第548話 だから言ったのにぃ
リュータ 「あ……ああ! 里長から借りたラーズクオンデが……」
リュー 「だから言ったのにな、折れないように気をつけろって…」
キッとリューを睨みつけるリュータ。その時、後ろから声が飛んだ。
『何をやっているリュータ! 相手の得意な戦場で戦ってどうする! ソイツは竜人の
はっとするリュータ。
リュータ 「そうだった…僕としたことが…」
ニヤッと悪人笑みを浮かべたリュータが指を曲げ手を引く。
リュー 「ドラゴンクロウか」
バレバレのモーションからリュータが腕を振り、ドラゴンクロウを放ってくる。
見えない爪撃がリューを襲う。だが…
リューも同時にドラゴンクロウを放ち、威力は相殺されていた。
リュータ 「スケイルが使えるのだからクロウも当然使えるか。だが、クロウは使うものによって威力も精度も違う。今のは小手調べだ、徐々に威力を増してやる。はたしてどこまで相殺できるかな?」
一発、また一発とリュータがドラゴンクロウを放ってくる。リューも挑発に乗ってクロウを放ち相殺してみせる。リュータは徐々に威力を上げて打ってきているが、リューも威力を上げて対抗できている。
だが、そのうち様相が変わってきた。リュータのクロウの威力が頭打ちになってしまったのだ。だが、リューのクロウの威力がリュータのそれを上回り、相殺し切れなかったクロウの余波がリュータへと浴びせられる。僅かであればなんという事はないが……
リュータ 「ちょ、待て、おい…」
リューが威力を上げならがクロウを放ち続ける。まだリューのクロウの上限は来ていないのだ。必死でクロウを放ち相殺するリュータだったが、徐々に相殺しきれなかった余波が強くなっていき、ついにリュータは吹き飛ばされて尻もちを着いた。
リュータ 「ハァ、ハァ、まさか……俺の、全力の、クロウが、全部相殺されるなんて……奴は竜気闘法は覚えたてで不得意なんじゃなかったのか?」
エリザベータ 「精度が悪いのよ。相変わらず不器用ね。それはリューもだけど」
リュータ 「うるさい! 俺は
リュータが放ったのはドラゴンテイル。見えない竜の尾撃である。クロウよりも広範囲に大量の竜気をぶつけ薙ぎ払う技なので、精度よりも力押しがし易い技であった。
だが、これもリューが同じ技で返す。
否、リューの放ったドラゴンテイルのほうが威力が勝っており、相殺されなかった余波でリュータは飛ばされて地面に転がった。
『情けないな…。もう下がってろ。俺がやる』
リュータの後ろに控えていた竜人達の中から一人が前に出てきた。
リュータ 「待てダダ! 俺はまだやれる…」
ダダ 「そんなザマで何言ってる」
ダダと言われた若い竜人が、尻もちをついたままのリュータの胸を軽く蹴ると、リュータは痛みで悶絶した。リューの剣を胸に受けて肋骨が折れているのだ。
ダダ 「引っ込んでろ」
リュータ 「くっ…」
リュー 「…今度はお前が相手か?」
ダダは、リュータと同じくらい若く見えるが、リュータよりは威風を感じる。おそらく実力もリュータよりかなり上なのだろう。
ダダ 「リュージーンと言ったな? 少しはやるようだが…俺をリュータと一緒に考えていると痛い目を見るぞ?」
エリザベータ 「待って!」
エリザベータは慌てた様子であった。エライザを隣に居た竜人に預けると、エリザベータが前に出てきた。
エリザベータ 「出るのはリュータだけ、決着に口は出さないって約束だったはずよ」
ダダ 「ああ、そのつもりだった。だが…外から来た半人前にコケにされて黙っていたら、里の威信に関わる」
エリザベータ 「……私がやる」
ダダ 「ほう?」
リューの前にエリザベータが進み出てきた。
リュー 「……エリザベータ」
エリザベータ 「もうリーザとは呼んでくれないのね」
リュー 「…別れたいと書き置きを残して出て行ったのはお前だろう?」
この世界、結婚や離婚の書類手続きなどはない。エリザベータはトナリ村を出る時に残した書き置きをもって離婚が成立したと考える事も可能だ。
リュー 「…一応聞いておこうか、何が不満だったんだ?」
エリザベータ 「あなたの事は嫌いじゃなかったけど……でも、十年近く一緒に暮らしてみて分かった…
あなたは竜人じゃない。人間よ。人間の世界で生まれ育ったからというだけじゃない、あなたは、別の世界の
人間よ。価値観が違い過ぎるのよ。それに……
私自身が、もう人間達の中に居るのが嫌になってしまったのよ」
リュー 「だからと言って、エライザを連れて行くのは身勝手だろうが」
エリザベータ 「当たり前でしょう? エライザとあなたは他人なんですから。里には実の父親が居るのだから、そちらで暮らすほうが良いに決まってるわ。エライザは竜人の中で立派に育てます」
リュー 「エライザ本人の意志は確認したのか?」
エリザベータ 「まだ子供よ、親に従うのは当然でしょ!」
リュー 「子供は親の所有物ではないぞ」
エリザベータ 「あなたの持ち物でもないわよ。と言っても平行線でしょうね。
ねぇお願い、黙って退いて!」
エリザベータはリューにだけ聞こえるように声を落とした。
エリザベータ 「リュータなんかにあなたが負けるとは思ってなかったけど、ダダは……アイツは危険よ。私もあなたを傷つけたいわけじゃないのよ……」
リュー 「エライザと話もさせてもらえないのではな」
エリザベータ 「…お願い、私が勝ったら、諦めて」
リュー 「俺と戦う気か?」
エリザベータ 「ええ、竜気闘法の卒業試験よ。今回は落第になりそうだけどね。…あなた、ずっと練習サボってたみたいだしね?」
そして、再び大声で話し始めるエリザベータ。
エリザベータ 「あなたこそ、私に勝てると思ってるの? あなたに竜人の
リュー 「まぁ、負けるとは思えないけどな」
エリザベータ 「舐めないで!」
キッとリューを睨んだエリザベータが至近距離からドラゴンクロウを放った。
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次回予告
VS エリザベータ
からの
VS ダダ?
乞うご期待!
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