第557話 次は魔法対決だ

リュー 「さて、では次は魔法で対決だな。それとも竜気闘法か?」


リューガ 「……いや、やめておこう。お前の魔法障壁を打ち破れるとは思えん。


……くそ。悔しいが、俺の負けだ。しかし、こうまでまったく歯が立たないとはな……」


リュー 「いやいや何言ってんの。そんな甘い事、許すわけないだろ」


リューガ 「…へ?」


リュー 「あれだけ偉そうな事を言っておいて。『俺の負けだ』で済ませる気か? 最後まできちんとやれ。それが竜人の矜持? なんだろ? 流儀だっけ?」


リューガ 「いや…その、せっかく、負けを認めてるんだから…」


リュー 「そんな簡単に諦めちゃあいかン! そんな事は俺が許さん。『諦めたらそこで試合終了』って偉い人も言ってたぞ」


リューガ 「偉い人って誰だよ…」


リュー 「竜言語魔法は人間の魔法よりも効率が良いとか言ってたじゃないか? 是非とも見せて欲しいな」


リューガ 「……」


リュー 「どうした? じゃぁまずこっちから行くぞ? ほれ、人間の魔法の中では基本中の基本、ファイアーボールだ」


リューの前に小さな火の球が浮かび、リューガに向かって射出された。


リューガは慌てて横に飛んで避けた。だが…


リューガ 「追尾式だと~~~!?」


火球は急停止し、リューガのほうに再び向かって飛んだのだ。


飛んできた火球を必死に避けながら叫ぶリューガ。


リューガ 「そんな魔法、聞いた事ないぞ!」


リュー 「周囲にギャラリーが居るんだ、打ちっぱなしの技なんか使うわけないだろ?」


火球の射線上にエライザ達が居たのはリューも分かっていた。エライザが側に居る状況で、流れ弾でエライザに被害が及ぶような事をリューがするはずもない。


その後も火球はリューガを狙い続ける。だが、避ければ停止し、再びリューガの方へと飛ぶ。数回そんな事を繰り返した後、リューガがついにしびれを切らし、火球に向かって拳を突き出した。もちろん、竜闘気を腕に纏わせたパンチである。火球程度なら砕ける……はずだった。


だが、拳に触れた瞬間、火球は大爆発し、リューガは吹き飛ばされてしまう。


かなりの爆風が発生したが、周囲のギャラリーとリュー達の間には魔法障壁が既に張られており、何の影響もなかった。もちろん、リューが張ったのである。


リューガ 「な……んだ……今のは?」


よろよろと立ち上がったリューガが言った。


火球を殴ったリューガの右腕はボロボロになって、もう使い物にならない様子である。竜闘気を纏ってカバーしていたはずだが、防ぎきれなかったようだ。


リューガ 「普通の、ファイアーボールは、あんな威力は、ねぇはずだぞ……」


リュー 「普通のファイアーボールだが?」


リューが使ったのは普通のファイアーボールである。ただ、そこに込められた魔力量がとんでもない量だっただけである。


リュー 「さぁどうした? 得意の竜魔法とやらは使わないのか? 詠唱が必要なら待ってやるぞ?」


リューガ 「貴様ぁ~~~後悔するなよ~~~!」


リュー 「そう来なくっちゃ」


リューガが詠唱を始める。リューガの前に魔法陣が浮かび、莫大な竜闘気が集まっていく。どうやら里の中に満ちている竜気をほとんど全て集めているようだ。


里長 「ばっ、リューガ、そんな魔法を里の中で使うんじゃない! 里が吹き飛んでしまうじゃろうが!」


だが、リューガの耳には里長の言葉は届いていない。ついに詠唱が終わり、魔法が完成してしまう。直後、魔法陣から魔法が放たれる。


発射されたのはドラゴンブレスを更に強力にして収束させたような技であった。なるほど、里など灰にしてしまいそうな破壊的エネルギーを秘めた攻撃である。


だが……リューに向かって襲いかかるその破壊の奔流を、リューは避けもせずに正面から、キャッチしてみせた。


それは、不思議な光景であった。放たれた魔法はリューの掌で止まり、そのまま球状になっていく。やがて、太陽のような眩しい光を放つ玉が、リューの両の掌によって保持されている状態となった。


さらに、リューが両手の幅を縮めていくと、光の玉は10センチほどまで小さくなっていき、光もなくなり、黒い玉となった。


リュー 「ちょっと眩しかったんで、光を通さないようにした」


リューガ 「馬鹿な……俺の渾身の竜牙砲ドラゴンキャノンが……何が起きた……?」


リュー 「魔法障壁で無理やり押さえ込んで圧縮しただけだよ。分解して消してしまう事もできたんだがな、それだと卑怯だとか言う奴がいるんでな」


リューガ 「障壁で? 押さえ込んだ、だと? それは、ドラゴンキャノンのエネルギーを遥かに上回るエネルギーが必要なはずだぞ……! そんな事、できるわけが……」


リュー 「現にここにある・・が? 無理やり小さな空間に押し込めて圧縮してあるだけで、エネルギーはそのままだからな。なんならこのまま返してやろうか?」


黒い玉をリューガに向かって投げようとするリュー。


リューガ 「おい待て! やめろ!」


リュー 「なんてな、冗談だよ。さすがにこれ・・はマズイから、分解しておこうか」


リューの手の中で燻っていたドラゴンキャノンが圧縮された球は、どんどん力を弱めていき、やがて霧散して消えた。それを見てほっとするリューガ。


だが、再び火球がリューの前に浮かぶ。


リュー 「ほれ、次は俺の番だな。もういっちょ火球、いくぞ?」


リューガ 「またですか! しかも今度は4つも? こうなったら、最後の手段だ!」


リューガが意を決した様子で、リューに向かって走り出し、宙を飛ぶ。


そして……



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