第573話 アリサ

冒険者ギルドで正式な冒険者として登録するためには、年齢が十五歳以上(成人)である必要がある。


未成年者でも冒険者登録はできるものの、Hランクという特殊なランクで登録される。Hランクの場合、街の中の依頼しか受けられないという制限がある。


もともとは、冒険者が死んだ時、残された子供達をギルドが保護し、冒険者や街の人のお使いなどをして金を稼がせるためにできたランクである。街の人や冒険者達も、子供達に細かい仕事を出して稼がせてやるようにしている人も多い。


パガル達の事件が起きた頃、アリサは十四歳であった。まだ未成年であったが、この頃アリサは既にDランクの冒険者として活動していた。


それは、特例としてアリサの実力が認められたため、昇級が認められたのである。


アリサが冒険者に登録したのは十歳の終わり頃、トナリ村に来てそれほど経っていない頃であった。


アリサはもともと暗殺者として訓練を受けており、転移と強力な気配隠蔽のスキルを持っていたため、冒険者としてやっていくのに十分な実力を既に持っていたのだ。そのため、本人の強い希望もあり、リュー達も冒険者登録を許したのである。


最初、ヴェラは反対した。普通でない環境で育ったアリサを、キチンと子供らしく教育する必要があると思ったからである。


だが、暗殺者ギルドで育てられたアリサは、実は貴族並みの英才教育を受けていた事が判明する。それはそうであろう、優秀な暗殺者として活動するためには、様々な知識や能力が必要なのだ。時に貴族の屋敷などにも忍び込み、証拠を残さずに任務を遂行して戻らなければならないのだから、かなりの知識と能力が要求される。捨て駒として使われる鉄砲玉ではないのである。


(ちなみにレスターはトナリ村に着いた頃はまだ6歳だったので、さすがに冒険者登録はできなかった。)


冒険者登録したアリサであったが、ルールに則って登録直後はHランクであった。


だが、Hランクでも、素材の買い取りはしてもらえる。村の外の依頼は受けられないが、勝手に森へ行って魔物を狩り、その素材を買い取ってもらう事はできるのである。


普通の子供には無理であるが、アリサの実力であればそれは容易な事だった。


だが、当然、Hランクの冒険者がいきなり魔物の素材を持ち込んでも信じてもらえず。アリサが初めて獲物を持ち込んだ時、例によってお約束テンプレな展開が起きたわけであるが…


    ・

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アリサ 「コレ。買い取りして」


納品係 「お…? すげぇ獲物だな。坊主……いや、嬢ちゃんか? 誰か(冒険者)のお使いか?」


アリサ 「違う。アタシが狩ってきた」


納品係 「はぁ? 嬢ちゃんみたいな子供が? 嘘言っちゃダメだよぉ」


アリサ 「嘘じゃない。誰でも魔物の素材持ち込んだら買い取って貰えるはず」


納品係 「誰でもってわけじゃない、冒険者じゃないとダメなんだよ」


アリサ 「冒険者登録はした」


冒険者証ギルドカードを見せるアリサ。


納品係 「Hランク登録したのか。確かにHランクでも買い取りは可能だが…、そもそも、Hランクは街の外の依頼は受けられないはずだろう?」


アリサ 「別に、依頼を受けなくても、魔物を狩ってくるのはできる」


納品係 「しかしねぇ、こんな高ランクの魔物を子供が仕留めたなんて言われても信じられないんだよ。盗んできたとかじゃないだろうね? もし盗品だったら厳罰に処される事になるぞ? ああ、あれか? 冒険者が死んで、獲物だけ残ったとか?」


リュー 「その子が言ってることは本当だ、その魔物は全部この娘が一人で狩ったものだ。俺が保証する」



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次回予告


子供だからと不当に安く買い取ったりしたら許さんぞ?


乞うご期待!



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