第551話 俺はエライザの父親だが何か?

里長の言葉を聞きガックリするダダ。


里長 「なかなか面白い能力を持っているようじゃが、外見は治せても、宿っていた霊力までは戻せないようじゃな」


リュー 「へぇ、そうなんだ…。死んだ人間も生き返らせられるんだがな。時間制限はあるが…」


里長 「その力、おそらく物質には作用できても、神の力にまでは及ばんのじゃろう。やはり、儀式が必要なようじゃ」


リュー 「儀式?」


里長 「うむ、霊力を降ろし剣に宿す儀式じゃ。しかし剣を直してくれたのは感謝するぞ、霊力を宿す器を準備するのにも時間がかかるでの。器があるならすぐに儀式に入れる。と言っても、準備には数日掛かるじゃろうがの。


それまでの間、お主の話を聞かせてもらおうかの…


…して、お主は一体何者じゃ?」


リュー 「俺はエライザの父親だ」


エライザが母親の手を振り切り、リューの腰に抱きついてきた。エリザベータは少し離れた場所から見ている。


里長 「ああ、いや、そういう意味ではない。お主は竜人であろう? エリザベータが外の世界で竜人の男をみつけたと言っていた…


じゃが、そんな事はありえんのじゃよ。世界に竜人は、この里以外には存在しないはずなのじゃからな」


リュー 「俺は存在しているけどな」


里長 「それじゃ。お主は本当に竜人なのか…? そうじゃとしたら、一体どこから来たのじゃ?」


リュー 「そんな事言われても知らんよ。だが別に…世界は広いんだ。この里以外に竜人が居たっておかしくはないだろう?」


里長 「いや、おかしいのじゃよ…。


…まぁ立ち話もなんじゃ、続きは儂の屋敷に行ってゆっくり聞かせてもらおうかの」


リュー 「俺はエライザと話がしたいんだが? というか、さっさと帰りたいんだが…」


エリザベータ 「さっさと帰ればいいでしょ、一人でね」


リュー 「エライザにだって選ぶ権利はあるだろう? まぁ俺を選ぶだろうけどな」


エリザベータ 「エライザは竜人よ。下賤な人間達の中に居たら腐ってしまうわ」


リュー 「またそれか……そんなに人間は下賤か? まぁこの世界の人間達を見ていると否定できないところもあるが」


里長 「ああ、そっちの話も儂の屋敷ですればよかろう」


結局、落ち着いて話ができるなら別に場所はどこでも良いので、リュー達は里長の家に移動する事になった。


エリザベータは、リューに張り付いているエライザを取り返そうとタイミングを伺っていたのだが、ちゃんと三人で話し合えという里長の言葉に逆らえず。


まぁリュー達の家族会議の前に、里長の長話に付き合わされる事になってしまうのであったが。


    ・

    ・

    ・


里長 「さて、竜人の話じゃったな。もともと竜人の数は少ない。つまり、儂が知らぬ竜人などおらぬのじゃよ」


リュー 「そりゃ、狭い里の中で、全員顔見知りだってのは分からんでもないがね。だがさすがに世界中の竜人を知っているというのは言い過ぎだろう? どこか別の場所で誕生した竜人が居たかも知れないし、大昔に別の道を歩んだ者達の子孫がどこかで生き延びていた可能性だってあるだろうに」


里長 「…ありえんのじゃよ。太古の昔、世界を創る手伝いのために竜神様によって我ら竜人は生み出されたのじゃからな。その数二百人。その二百人の竜人は、すべて知っておる。その二百人は全員里に骨を埋めた。誰も、里から出た者はおらんのじゃよ。その後の子孫達もじゃ」


リュー 「単なる言い伝え、大昔の話だろう? 実は、記録に残っていないだけで、里を出た者がいたんじゃないのか?」


里長 「言い伝えではない……なぜなら、儂は創世記の二百人の竜人の最後の生き残りじゃからな」


リュー 「……え? マジ?!


アンタ、一体何歳なんだ?」


里長 「さぁの、1億年か2億年か、もう正確な年齢など分からなくなってしもうたわい」


リュー 「マジカ…。竜人って、そんなに長生きできるものなのか……」


里長 「いや、普通の竜人はそこまでは生きられん。普通はせいぜい一万年、特別長生きの者でもせいぜい数万年というところじゃろう。儂の場合は、里の中心にある竜神樹様から生命力を貰って生きながらえておるだけなので、この里から離れる事ができんのじゃがな」


リュー 「最後の生き残りと言ったな。と言う事は、今いる竜人達は…」


里長 「儂以外は、全員最初の二百人の子孫じゃ。じゃが、儂はすべての子孫について把握しておる。創生期から現在に至るまで、里から出て戻らなかった者はおらんのじゃよ。にも関わらず、外の世界に竜人が居たということは、つまり…


先程お主が言ったように、世界のどこかで、儂ら以外に、別口で作られた竜人が居た可能性があると言うことになる。それはなかなか興味深い話じゃ。さて、お主はどこから来たのじゃ? 親は誰じゃ?」


リュー 「そう言われても、俺にも分からんよ。俺は赤ん坊の時に人間に拾われて育てられたんだ。親の記憶は一切ないんだ」


里長 「そうであったか…。それで、人間の世界で育ったのじゃな……」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


リューの能力ちから


乞うご期待!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る