第614話 不死王様、自重して!
その不死王の提案にリューも乗った。
もちろん、エディ本人の意志も確認したが、是非にと本人も言っていた……ような気がした。
ので、不死王にエディを魔物化してもらい、さらに進化させてもらう事になったわけである。
リュー 「なぁ師匠、それってもしかして、例えば人間やその他の種族も種族を変更する事も可能なのか?」
不死王 「もちろん可能じゃよ? なんなら進化ではなく退化させる事や、異なる種に転生させる事も可能じゃ。かつてこれを研究していた魔道士は、悪さをした人間をゴブリンや食肉植物に変えてしまったなんて事もあったらしいの」
リュー 「それって、俺を竜人から普通の人間に変える事もできる?」
不死王 「できるぞ? まぁそんな事をするメリットもないと思うがの。それとも、リューは人間になりたいのか?」
リュー 「いや、そういうわけじゃないが。ただ、気に入らない奴をカエルに変えちゃうなんて、おとぎ話的なお仕置きもできるって事だろ? それって、最強の能力なんじゃ……?」
不死王 「何を言っとる、お主の魔力分解生成能力こそが最強の能力じゃぞ? 言ってみれば、世界を構成する根幹を無に帰する事ができるのだからな。種族変更だってその能力でレジストされてしまうじゃろう」
リュー 「なるほど…」
不死王 「儂はお主のその能力に期待しておるのじゃ。儂はどうやっても死ぬ事ができん、世界の仕組みとして、そのように作られているからじゃ。じゃが、お主の能力があれば、死ぬ事ができる…終わりにする事ができる」
リュー 「師匠、死にたいのか?」
不死王 「そうじゃな…そんな結末もあってもよいかとは思っている。長く生きたからの。とは言えまぁ、当分その気はないがな。
じゃが、いつか、飽きて消えてしまいたくなる日が来るかもしれんじゃろ? その時のための保険じゃよ」
リュー 「なるほど、それで師匠は俺に良くしてくれるわけか…」
不死王 「まぁそういう事じゃ。お主に消えられたら儂が困るわけじゃよ」
リュー 「あれでも、死にたいんだったら、種族変更で自分が不死人じゃなくなればよいのじゃないか?」
不死王 「不死人ならば魂の種族変更はできるのじゃが… “不死王” はできんのじゃよ。まったく、神はなんでこんなものを作ったのかのう……一度神に会って文句を言いたい、とは思った事もある。
まあ、お主が面白いと思ったのは、その神に迫る可能性を見出したからというのもあるんじゃがの」
リュー 「…師匠なら、たとえば他の世界から魂を引き寄せてこちらの生物に転生させる、なんて事もできるのか?」
不死王 「可能じゃよ?」
リュー 「それって、もはや神の領域なんじゃ…?」
不死王 「まだまだじゃよ、儂の研究はまだ神には遠く及ばん」
リュー 「なんか、師匠なら、もうあと少しって気がするけどな…」
不死王 「神の眷属に近づく事も難しいのに、それよりはるかに次元の上の存在である神霊には遠く届かんのじゃよ
まぁ、不死王の種族変更ができるようになったら、かなり近づいたと言えるかもしれんが」
リュー 「そうなったら、俺は不要だな」
不死王 「まぁお主だって、永遠にこの世界に居たいわけではあるまい?」
リュー 「まぁ、そうだけどな…。いつとは決めていないが、適当な時期に、死ぬ事を選ぶだろうなとは、なんとなく思っていたよ…」
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などというやり取りがあったのだが、それはともかく。犬系魔物の最強種となったエディであるが、それでも臆病で優しい気質は変わらないのであった。
エライザと幼い頃から兄妹のように育ったエディである。エライザが竜人の里に行ってしまい、二度と会えないかと思ったが……(事実、竜人であるエライザと短命な犬でしかないエディとでは、普通ならば二度と会えなくてもおかしくはなかったのだ)
だが、自身も寿命の長い最強種となって、エライザと一緒に居る事ができるようになって、エディも嬉しそうであった。
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『エライザ、オカエリ』
もう一人、エライザを出迎えてくれた家族が居た。姿は12~13歳の少女に見えるが……
エライザ 「もしかして、ドラ子ちゃん!? 喋れるようになったの?!」
リューに大量の魔力を与えられた事によって進化して動き回るようになったマンドラゴラのドラ子。エライザがまだ幼き頃、裏庭で一緒に土遊びをしていたドラ子だったが、その頃はまだほとんど喋れなかった。だが、エライザが居なくなった後、リューがヤケクソ気味に魔力を大量に与え続けた結果、さらに進化して植物の精霊のような存在になった。(不死王によると、どうやらドライアドという種族に近い、ドライアドの亜種という事になるらしい。)
リュー 「さぁ、家に帰ろう、ヴェラ達も待っている」
エライザ 「ヴェラおばさんも元気? それにレスターとアネットは? シスター・モリーは? アリサ姉ちゃんは?」
リュー 「ああ、みんな元気だ、みんなエライザに会えたらきっと喜ぶ。早く行こう」
エライザ 「うん!」
『あの~』
村の奥へと急いで行こうとするエライザの後ろで、名前を呼んでもらえなかったランスロットが涙を流していた。
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次回予告
『いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!
本日はどのようなご用件でしょうか?』
そして、テンプレは繰り返される…
乞うご期待!
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