第504話 消えた生徒達は……

ジャカール 「よぉ、ヘレン……なんだか久しぶりだな、元気か?」


ヘレン 「元気か? じゃないわよ! あなたこそ、ずっと姿が見えなかったじゃない! 授業にも出てなかったらしいけど、一体どこでどうしていたのよ?」


ジャカール 「いや、俺は……ずっと、ここに居た…」


ヘレン 「ここって、この校舎に?」


ジャカール 「ああ、そうだ。そして、最近は、外に出て連中の手伝いをしたりしていた」


ヘレン 「手伝い? 一体何を?」


その時、牢からマリクが出てきた。


ベアトリーチェ 「マリク様、監禁されていたんですね、お体は大丈夫ですか?」


マリク 「ああ大丈夫だ。もう少し遅かったら俺も消されてたかもしれないけどな」


ベアトリーチェ 「この者達は一体何者なんですか?」


マリク 「それは分からない。ただ、このスージルという男、それとそのボスの二人は、おそらくこの国の人間じゃない」


学園長 「この国ではあまり見ない外国の魔道具使っとったしの」


マリク 「こいつらは、妙な薬を広めていた。最初は国外から持ち込んだのかと思ったんだが…」


ベアトリーチェ 「薬、ですか?」


マリク 「ああ、開発中の能力が上がる薬だと言って、Zクラスの特に成績の悪い連中に配ったんだ。非常に高い薬なんだが、治験に協力してくれたらタダでやると言って」


ヘレン「そんな得体の知れない薬、何か怖いんですけど」


マリク 「ああ。だが、成績が悪い奴の中には手を出した者も居たんだ。追い詰められて……あるいは、楽して成績が上がるならと軽い気持ちだった者も居たかも知れんがな。そして…使ってみたら本当に能力が上がったんだよ。頭も良くなり、魔力も高くなった。


それからはすぐだった。最初に使ったモロルから薬が広まってな。なにせ、実際に目に見えてモロルの能力が上がったのを見てしまったからな。気がついたらZクラスのほとんどの生徒が薬に手をだしていたんだ。


俺は薦められても断ったがな…、みんなが俺のように好き好んでZクラスに居るわけじゃない。落ちこぼれたら廃嫡されると必死だった奴も居たし、卒業後の進路に悩んでいる者も居たからな。


最初は良かった。皆、成績があがったからな。雰囲気も明るくなった。そして、そのうち他のクラスの生徒にも薬が広まっていった。あいつらは、治験のデータは多いほどいいから、タダで薬をやる代わりに、薬を広めてくれと言ってたらしい。


ところが……


…その薬には、恐ろしい副作用があったんだ」


ベアトリーチェ 「あ~やっぱり…」


ヘレン 「それは、どのような?」


ジャカール 「おかしくなってくるんだよ、性格が荒くなるんだ。それまで大人しい性格だった奴が、妙に攻撃的になって……最初は成績が上がって積極的な性格になっただけかと思ったんだけどな」


マリク 「そして、やがて、最初に薬に手を出した連中が、問題を起こし始めた。あちこちで暴力を振るうようになったんだ。そして、ついには女生徒を攫ってきて乱暴したり…」


ヘレン 「それじゃ、暴行された女生徒の噂は本当だったんですね…」


マリク 「ああ、残念ながらな。最初に薬を始めたモロル達にやめたほうがいいって忠告したんだが、薬をやってる時はまったく聞く耳持たなかった。


だが、薬が切れると素に戻る時もあってな、その時に少しだけモロルから話を聞くことができた。薬が効いている間は恍惚として最高の気分になるらしい。だが、切れた後は、自分がしてる事が恐ろしくなってきて、もうやめようと思うらしいんだが…その頃にはもう薬に依存してしまっていたようでな」


リュー 「中毒性があったんだな?」


マリク 「…そうだ。薬を何度も使うと、そのうち薬が切れると酷い禁断症状が出るようになり、やめるにやめられなくなる。だが、続けるほどにさらにおかしくなっていって、問題を起こすようになった。


だが、モロル達が女生徒に暴行したって噂が立った後、モロル達の姿が見えなくなった…


俺はモロル達を探したんだ。最後に目撃されたのはここだった。この旧校舎の地下に入っていくモロル達を見た奴が居てな。そして、調査にきて、連中が恐ろしい事をやってるのを見てしまったんだ」


ベアトリーチェ 「……それは?」


マリク 「連中は、薬を作ってたんだ。ここの奥に薬を作る機械を持ち込んでな」


マリクが牢のある部屋のさらに奥を親指で示した。その壁には扉がある。その奥で薬を作っていたということか。


ベアトリーチェ 「先程、私達を材料にするとか言ってたようですが……まさか」


マリク 「ああ、薬の材料は……人間だったんだよ」


ベアトリーチェ 「!」


マリク 「ああ、部屋の中は見ないほうがいいぞ、なかなかのグロい惨状になっているからな……


…連中は、魔力の強い人間ほど、良い薬の材料になると言っていた。魔力は死んでしまうとなくなってしまうらしくてな。生きたまま、内臓を取り出されて……」


思わず手で口を覆うベアトリーチェ。


マリク 「最初はスラムの人間を使ってたらしいんだが、魔力の弱い平民は材料としては今ひとつだったらしくてな。魔力の強い貴族を狙いたかったが、貴族はガードが堅い。そこで目をつけたのが…」


ヘレン 「貴族の子女の通う学園だった、と…」


マリク 「中でも成績の悪い落ちこぼれ生徒達に目をつけたわけだ。


連中の目的は何だったのか…、金儲けが目的かと思ったんだが、奴らは金は一切取らないんだ」


リュー 「中毒性のある薬を蔓延させて、この国を崩壊させようとしたとか?」


マリク 「その可能性が高いと今は思っている」


ベアトリーチェ 「その、行方不明の生徒達は……」


マリク 「ああ、まだ目立ちたくないからってな、問題を起こした連中や、中毒症が酷くなった連中は、みんな、薬をやると言われてここに呼び込まれ、薬の材料にされていったんだ……中毒患者を材料に使うと、さらに薬の濃度が濃くなっていくらしい」


その言葉に、一同は沈黙するしかなかった。


ヘレン 「…ジャカール、あいつらの手伝いをしてたって、まさか……」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


首謀者捕獲作戦


乞うご期待!


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