第553話 お疲れ。まぁちょっと休め

里長 「…息子達の態度の事を考えればとても頼めた義理ではないのだが……」


リュー 「まぁ俺もやりたいわけじゃないが、エライザの頼みじゃ仕方がない…」


そして、里長と一緒に防壁へ向かったリュー。エライザも一緒である。待っていろと言ったのだが、リューと一緒に居ると聞かないので仕方なく連れてきたのであった。結果的に、エライザを心配したエリザベータもついてきている。


防壁の高さは3階建て程度であろうか。それほど高くはないが、その防壁から上部に向けて結界の効果が伸びており、空から侵入することはできないようになっているようだ。上部は通路になっており、そこに竜人達が乗って外部から襲ってくる邪竜霊に攻撃を放っている。


里長が防壁に近づくと、一人の男が防壁の上から飛び降りてきた。


里長 「リューガか、様子はどうじゃ?」


リューガ 「里長! 里長は下がっていて下さい、あの程度は私が退けて見せます!」


里長 「しかし一人では手が回らんところもあるじゃろ、儂も参戦する。それと、援軍を連れてきた」


リューガ 「援軍?」


訝しげにリューを見るリューガ。


リューガ 「…余所者か。長、私一人で大丈夫です。なんとかしてみせます!」


リューガ(リューを睨みながら) 「外界で見つかった竜人の噂は聞いてる、エリザベータが居るところ見るとお前がそうだな? だが、これは里の問題だ、手は借りん! 黙って見ていろ!」


そう言うとリューガは再び防壁の上に飛び上がり、邪竜霊への攻撃を再開した。


里長もジャンプして飛び乗る。リューとエライザも後を追った。防壁には昇降用の階段はない。あるにはあるのだが、少ないのだ。だが、竜人の身体能力であれば階段などはいらない、飛び乗る、飛び降りるのがデフォルトの昇降方法なのであった。子供であっても竜人ならばこの程度は余裕なのだ。ここに飛び乗れないような竜人は、防衛戦では足手まといであろう。


防壁の上では、竜人達が各々、邪竜霊に向けてドラゴンクロウなどの攻撃を放っていた。(エリザベータも攻撃を始めていた。)だが邪竜霊側からもクロウなどの攻撃が返ってくる。邪竜霊も竜人族の技が使えるようだ。


飛び交う無数のドラゴンクロウ、ドラゴンテイル。だが、双方決定打に欠ける。


邪竜霊から放たれるドラゴンクロウはそれほど強力ではないのだが、竜人側も非戦闘員が多いのか、それほど攻撃に威力はなく、相手を怯ませるだけに終わっている者も多いのであった。


時折、竜人族側の戦士から強力な攻撃が放たれる。見れば、先程のリューガが大技ドラゴンブレスを放っていた。その直撃を受けた邪竜霊は消滅していく。ドヤ顔のリューガ。だが、どうやら連発はできないようであった。


防壁の上に立った里長も魔法を放つ。人間界ではあまり見た事のない魔法陣が宙に浮かぶ。竜言語魔法である。そして範囲攻撃魔法が放たれた。魔法の範囲内に居た邪竜霊達が消滅していく。だがこれも連発はできないようであった。


リューが見回した限り、強力な攻撃を放てる竜人の戦士は2~3人程度のようだ。その者達が数体ずつ敵を減らしてはいるものの、なにせ相手の数が多く、焼け石に水と言った状況である。


邪竜霊の攻撃が防壁に直撃してもすぐに壁は破壊される事はない。だが、衝撃に揺らいでいるのがハッキリと見える。ダメージが蓄積していけばいずれ破られてしまいそうな不安感があった。


霊剣が治るまで持ちこたえるのは無理があるとリューには思える。


里長 「なぜこれほどの数が……」


その時、リューと里長の居る場所に向かって、ドラゴンブレスが飛んできた。邪竜霊側も当然、ブレスを放てるのである。


それを見たリューガが慌てて駆けつけようとしたが、さすがに間に合わない。ブレスがリューと里長のいる場所に直撃…


しかし、防壁の前にもう一つ見えない壁が現れ、ブレスを通さない。リューが咄嗟に次元障壁を張ってこれを防いだのである。(リューは時空属性の銀の仮面を着けていた。)竜闘気の戦いにおいても、もちろん、人間の魔法も有効である。


邪竜霊のドラゴンブレスを完璧に防ぎきったリューの魔法障壁にリューガが驚きの表情を浮かべていた。


リューガ 「…少しはやるようだな……」


ふと気がつけば、邪竜霊の攻撃が止んでいた。


見ると、邪竜霊達がやや距離を取り、合体し始める。合体して巨大化していくようだ。無数に居た邪竜霊達が消え、巨大な竜の姿のゴースト数体になる。そして、それらが一斉にブレスを放ち始めた。


リューガなど強力な戦士が居る場所は竜闘気を使って障壁を張りこれを防いでいたが、何箇所か、弱い竜人達がブレスで吹き飛ばされて防壁から転落してしまった。


結界の力で威力が弱まっているようで、ブレスを受けた竜人達はダメージを受けては居たが死んではいないようだった。また、結界もなんとか耐えきり、防壁も破壊されていない。


だが、邪竜霊達が繰り返し何度もブレスを放ってくる。


里の防壁が揺れる。


焦る里長とリューガ達。


だが、突然、防壁への衝撃がなくなる。見れば、攻撃は続いているが、里の防壁の前に魔法障壁が張られてそれを弾いている。


リュー 「まぁ少し休め」


リューが里の防壁の一枚外側に、里全体を包み込むように次元障壁を張ったのだ。


リューガがポカンと口を開けたまま、障壁とリューを交互に見ていた。


リュー 「余計なお世話だったかな?」


リューガ 「むう……」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


だが気に入らん!


乞うご期待!



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