前…、俺は、Bランクの冒険者でもあるんだぞ? たかが新人が、俺に逆らったら…」
リュー 「ふん、Bランクだろうが領主の息子だろうが貴族だろうが何をしてもいい理由にはならん。親の教育が悪いのか?」
冒険者1 「おま、それはサルタ子爵の悪口にもなるぞ?」
だが、リューがさらに威圧を強め、全方位(ただしエライザは除く)に撒き散らす。思わずルイと周囲に居た腰巾着の冒険者達までもが無意識に一歩、二歩と後退っていく。
ルイ 「お、お前ら……、名前は?!」
リュー 「リュージーンだ」
エライザ 「私はエライザよ!」
ルイ 「お、覚えてろ…!」
捨てゼリフを残し立ち去るルイ。慌てて子分達? も追って行った。
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エライザ 「大丈夫?」
エライザ 「なんなのアイツ? 領主の息子って言ってたけど…だから親の威を借りて好き勝手してるって感じ?」
メリンダ 「ええ、その、ルイ様は、スケベで有名で……言葉で口説くだけならいいんですけど、すぐ体を触ろうとするんですよ…。女性の職員はほとんど被害にあっています。でも、何かと言うとすぐ権力をチラつかせるので、なかなか強くは言いにくくて…」
エライザ 「それを領主…父親の貴族というのも放置してるの? …そう。しょうもない奴ね…
…ギルドマスターは? いないの? 冒険者ギルドは国からは独立した組織だって聞いたけど? 領主にも対抗できるのではないの?」
受付嬢 「ギルマスは今日は出掛けていまして居ないんです。そういう時は特にセクハラが酷くなるんです……まぁ、ギルマスが居てもあまり頼りにはならないんですけどね。
ギルマスのポウ様は、温厚でいい人なんですけど、ちょっと気が弱いというか、事なかれ主義のところがあって…。
一応、領主に苦情は入れてはくれるんですけどね、あまり強くも言えないようで、効果はないんでしょね…。
まぁそれでも、ウチのギルマスはまだ苦情を言ってくれているだけ良いほうなんですよ。
冒険者ギルドだけじゃないんです、街でも若い女性が働いている店とか被害があるそうなんですが、でも、『触るだけならそれほど実害はない』『触られるくらい大した事じゃないだろう』って、商業ギルドのギルマスは領主の顔色を気にして苦情もあげてくれないらしいですから。
ただ、触られるくらいなら確かにまだいい方で、中には無理やり連れ去られて酷い事をされた娘が自殺したなんて噂も…」
エライザ 「そう、“女の敵” ね…!」
メリンダ 「あっ!」
その時、いつの間にかエライザの背後に立っていた男を見て受付嬢が声を上げた。
後ろに立っていたのは、ギルドから出ていったはずのルイであった。
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次回予告
「オマエ…エライザの胸に…触ッタノカ…?」
乞うご期待!
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