第596話 つまり犯人は身内の中にいる?
カルル 「だが、ヒムクラート子爵は先日亡くなって、息子達が後を継いだと聞いたが?」
モレム 「ヒムクラート子爵は暗殺されたと聞きます。それをカルル様がやったと、息子達、あるいは家族・親族の者が逆恨みした可能性はあるのではないですかな?」
アレスコード 「テイモン(ヒムクラートの息子、現ヒムクラート子爵)達の事はよく知っているが、彼らはサバサバした性格だ。父親は多く恨みを買っているので、いずれ暗殺されるかもしれないと、覚悟している風であった。そんなテイモンに私が呪われるほど恨まれているとは思えないのだがな」
ヴェラ 「そういえば、モレム医師も、呪いがあった事は認めて下さるのですね?」
モレム 「まぁ、話を聞いている限り、お前さんが嘘をついているようには思えんのでな…」
そこで、ランスロットに促され、ヴェラは席を立った。
ヴェラ 「それでは、私達はこれにて帰らせて頂きます。後は主治医のモレム先生とよく話し合って対応を決めて頂ければ。もし、原因が呪いであるならですが、その対策をすれば解決すると思いますので」
そのまま亜空間を通ってヴェラとランスロットが姿を消した後、カルルがモレムに尋ねる。
カルル 「で、本当に呪いだとして、対処は任せてよいか?」
モレム 「さぁ、私は医師ですからな、呪いの類は専門ではありませぬので、よく分かりませぬ」
カルル 「うぉい! 分からないのなら余計な口を出すなよ…」
頭を抱えるカルルであった…。
モレム 「まぁ、呪いであると分かったなら、その専門家を呼んで対処させればよろしいでしょう」
カルル 「だったら、最初からヴェラ殿に頼めばよかったのではないか?」
モレム 「おや? ヴェラ殿だってただの治療師ではないのですか? それとも、呪いにも詳しいのですか?」
カルル 「知らんが、話しぶりでは詳しそうだった。もう少し詳しく話を聞いてみても良かった気がするがな。まぁいい、明日、呪いに詳しい者を派遣するよう教会に連絡を取ってみよう」
だがその夜、ヴェラが再びカルルを訪ねてきた。夜、モレムが居ない時を狙って来たのである。
ヴェラ 「夜分遅くに押しかけてしまい申し訳ありません」
カルル 「いやヴェラ殿、よく来てくれた。呪いについて色々と教えてもらいたかったのだ」
ヴェラ 「ええ、私もその件でお話があって、わざわざやってまいりました。相手が呪いとなると、治癒魔法では対処できないでしょうからね」
カルル 「そうか、助かる。で、妻が呪われているとして、その対処はどうしたよいのだ?」
ヴェラ 「呪いというのは、邪気、つまり、攻撃性のある魔力を気づかれないように相手に付着させ、徐々に肉体を弱らせていくものです。
一度だけの呪いならば、込められた邪気を祓えば、後は弱った体力を回復させれば治療は終了となります。
しかし、その呪いが継続的なものであった場合、祓っても祓ってもまた邪気が送られてきますので、呪いの元を断つ必要があります。
呪うのをやめさせるか、できないなら殺すか、封印してしまうか…あくまで呪っている相手を見つけ出す事ができれば、ですが」
カルル 「相手を見つけるのは難しいのか?」
ヴェラ 「継続的な呪いならば、高度な鑑定が使える者であれば、送られてくる呪いの魔力を辿って発信元まで行く事も不可能ではないです。ただ、呪いを使うような者の場合、自身は到達困難な場所に隠れている事が多いので、簡単ではないと思われますが。
ただ、今回のは、外部から送り込まれて来るような継続的な魔力は鑑定しても感知できませんでした。つまり、単発の呪いであったと言うことになるのですが、問題は、それが何度も再発しているということ。つまり、持続的な呪いではありませんが、単発の呪いを繰り返し掛けている者が居るという事になります。
そうなると、魔力を辿るということは難しいです」
カルル 「防ぎようがないということか?」
ヴェラ 「持続的でも単発でも、魔法障壁で魔力を防ぐ方法は有効です。ただ、根本的な解決にはなりません。
二十四時間ずっと防御し続けなければなりませんから。それに、効果がないとなれば、相手は別の方法を取ってくるかも知れません」
カルル 「別の方法とは?」
ヴェラ 「分かりませんが…、別の者、たとえばターゲット家族や周囲の者を狙うとか?」
カルル 「なるほど。だが、私が狙われるということなら望むところだ。妻が呪われるくらいなら私が代わりに受けようではないか。魔法障壁の得意な者を雇って、二十四時間妻をガードさせれば良いな?」
ヴェラ 「お待ち下さい、今回の件は、そう簡単な話ではないと思います」
カルル 「?」
ヴェラ 「例えば、魔法障壁を張って防御したとしても、その中に入り込まれて呪われたら防げませんからね」
カルル 「…つまり、犯人は身内の中にいるということか?」
ヴェラ 「先程、奥様をもう一度診て来ましたが、またしても体内に邪気があるのを発見しました。今日、邪気は浄化したはずなのに…私が帰った後、誰か、奥様と接触した者は居ませんか?」
カルル 「それは、屋敷で働くメイドなどの使用人達とは接触があっただろうが、全員身元はしっかりした者ばかりだぞ?」
ヴェラ 「モレム医師は診察しましたか?」
カルル 「帰る前にもう一度、妻を診察して行ったはずだが……まさか! モレムが?! そんな事はありえない。彼は……モレムは、カーディアス家は、代々アレスコード家の主治医を任せてきた家なのだ。私もモレムには子供の頃から世話になってきた。そのモレムが呪いなど…」
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次回予告
モレム 「冤罪ダー!」
乞うご期待!
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