第503話 サクッと解決

マグダレイア 「くっ、油断したわ……」


スージル 「いいねぇいいねぇ、あの電撃を耐えるとは…」


よろよろと立ち上がるマグダレイアをみてスージルが嬉しそうに言った。


スージル 「なかなか良い素材が手に入らなくて困っていたところだったが、ここに来て最高級の素材が手に入ったようだ」


ジャカール 「ううう…ヘレ……逃げ…ろ……げぶぅ!」


ジャカールが意識を取り戻して喋り出したが、スージルが蹴りを入れて再び気絶させた。


ヘレン 「ジャカール!」


スージル 「さて、いつまでも騒がれると困るので、全員眠ってもらおうかな?」


スージルの指示で、背後の男の一人が前に出てきて、格子越しに筒状のものをリュー達のほうに向けた。


ベアトリーチェ 「それは何?!」


スージル 「ガスだよ、安心しろ、眠ってもらうだけだ。起きた時、自分達がどうなってるかはお楽しみに」


スージルはそう言いながらガスマスクを被った。背後の男達も同様である。


よく見れば男が構えた筒は背後に背負ったタンクに繋がっている。筒からガスを噴射する機械のようだ。


スージル 「……」


スージル 「どうした、はやくやれ!」


噴射機男 「そっそれが……故障したようで、ガスが出ません」


男は焦って色々筒を弄っているが、シューシュー音はするものの、一向にガスが出て来ないようだ。


実は、ガスは出ている。リューが筒の出口に亜空間設置したのである。吹き出したガスはすべて亜空間に放出されているのだ。(もちろんリューが作った専用の亜空間なのでガスが流れ込んでも何も影響はない。)


スージル 「ちっ、ちゃんと点検しておけよ…! 仕方ない、代わりの噴射機を取りに戻るぞ。どうせコイツラはここから出られはしないんだからな」


リュー 「それはどうかな?」


リューはそう言うと、部屋の入口を塞いでいる鉄格子に手を触れた。


先程電撃が流れてレイアが倒れてしまったのを見ていたベアトリーチェ達は驚く。


だが、一向に電撃が放出される事はなかった。リューが電撃の術式を分解・消滅させてしまったのである。


徐に鉄格子を掴んだリューは、そのまま力任せに鉄格子を曲げ、隙間を広げそこから外に出る。


転移で脱出する事ももちろん可能であったが、相手が何者かも分からないので、なるべく手札は見せないほうがいいと判断した。とはいえ、素手で鋼鉄製の鉄格子を簡単に曲げてしまえるというだけで、リューがとんでもない相手なのは一目瞭然なのだが。


スージル 「なっ?! 何故電撃が流れない? というか鉄格子を簡単に曲げるとか、お前化け物か? おい、こっち来るな! ガスは駄目か? 出ない? くそっ、逃げろ!」


リュー 「逃がすと思うか?」


踵を返して走り出したスージル達だったが、すぐに見えない壁にぶち当たって鼻を痛める事になってしまった。逃げられないようにリューが次元障壁を通路出口に張ったのである。


鼻を押さえているスージル達にゆっくりと近づいていくリュー。


焦ったスージルは腰に佩いた剣を抜き、リューに襲いかかった。


だが、既にリューは【加速】を使い時の流れを逸脱している。ゆっくりと流れる時の中、スローモーションで襲ってくる剣を躱しながら、パンチ・キックを男達に叩き込んでいくリュー。相手からすればとんでもない速度でリューが攻撃しているように見える。一瞬の後、スージルとその部下?達は全員倒れて気を失っていた。


リューが開けた鉄格子の隙間からベアトリーチェ達も出てきていた。ヘレンが倒れているジャカールに駆け寄る。


ヘレン 「ジャカール、大丈夫?!」


ヘレンは万が一のために持っていたポーションを取り出したが、気を失っているジャカールは飲む事ができない。ポーションはかけても効果があるが飲んだほうが効く。特に外傷があるわけではない場合は効果は微妙である。するとヘレンは迷わずポーションを自分の口に含み、口移しでジャカールに飲ませた。


ジャカール 「…うっ……、…ヘレン?」


ヘレン 「ジャカール、大丈夫?」


ジャカール 「あ、ああ、助かった、のか?」


意識を取り戻し、状況を理解したジャカールは少し落ち着いたように見えたが、またすぐに慌てだした。


ジャカール 「全員捕らえたのか? 誰も逃げ出していないな? 良かった。逃していたらエリザが……」


ヘレン 「ジャカール?」


ベアトリーチェ 「これはどういうことなんですか? 説明してもらえますね?」


マリク 「おーい、ベアトリーチェ、俺の事も忘れないでくれ~」


ベアトリーチェ 「は、すみません、マリク様…、リュー、マリク様を出して上げられる?」


リュー 「ああ」


リューは光剣を取り出すと、入口の鉄格子の上下を切断して取り外し、端に投げた。さらにマリクの居た牢の鉄格子も切り開く。


学園長 「な、なんじゃ、その武器は?」


だがリューはニヤッと笑っただけで光剣をすぐに亜空間に収納してしまった。


学園長 「なぁ、今の武器をちょっと見せてくれんか?」


リュー 「駄目だよ、冒険者の切り札は簡単に人に教えるもんじゃないんだよ」


学園長 「そうか、お主は以前冒険者だったと言ってたな」


リュー 「以前じゃない、今でも現役だよ」


そんなやり取りの横で、ヘレンがジャカールを問いただしていた。


ヘレン 「…で、どういう事なの?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


マリクとジャカール事情説明


乞うご期待!


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