第543話 ベイビー生まれたよ
エリザべータとの出会いはあまり良い形ではなかった事もあり、リューはなんとなく警戒・抵抗はあったのだが……、若い男女が長く二人きりで旅をしていれば、肉体の本能が働いてしまうもので。ふと気が緩んだ時にそのような関係になってしまう事は避ける事はできなかったのは仕方がないであろう。
(そうなる事は、ランスロットの狙い通りであったとも言えるのだが。旅の間、ランスロットが一切出てこなかったのも、そうなる事を見越して二人の邪魔をしないように気を使っていたとは、リューは後から聞かされて知ったのだが。)
実は、リューは、子供が欲しいと思った事はほとんどなかった。犬や猫を可愛がっていたので小さい可愛い動物は好きであったが、ペットで十分と思っていたのだ。まぁ子供は居れば可愛いだろうとは想像していた程度である。だが、できたとなれば思ったより嬉しかったようで、本人は自覚がないようだが、少々舞い上がっているようにも見えた。
リュー 「子供かぁ……パパ? 父ちゃん? ダディとか?」
子供ができて、早くも父親ムーブをし始めるリューにエリザベータはなぜか微妙な表情であったが。
とりあえず、大事をとってリューはエリザベータを今のうちにトナリ村に移動する事にした。
リューはエリザベータを妻として、トナリ村で子育てをする事にしたのであった。
* * * * *
トナリ村に帰り、ヴェラ達に紹介した。みな歓迎してくれた。
この世界には、婚姻の届出という手続きはあまり一般的ではない。貴族の世界は色々
税制がしっかりしている領主は、住民の管理が厳しいところもあったが、それでも、人の出入り、生き死にが多い世界なので、あまり正確ではない。
そもそも、リューはどこかの国の国民として登録されているわけではないのだから、届出を出す相手も居ない。(ガレリアではリューは外国人扱いであるし、生まれ育ったガリーザでも追放処分で外国人扱いとなったままである。)
結局、結婚とは、本人たちが宣言して周知すれば終わりなのである。なのでリュー達も、内輪+アルファ(村長とギルマス、ギルド受付嬢)で結婚パーティを行ったのであった。
住む家は、教会と以前住んでいた(現在はヴェラが住んでいる)家の隣に、もう一軒家を建てる事にした。元の家とは渡り廊下で繋げているので離れのようなものであるが。(設計はリューだが、建築はもちろんスケルトン大工部隊である。)
隣にはリューが開店したカレー屋があったのだが、それは10メートルほど移動させる事にした。建ってる家を移動させるなど、地球であれば大工事であるが、ここは魔法の世界であり、リューには無限の魔力供給がある。土属性の仮面を着け、リューが地面ごと移動させてしまって終了である。
リュー 「まるで、ダイダラボッチだな……」
エリザベータ 「だいだら?」
ヴェラ 「私とリューが居た前世の世界に居た巨人よ。山とか土地を移動させる力があったの」
エリザベータ 「そんな種族が居たんだ。サイクロプスよりすごいわね」
リュー 「ただの神話だぞ、実在していたわけじゃない」
リューは新しい家に住み、仕事を一切辞めてエリザベータにつきっきりであった。たまにギルドや国から仕事の打診があったりもしたが、全て断っていた。リューは金はたくさん持っているので働く必要はないのだ。
だが、あまりつきっきりで居られて、エリザベータはちょっと辟易していた事には気づいていなかった。
やがて、子供が生まれた。
女の子であった。名前はエリザベータからとってエライザと名付けた。
竜人の赤ん坊は人間の子と特に代わりはない。
一週間ほどで目を開け、徐々に周囲が見えるようになると、動くものを目で追うようになった。リューが歩き回ると、それをじっと目で追っているのだ。
リュー (なんだ、この可愛い生き物は?)
面白がってエライザの回りを延々と歩き回り、リューはエリザベータに怒られてしまうのであった。
その後もリューは働かず。エライザを溺愛と言ってよい様子で可愛がりながら育てた。母親であるエリザベータよりもリューと一緒にいるほうが多いくらいであった。
つきっきりでエライザの成長を見守り、エライザもリューに懐き、幸せな生活が何年かは続き、エライザはスクスクと成長していった。
だが、一方で、徐々に、エリザベータとリューの関係は徐々に冷えていったのであった。
もともと二人は、深い愛で結びついていたというわけでもない。若さ故に惹かれ会った、肉体の本能で結ばれ子供ができてしまったようなものである。長い付き合いがあったわけでもないため、心の深い部分での結びつきがあったとまでは言えなかったのだ。
また、エリザベータはリューとエライザの母娘以上の親密さに少し嫉妬すらしていた。
さらに、エリザベータには、子供を生んだ事で、ある変化がおきていた。
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
別離
乞うご期待!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます