第558話 エライザの選択

リューの前に、リューガの見事な技が炸裂した。


ジャンピング土下座である。


リューガ 「調子こいてすいませんでした~~~! あなたには敵いません! 私の負けです! どうか、許してください~」


だが、そんな事ではリューは容赦しないのであった。


リュー 「ちっちっちっ、言ったろ? 許さないって。さぁ! 死なないように頑張れ。生きてさえいれば、治してやるから…」


リューガ 「へ? マジスカ?」


リュー 「うん、マジ」


その瞬間、4つの火球がリューガに向かって射出された。


リューガは2つ目までは躱したものの、3つ目4つ目を被弾、さらに、折り返して来た1つ目2つ目も被弾、大爆発の四連発である。


立ち込める煙が消えた後、消し炭のように真っ黒になっているリューガが居た。


リュー 「おお、死んでないな。偉いぞ! では…、パーフェクトヒール!」


リューが白い仮面に付け替え治癒魔法を発動すると、黒焦げだったリューガが再び元通りに復活したのであった。


リュー 「さて、次は……」


それを聞いたリューガがビクッと身体を震わせ、再び土下座の体勢になった。


リューガ 「ごべんなざい、本当に、もう、勘弁してくだざい~どうか、どうか……もう許して……」


リュー 「ちっ、もう終わりか……まぁ、いいか。あまり時間も掛けたくはないしな。


では、俺の勝ちということで。エライザを連れて帰らせてもらおうか」


リューガ 「はい、どうぞ、おかえりクダサイ。エライザも連れて帰って構いませんので……エリザベータと、なんならシャンティも一緒にどうぞ」


エリザベータ 「ちょっと! 何言ってるのよ!」


里長 「これリューガ、何を勝手に決めておる。リュージーン殿! 今の力を見れば、ますます……ぜひとも、なにとぞ、ぜひとも、里長になって下さらんか?! 竜人達は全員、リュージーン様に従います! 竜人の里には長く蓄積された貴重な情報や技術もありますぞ?」


リュー 「勝ったら帰っていいって約束だったろう?」


里長 「その約束はリューガが勝手にしたもの! 儂がしたわけでは……」


リュー 「お前も黙認しただろうが。もしリューガが勝ったなら、リューガの約束を盾に俺に言うことをきけと迫るつもりだったんだろう? 負けたら関係ないなど、都合が良すぎるだろうが」


里長 「う、それは……その……」


リュー 「さぁ、エライザ、帰ろう。わんこ達が待っているぞ」


わんこのことを言われ、目を輝かせたエライザ。だが、エライザの肩をエリザベータが掴み、引き寄せて抱きしめた。


エリザベータ 「だめよエライザ、ママを置いていかないで…」


エライザ 「ママ……ママも、一緒に帰ろうよ?」


エリザベータ 「それはできないのよ……ごめんね…」


リュー 「エリザベータ、エライザは返してもらうぞ。もう今さら夫婦顔をする気はないが……、そうだな、エライザと一緒に居たいからトナリ村に来ると言うのなら、勝手にすればいい。止めはしない。一緒に住む事はできんがな」


エリザベータ 「私はこの里で暮らすわ。エライザも渡さない」


里長 「やれやれ、困った話じゃのう。母親は里で暮らしたい。父親は人間の村で暮らしたい。どちらも譲れないというのなら……


どうじゃ? 子供の意見も聞いてみたら?」


リュー 「そうだな……。本当は、俺もそのつもりだったんだ。その話を、エライザと二人だけでちゃんと話したかったんだがな…


……エライザ。どうする? この里でママと暮らすかい? それともパパとトナリ村に帰るかい?」


エライザ 「パパ……ママ……私は……」




  * * * * *




リューはトナリ村に帰ってきた。


しかし、隣にエライザは居ない。


ヴェラ 「……そう、残念だったわね。まあ、会いたくなったら竜人の里に行けばいいのだから、そう落ち込まないで」


リュー 「別に落ち込んではいない。エライザが望むようにしてやりたかっただけだからな。エライザが残ると決めたのなら、それでいい」


ヴェラ 「でも、騙されて無理やり連れて行かれたんでしょう?」


リュー 「まぁそうだが、最後はエライザが自分で考えて、残ると決めたんだからいいんだよ。


エライザには何か考えが、竜人の里でやりたい事があるみたいだったのでな。俺は……エライザのしたいようにさせてやれれば満足さ……」


ヴェラ 「そう……」


エディがリューの足元にすり寄ってきた。(ガリーザ王国でリューが助けたわんこのエディである。)


リュー 「慰めてくれてるのか? ってか落ち込んではいないって言ってるのに」


リューも、最初からエライザに選ばせるつもりだったのだ。選択肢がない半強制的な状況ではなく、エライザさえ望めば、どちらでも選べるという状況を作った上で、エライザにどうしたいか訊くつもりだったのである。


そして、エライザは、竜人の里に残る事を選んだのだ。


エライザ 「パパ、あたし、ここに残る。パパは一人でも平気でしょう? ママはそうじゃないから……それに、ここにはおじいちゃん・おばあちゃんも居るし……それに、あたし、パパの事大好きだけど、ちょっとパパと離れなければいけないと思うの…」


リュー 「…そうかよ。こっちには本当の父親も居るしな」


エライザ 「エライザのパパは、パパだけだよ!」


リュー 「ははは冗談だよ、分かってる…」


リューはエライザの頭をグリグリと撫でてやった。


エライザ 「パパ……」


エライザはリューに抱きつき、涙を流した。


リュー 「泣くくらいなら……」


エライザ 「お願いパパ、トナリ村で待ってて! 必ず、戻るから……」


結局、エライザの決意は変わらず。


リューは通信用の魔道具をエライザに渡し、竜人の里を後にしたのだった……




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