第505話 敵のボスを捕えろ
ジャカール 「…すまん。なるべく、仕事は情報の収集・提供だけにして、のらりくらりと誤魔化しながら、薬を広める手伝いはしないようにはしてたんだけどな…」
マリク 「ジャカールを責めないでやってくれ、ジャカールは俺や君達を守るために、アイツラに協力してたんだ。手を出さない代わりに協力すると…。ジャカールが庇ってくれなければ、俺もとっくに薬にされていたところだ」
ヘレン 「そうだったの……」
マリク 「アイツラも、モロル達の代わりに生徒たちに薬を広める手伝いをさせる生徒がほしかったんだろうな。薬で言う事を聞かせてる生徒は、暴走しがちで思うように動いてくれないので、薬を使っていない協力者が必要だったわけだ」
マリク 「それと、エイミの事もあった」
ヘレン 「エイミがどうかしたの!?」
ジャカール 「人質に取られている…。いや、今のところは無事だ。何も知らずに普通に学園生活をしているよ。ただ、連中の仲間になった生徒がエイミのクラスにも居るらしくてな。俺が裏切って教師や警備隊等に通報したら、その生徒にエイミを襲わせるって言われていて…」
リュー (エイミって?)
マグダレイア (ジャカールの妹よ)
ヘレン 「それでさっき、全員捕らえたか確認したのね?」
ジャカール 「ああ、もし裏切った事がカザームにバレたらエイミの身が危ないからな」
リュー (また新しい名前が出てきたな)
ベアトリーチェ 「カザームって?」
マリク 「奴らのボスだよ。そこのスージルとカザームは、微妙に言葉に訛があった。おそらく外国から来たのだろう」
ベアトリーチェ 「…ドネル帝国?」
マリク 「いや、二人の訛はドネル訛とは微妙に違う気がした。まぁこの国は敵が多いからなぁ…」
学園長 「ジフダラードの出身かも知れんの」
ベアトリーチェ 「とりあえず、ここを出ましょう。エイミも保護しないと」
マグダレイア 「リーチェ、コイツラはどうする?」
マリク 「とりあえず閉じ込めておけばいいだろう、…牢屋はまだたくさんあるからな」
男達の体を調べたところ牢の鍵が出てきた。リューとマグダレイアが男達を軽々と持ち上げて牢に放り込んでいく。
マリク 「すごいな……」
ベアトリーチェ 「彼らは竜人ですから」
マリク 「竜人? どうりで強いわけだな」
牢の鍵をかけ、学園長室に戻り今後の対策を話し合うことにした。。
* * * * *
学園長 「…やれやれじゃの。最近起きていた生徒の失踪事件も全て…?」
マリク 「ええ、カザーム達の仕業で間違いないと思います。薬の中毒で限界になった生徒に遺書を書かせた。書けば薬をやるとでも言ったのでしょう。そしてその後は薬の原料に…」
マリクが見聞きした情報によると、原料によってできる薬にグレードがあり、高品質の薬は魔力濃度の高い内臓を使うが、それ以外の部位も爪の先まですべて溶かして低品質の薬にしていたようだとの事。
学園長 「それで、遺体も何も見つからなかったわけか」
首謀者のカザームは、あまり学園には顔を出さないらしいが、ちょうど明日、学園にやってくる予定になっているとジャカールが言う。
今ならまだ、カザームはスージルが捕らえられた事に気づいていない。明日、のこのこやってきたところを待ち伏せして捕らえてしまおうという事になった。
そんな単純な作戦で大丈夫か? とリューは思ったが、捕物は学園長の連絡で警備隊が本格的に動き出す事となったため、リュー達は蚊帳の外になってしまった。
ただし、ジャカールは、カザームを油断させるための囮になる事を志願した。ジャカールはカザームとも顔見知りなので油断するだろうと。それは認められ、また、その護衛として、リューがついていく事も了承された。
まぁあくまで最初に油断させて罠に誘い込むだけで、あとはすぐに下がって警備隊の騎士達に任せるという条件でだが。
* * * * *
翌日……
カザームはのこのこと一人で西棟旧校舎に姿を表した。ジャカールが出迎える。
カザーム 「ん? お前はジャカールだったか? スージルはどうした?」
ジャカール 「スージルさんは別の部屋でカザームさんを待っています。こちらです……」
カザーム 「ソイツは?」
ジャカール 「新しい仲間のリューです」
小さく会釈してみせるリュー。
カザーム 「そうか……ってどこへ向かっているんだ?」
ジャカール 「すぐそこですよ…もうつきました…」
カザーム 「…これはどういうことだ?」
広場になっている場所までカザームを誘導すると、周囲から警備隊の騎士がわらわらと出てきてカザームを取り囲んだのだ。
カザーム 「おまえ、裏切ったのか」
ジャカールとリューは速やかに警備隊の輪の外まで下がる。
カザーム 「スージルはどうした?」
警備隊長 「逮捕済みだよ」
牢に閉じ込めたジャカール達は、昨日のうちに警備隊の留置場に移送済みである。
カザーム 「それで、私も逮捕する、と言いたいわけか?」
警備隊長 「大人しくしろ、もう逃げ場はない」
カザーム 「ふん、やってみるがいい、できるものならな!」
カザームの不敵な発言に、騎士が何人か逮捕に近づいたが、カザームまで5mほどのところまで近づいたところでカザームの体から電撃が飛び、騎士達は倒れてしまった。
隊長 「雷属性の魔法使いか?!」
カザーム 「魔法ではない、護身用の魔道具さ。近づいた者全員に自動的に電撃を放つんだ。さて、私も忙しいんだ、帰らせてもらうよ?」
隊長 「逃しはせん!」
取り囲んだ騎士達が魔法障壁を張って備えるが、カザームは平気でその囲みに近づいていく。
カザームが騎士達まで接近し、ついに電撃が飛び始めるが、騎士達の魔法障壁がそれを防いだ。
騎士達はこのまま一気に逮捕したいところだったが、電撃は一歩近づくごとに強くなっていき、ついには障壁が破れてしまう。次々電撃に撃たれ倒れていく騎士達を見ながら、薄笑いを浮かべながら歩き続けるカザーム。このままでは逃げられてしまいそうだ。
リュー 「…なあ、手を貸そうか?」
― ― ― ― ― ― ―
次回予告
カザームに近づくリュー。
カザーム 「もしかして頭悪いのか? お前も電撃の餌食だ」
乞うご期待!
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