第513話 じゃぁ、またな

だが、アルバは学園を退学して実家に帰される事になったと言う。ベアトリーチェの従者になる道は断たれてしまったらしい。


リュー 「他に薬をやった生徒達はお咎めなしだったんだろ?」


学校職員及びさらのその上位の運営組織によって検討されたが、処罰しようにも、今回の薬物は新種で、違法薬物に指定されていないので、処罰できないという結論になったのであった。


麻薬に手を出すのはタブーというのが日本での記憶があるリューの感覚であったが、そもそもこの世界ではそれも少し感覚が違うようだ。今回のはたまたま副作用や中毒症状があったので問題があったが、そうでないなら、能力が上がる薬物があるなら使うことも特に忌避されてはいないらしいのである。例えば魔道具によって能力を押し上げる事は、禁止でもなんでもなく、むしろ推奨すらされているのであった。


そもそも、病気や怪我も魔法で治ってしまう世界なので、地球の感覚とは色々とズレがあるのである。


ベアトリーチェ 「残念ですが、義父の判断なので…。違法薬物でなかったとしても、怪しげな薬を警戒なく使ってしまうというのは、従者として適正に問題があると…」


ユキーデス伯爵としては、エド王からベアトリーチェを預かっているという意識がある。王族ともなれば毒殺の危険も常にあるのだから、簡単に薬に手を出すような意識の者を側に置く事はできないと判断したのである。


リュー 「そもそも、なんで薬に手を出したんだ?」


アルバ 「それは……能力が上がると聞いたので……」


リュー 「成績をあげたかった?」


アルバ 「いえ、その…、レイア様に少しでも近づきたくて…」


アルバは超人的な能力を発揮するマグダレイアに魅せられていた。そして、自分も、少しでも敬愛するレイアの能力に近づければと思ったらしい。自分の能力が上がる事は、ベアトリーチェの従者としても良い事だと思っていたのだ。


アルバ 「Zクラスの生徒達が能力が上がったと言っていたし、自分で試してみてもそうだったので、舞い上がってしまいまして……副作用や中毒症状があるというのは知らなかったのです。とは言え、当然警戒すべき事でした。反省しております…」


アルバは悲しそうに目を伏せた。


ベアトリーチェも悲しそうな表情をしていた。


     ・

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だが、学園を去るのはアルバだけではない。


ベアトリーチェ 「リュー……どうしても、学園を去ってしまうのですか?」


リュー 「ああ、仕事は終わったろう?」


ベアトリーチェ 「ええ……アフターフォローまでして頂いて」


まだクラスメイトに冷やかされているジャカールのほうに目をやるベアトリーチェ。そこにヘレンが追いかけてきた。


ヘレン 「リュー、学校をやめてしまうって本当?!」


リュー 「ああ、もとから仕事が終わったらやめるつもりだったんだ」


ベアトリーチェ 「お父様もこのまま学園に残ってもいいって言ってくれてましたよ? もちろん学園長の許可ももらってあるとか」


リュー 「いや。学生生活は懐かしかったけど、やっぱり今更学校通いは面倒臭い」


ベアトリーチェ 「…また会えますか?」


リュー 「ああ、お前の兄貴に頼まれたからな。また危険があったら呼んでくれ、いつでも駆けつける。前払いで大金を貰ってしまってるんでな」


ベアトリーチェ 「リューは私の正体を…」


だが、リューはベアトリーチェの言葉に答えず、背を向けて手を上げ、歩き始めた。


リュー 「じゃぁ、また・・な」


リュー (そういえば、レイアには会えなかったな…まいっか)


マグダレイアは家族が危篤との連絡があり、急遽里帰りしたとの事であった。


校舎を出たリューは、人気ひとけがなくなったところで王都の事務所へと転移した。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


押しかけてきたのは……


乞うご期待!


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