第545話 リュー、竜人の里へ
ヴェラ 「リュー、竜人の里に行ってきなさい」
落ち込むリューを見て、ヴェラは言った。
ヴェラ 「血が繋がってないからなんだっていうの? あなたとエライザはそんな浅い関係じゃないでしょう。エリザベータともちゃんと話を……いや、それは平行線かも知れないけれど。
少なくとも、エライザが納得してるとは思えないわ。どんな結論になるにせよ、エライザとはちゃんと話をするべきよ」
そう、エライザはおそらく、騙されて里に連れて行かれたと思われる。あれだけリューに懐いていたエライザである。もし、離れて暮らすとなったら、最終的にどちらについていくにせよ、大騒ぎになったはず。リューに黙って行くはずがない。
ヴェラに尻を叩かれ、意を決したリューは竜人の里へ向かう事にしたのであった。
* * * * *
実は、竜人の里は普通に旅をしてたどり着ける場所ではない。それは異界に存在する里なのだ。
その隠れ里に辿り着くためには、
だが、リューは実はまだ、ドラゴンハイウェイを通った事がない。未だ、それを開く能力に開眼していなかったのである。
実は、リューの竜気闘術はあれからほとんど進歩していなかった。それはそうである、エライザが誕生してから毎日、一時も目を離す事なく付き添っていたのだから。訓練などする時間はなかったのだ。
まずはドラゴンハイウェイのゲートを開けるように訓練する必要がある。そこで、リューは不死王の元を訪れた。竜人能力を完成させる方法について相談しようと思ったのである。
だが、さすがは不死王である。すべてを見越して既に新しい魔道具を準備をしてくれていた。渡された緑色の仮面。それは、竜闘気・竜言語魔法を制御する仮面であったのだ。
研究熱心な不死王は、リューとエリザベータの竜気闘法を影から分析しており、それまでの自身の研究成果と合わせて、竜人の能力を完全に解明、制御を可能にしていたのである。
授けられた新しい仮面を装着したリューは、ドラゴンスケイルを身に纏い、ドラゴンウィングを開く。そして一気に空に舞い上がる。
リューの脳内には、世界各地にあるドラゴンハイウェイの配置マップが浮かぶ。その中から、竜人の里へと通じるルートを見つけ出し、選択する。
すると、空中に、光の渦のトンネルが浮かびあがった。世界の創世記に神の使いの龍達が使ったドラゴンハイウェイが、今も変わらずそこに存在していたのである。
開いた光のトンネルに迷わず飛び込んでいくリュー。
光のトンネルはやがて闇のトンネルへと変わり、再び光が見えてきた時、気がつけば、リューは異界へと降り立っていた。
* * * * *
降り立った場所は、元の世界とそれほど大差ない風景であった。緑豊かな高原という雰囲気である。
少し歩くと森が開けて草原となり、その先に視線を向けると、遠くに城壁が見えた。あれがおそらく竜人の里であろう。
そこに向かって歩いていくリュー。城壁に近づくと、城壁の上から声を掛けられた。
竜人の男1 「止まれ! …誰だ? 一応竜人ではあるようだが、見かけない顔だな? 里に住む竜人で知らない顔はないはずなんだが…」
リュー 「俺はリュージーン。ここに俺の娘のエライザとその母親のエリザベータが居るはずだ。遭わせてもらいたい」
それを聞いた男は驚いた顔をし、少し待ってろと叫んで姿を消した。
大人しくリューが待っていると、しばらくして門が開く。門の中には、エリザベータとエライザ、そしてもうひとり若い男が立っていた。
エライザ 「パパ!」
リューを見て思わず駆け出そうとしたエライザを、しかしエリザベータが抱きかかえて離さない。
若い男 「あれはお前のパパじゃない、本当のパパは僕なんだよ?」
エライザ 「違うもん! エライザのパパは、パパだもん!」
やれやれとため息をつく男。
リュー 「お前がリュータか…」
キッとリューを睨みつけるリュータ。
リュータ 「エライザの事をこれまで育ててくれたのは感謝している。だが、エライザは僕の子だ。お前の子じゃない。これ以上僕ら家族の邪魔をしないでくれないか? お前のせいで、僕は父親なのに嫌われてしまってるんだよ」
リュー 「……エライザと話をしたいんだが?」
リュータ 「聞こえなかったか? 帰ってくれと言ってる! お前はもう必要ないんだよ! 大人しく帰らないというのなら、力づくで追い返す事になるぞ!」
そう言うと、リュータの背後に竜人族の男たちがワラワラと姿を表した。
リュー 「やれやれ、話もまともにできないとは。随分と好戦的なんだな、竜人族というのは…」
リュータ 「僕一人で十分だ!」
リュータは周囲の男たちを手で制し、一人で前に出てきた。
リュータ 「エ、エリザベータに聞いてるぞ! お前、人間の世界で育ったせいで、竜人の
リュー 「ヤレヤレ、こんな奴が良かったのか、エリザベータ…?」
そう言われたエリザベータもちょっと微妙な顔をしていた。
リュータ 「ばっ、馬鹿にするな!」
リュータが殴りかかってきた。
その拳を手のひらで受け止めたリュー。
だが、リュータの拳の勢いが思ったより強いのか、リューの手はパンチを止めきれず、押し込まれていく。
リュータは震える声で虚勢を張っているようにも見えたが、やはり竜人、その身体能力は侮れないのかも知れない。
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次回予告
ドラゴンスケイル!
どうだ、半人前には使えまい?(ドヤ)
乞うご期待!
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