第566話 思ったよりやるじゃねぇか

ジョーズ 「くそ、まさかこんなド田舎の村にSランクが居やがるとは、ついてねぇ……


…なんてな」


レスター 「?」


ジョーズ 「騙されねぇぜ?


Sランクの冒険者が、こんなど田舎の小さな村に居るわけねぇ。そんな凄腕の奴は、普通、王都とかに居て、貴族や王族のお抱えになってるはずだろ」


レスター 「現に居るんだからしょうがない」


ジョーズ 「分かってるぜ、ハッタリだろ? Sランクが居ると言えば引き下がると思ったんだろうが、そうはいかねぇ。だいたい、Aランクくらいにしときゃリアリティもあったろうに、俺の剣の腕を聞いて咄嗟にSランクだと嘘言っちまったんだろう? それが運の尽きって事だ」


レスター 「嘘じゃないって」


ジョーズ 「そもそも、マンドラゴラはダンジョンの中でしか採れねぇって言われてる。だが、この村の近くにはダンジョンはねぇ。だが、マンドラゴラは定期的に納品されてる。つまり……


森の中のどこかに、マンドラゴラが生えている特殊な場所があって、お前はそれを見つけたんだろう?」


レスター 「だから僕じゃないって、僕はただの代理…」


ジョーズ 「いや代理と言う事にしているが実はそんな冒険者はおらず本当はお前が森の中から採ってきてるんだろう? いやみなまで言うな分かってんだよ!


しかもだ、お前のようなガキが採ってこれるんだから、森の中でもかなり浅い場所のはずだ。痛い目に遭いたくなかったら場所を教えろ」


レスター 「嘘じゃないって! 本当にSランクの冒険者はこの村に居るんだよ」


ジョーズ 「本当に居るってのなら、遭わせてみろよ? その凄腕の冒険者サマって奴によ?」


レスター 「それは……したくない」


ジョーズ 「何故できない? そんな奴ぁ居ないからだろ?」


レスター 「居るよ…。ただ、迷惑掛けたくないだけだ」


ジョーズ 「へへっ、まぁいいさ。百歩譲ってそのSランクの冒険者が実在していたとしてもだ…


…お前は違う」


ジョーズはニヤッと笑いながら剣を抜いた。


ジョーズ 「もし本当にSランクの冒険者が居たとしても、お前を人質に取って脅せばいい」


レスター 「うわぁ想像以上のクズだった」


ジョーズ 「うるせぇ! まぁ何にしても、お前が吐くまで嬲られる事は確定ってわけだ。


どうする? 素直に謝って場所を教えるなら痛い目を見ないで済むぞ?」


レスターはため息をつき、徐に腰に差していた剣を抜いた。


ジョーズ 「なんでぇやる気か? おめえみたいなガキが俺に勝てると思ってるのか?」


レスター 「やってみないと分からないだろ?」


ジョーズ 「身体で分からせねぇとダメか、馬鹿なんだなお前…」


次の瞬間、ジョーズが斬りかかってきた。もちろんジョーズも殺す気はなかったが、体表を斬って痛い目を見せるくらいはするつもりである。相手はガキ、少し皮を刻んでやればすぐに泣きが入るだろうと思ったのだ。


だが、その剣撃をレスターは剣で受け止める。


ジョーズ 「ほお、よく受けたな」


レスター 「…速い!」


実は、レスターは余裕で躱して反撃して見せるつもりでいた。だが、思のほか相手の踏み込みが鋭くタイミングを逸してしまい、結果、かろうじて受け止めるのが精一杯になってしまったのであった。


レスターもスケルトン相手に剣の練習をしており、それなりに―――Dランクの冒険者程度であれば勝てると思う位には―――自信はあったし、事実、実力もあった。


だがやはり、相手が手加減してくれるのが分かっている練習と実戦とでは勝手が違う。実戦がほぼ初めてであったレスターは、実戦では身体が思うように動かないのを思い知るのであった。


ジョーズ 「思ったよりはやるじゃねぇか、ガキの癖に。だが分かってるか? 今のは手加減してやったんだぜ? 次からはそうはいかねぇ」


レスター 「…っ!」


ジョーズが更に鋭い斬撃を放ってくる。


それをかろうじて受け止めるレスター。


だが、ただ受け止めただけでは相手を調子付かせるだけである。


防御とは、相手の攻撃を止めると同時に


・相手の次の攻撃を封じる(せめて鈍らせる)

・相手に不利、自分に有利な位置に移動する

・自分の反撃の準備を終えておく


という事ができていなければならない。それを骨ばった師匠達に散々叩き込まれていたはずのレスターであったはずなのだが。


全て同時にこなせれば理想だが、できなくとも、せめてどれか一つくらいは実行すべきである。しかし、初めての実戦での緊張と、相手の攻撃が予想外に速く強かった事もあり、身体が硬直し、単純に受け止めるだけで終わってしまっていた。


そうなると、相手の連続攻撃を許してしまう事になる。防戦一方で押し込まれ、レスターはどんどん後退していく。


ジョーズ 「ほれほれ、どうした?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


ジョーズ 「この俺がこんなガキを仕留められねぇなんて!」


乞うご期待!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る