第511話 任務完了とアフターサービス

さて、リューが伯爵から受けた依頼であるが、カザームの悪事が発覚したことで、これも同時に解決した事になる。


依頼の内容は、冤罪で婚約破棄されたベアトリーチェの友人ジャカールの無実を証明して欲しいという事だったわけなので、一連の事件がカザームの仕業であると分かった時点で無罪は証明されたわけである。


さて、その婚約破棄問題だが……


ジャカール自身は、別に婚約破棄をなんとも思ってはいない様子であった。


無実が証明されたとしても、だからといって公爵令嬢に復縁を訴えるつもりはなく、このまま破棄のままで良いと思っているようだった。


なんなら名誉回復も、本人はそれほど重視しておらず、そのまま放置でも良いという態度なのだ。


実家の男爵家も、寄り親であるマリクの実家のカルステ侯爵家さえ真実を知っていてくれれば、さして大きな問題ではないと考えているらしい。


むしろジャカールは親の決めた婚約が破棄されて自由の身、以前から噂のあったヘレンと結ばれるのではないかと噂が密かに流れていた。


だが、そんな噂が耳に入って穏やかでいられなかったのは公爵令嬢のレイカであった。


ジャカールのクラスはDクラスであったが、そこに公爵令嬢が自ら乗り込んで来たのだ。レイカの取り巻きの子爵令嬢のトリーとマッキーがジャカールのもとに詰め寄る。


マッキー 「ちょっと! ジャカール! どういう事?!」


ジャカール 「え? 何が???」


トリー 「何が? じゃないわよ! あなた、無実が証明されたんでしょう!?」


ジャカール 「あ? ああその事か。別に謝ってくれなくてもいいよ? 気にしてない」


マッキー 「はぁ? 何を謝るっていうのよ?」


ジャカール 「いや、僕を犯罪者呼ばわりした事さ。あ、でも、マリク様には謝って欲しいかな。彼はZクラスだけど、一応侯爵家の令息だしね。変な噂が立ったら迷惑だろうから」


そう言われて、後ろに居たレイカは下唇を噛んだ。


トリー 「べっ別に謝る必要なんてないでしょ……、レイカ様は公爵令嬢なんだから。格下の侯爵家に謝る必要なんかないわよ」


マッキー 「そうよそうよ」


ジャカール 「そう、まぁいいけどね。多分マリク様も気にしてないだろうし」


トリー 「そんな事より! なんで何も言ってこないのよ!?」


ジャカール 「? 何を?」


マッキー 「無実が証明されたんでしょ! だったら、レイカ様のところに報告に来なさいよ! レイカ様、ずっと待ってたのよ?」


トリー 「そうよ! レイカ様も、無実が証明されたんなら、再度婚約してあげても良いと仰ってるわ」


ジャカール 「え~?」


マッキー 「レイカ様に頭を下げて、あらためて婚約してくれるようにお願いしなさいよ。さぁ早く」


ジャカール 「婚約破棄を突きつけられたのはこっちなのに、しかも無実の罪を疑われて。なんでこっちが頭を下げなければいけないんだよ……?」


トリー 「あなた、レイカ様と婚約したくないの?」


ジャカール 「いや? もともと親が勝手に決めた婚約だったんだし。レイカ様だって嫌がってたじゃないか、男爵家に嫁ぐなんてあり得ない…って……え?」


だが、レイカは真っ赤になって、頬膨らませ、そのまま泣き出してしまった……


マッキー 「ちょ、レイカ様?!」


トリー 「ちょジャカール、謝りなさいよ! レイカ様を泣かせるなんて……」


レイカはそのまま踵を返し教室を飛び出そうとした。


だが、教室の出口でリューに道を塞がれ、レイカは教室を出る事ができない。


レイカ 「邪魔です、どきなさい」


リュー 「いいのか? 本当の事を言わなくて」


レイカ 「!? …あなたは……」


リュー 「このままじゃ、ジャカールとは本当に終わりになってしまうぞ?」


レイカ 「…っく、だって……ジャガールが……」


リュー 「しょうがないなぁ、俺が手伝ってやろう。はい、回れ右~」


リューがレイカの肩をつかんで回れ右させ、そのままレイカをジャカールの前まで押して行った。


リュー 「この娘は、本当はジャカールが大好きで堪らないみたいだぞ?」


ジャカール 「…え?」


リュー 「どうやら、ジャカールが他の女と仲が良いのを見て、嫉妬してあんな事を言ったようだ。そうだよな?」


レイカはボロボロなきながらアウアウ言ってるだけだったが、否定はしなかった。


ジャカール 「僕はてっきり、レイカ様には嫌われていると……」


レイカ 「…てない。嫌っでない……」


ジャカール 「だって、男爵なんかに嫁ぐのは嫌だって…」


レイカ 「そんな事言ってない! 言ったことない!」


ジャカール 「え?」


リュー 「どうやらそれは、この娘じゃなくて、周囲が勝手に言ってた事みたいだな」


トリー 「だって、公爵令嬢のレイカ様が、男爵家に嫁ぐなんて……」


リュー 「どうやらレイカ様は、ジャカールがヘレンと仲が良すぎて、嫉妬してたみたいだぞ?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


アルバ 「すっ、すみませんでしたっ!」


乞うご期待!



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