第552話 邪竜霊ってのはなんなんだ?

リュー 「……しかし。どうも落ち着かんなぁ」


実は、話している間もずっと、邪竜霊の攻撃の音がし続けているのだ。


リュー 「邪竜霊ってのはなんなんだ?」


里長 「邪竜霊とは、死んだ後、天に帰れなかった哀れな竜族の魂なのじゃよ……。


太古の昔、儂ら竜人を作り出した竜達が居た。かなりの数が居ったそうじゃ」


リュー 「あ、そこは言い伝えなわけね」


里長 「その竜達、そして竜人族の者達が、死後、汚れた低級な幽気に捕らわれ竜気を汚してしまい、闇落ちした存在なのじゃ」


リュー 「つまり、アンデッド、いや、ゴースト系の魔物ということか…」


どうやら、ゴーストであるため、物理攻撃がほとんど効かないらしい。しかも、元が竜(または竜人)であるが故に、その力は強力で侮れないのだそうだ。


リュー 「幽気と竜気? 竜闘気とは違うのか?」


里長 「竜人族が使う “気” には種類があっての。竜闘気もその一つじゃ。竜闘気は物理的な影響力がある気じゃな。竜気は、戦闘に使わない、物理的な影響力が少ない気じゃ。竜気は竜闘気よりも純粋で繊細なもので、竜人の生命力のようなものじゃな。幽気とは、人間における竜気にあたるものじゃ。人間や動物などの生命力に関係がある」


そして、竜気(幽気)には質の高い低いがあるそうで、高貴な竜気を持っていないと、神と繋がる事はできないのだそうだ。


竜人族の巫女は、禊を行い、汚れた竜気を浄化し、かつ、己の竜気の質を高め神に近づける事で、神と繋がるのだ。


ちなみに、今は霊剣を復活させる儀式を行うため、竜人族の選りすぐりの巫女達が禊を行っているところらしい。竜人の巫女と言えど、神の霊力を下ろすのは簡単な事ではないのだそうだ。


里長が言うには、最近は、人間の世界に質の低い汚れた幽気が大量に蔓延するようになってしまったのだとか。


人間達の世界が長く続き、その間、人間が醜い争いや行為を続けて質を下げ続けてしまった結果、人間の世界には低い幽気が増え、染み付いてしまったのだそうだ。


そのため、悪化する一方の人間界に見切りをつけ、竜人の里は人間の世界と切り離し、関わりを持たないようにした。だが、人間界の汚れ具合は酷くなる一方で、里の若い竜人達の質もその影響を受けて徐々に下がっているのだそうだ。


竜人の里は異界にあるが人間の世界と密接した世界であり、その影響を受ける。さらに、人間の世界に竜人が行くと、嫌でも汚れた人間の幽気に接触して汚れてしまうのだとか。


あまりに汚れた幽気に長く接触し過ぎると、身体内に低い幽気が滲み込んでしまい、とれなくなってしまうらしい。そのような状態の竜人族の魂が、死後、さらに低い幽気に引き寄せられ、巻き取られて戻れなくなり闇落ちして邪竜霊になってしまうのだという。


エリザベータ 「だから言ったでしょう? エライザも人間の世界に居たら、人間達の汚れた幽気の影響を受けてしまうのよ」


リュー 「人間の世界に居るだけで汚れてしまうと言うなら、人間の世界で生まれ育った俺はどうなるんだ?」


里長 「それは問題ないようじゃ…お主、見たところ、不思議な力を持っておるようじゃな? その力には、神気の片鱗を感じる。おそらく、その力が、汚れた幽気を分解してしまう事ができるのじゃろう」


どうやら、綺麗好きなリューが頻繁に使っていた【クリーン】の魔法が、人間界にある低い幽気をも分解してしまうらしい。これは、リューの魔力分解能力のおかげなのであった。


リュー 「へぇ…知らなかった…」


もちろん、リューに育てられたエライザも、日に何度もクリーンで浄化されていたため影響を受ける事はなかったのだ。


エリザベータ 「知らなかった…、そうだったんだ……」


その時、里の竜人が駆け込んできて里長に報告をしていた。どうやら里の結界防壁が邪竜霊の猛攻で揺らいでいるらしい。


里の竜人 「いっ、いかが致しましょう?」


里長 「落ち着かんかリマ。リューガ達はどんな様子じゃ」


リマ 「リューガ様は防壁の上から魔法で邪竜霊達と戦っておりますが、なにせ相手の数が多く。リューガ様の手が回らないところが出ておりまして。このままではいずれ結界が破られてしまうのではないかと」


いつもなら、霊剣の力で邪竜霊を【浄化】して祓えるので、ここまで苦戦しなかったのである。


里長 「他の者達は? ライガやオルガはどうした?」


リマ 「もちろん、ライガ様もオルガ様も対応にあたっております。戦える者は全員、女子供も…」


リュー 「なんだかマズイ状況のようだな。ま、俺には関係ないがな。エライザ、帰ろうか」


それを聞いたエリザベータがエライザの手を握りリューを睨みつけるが…


エライザ 「パパ…!」


リューをじっと見上げるエライザ。


リュー 「…というわけにもいかないか、やっぱり?」


エライザ 「パパならそう言ってくれると思った」


エライザの眼差しに弱いリューであった。抱きついてくるエライザ。


リュー 「仕方ないな……里長、手を貸そうか?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


邪竜霊のドラゴンブレス? ナニソレ美味シイノ?


乞うご期待!



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