第502話 レイア、率先して出るも撃沈

学園長 「最近は、ドネール帝国のために戦争に役立つような魔道具ばかり作らされておるらしい。儂の友人は生活に役立つような魔道具が作りたいと常々…」


リュー 「やれやれ、話が長いのはどこの世界の学園長でも共通かね…」


学園長の話はそれなりに興味深かったが、いつまでも講義を聞いているわけにもいかないので、リューは扉を開けた。扉の中は通路になっており、さらにその奥にもう一つ扉があった。


リューはズカズカと廊下に踏み込んでいき、奥の扉を開ける。その扉を開けてみると、中は牢屋になっていた。中央の通路を挟んで両側に複数の牢がある構造である。そして……牢の中には人の気配があった。


マリク 「…だ……れだ…?」


窓のない牢屋は真っ暗であった。ヘレンが明かりを灯す魔法で照らしてみると、牢屋の中の粗末なベッドに寝ていた男は顔を上げてリュー達を見た。


ヘレン 「……マリク様!」


その顔は、ずっと行方不明だった落ちこぼれの侯爵令息マリクであったのだ。


ヘレン 「マリク様、私です、ヘレンです!」


マリク 「ヘレン? ヘレンなのか?! どうしてここが……ここは危険だ、早く逃げるんだ! そして警備隊に知らせてくれ! ここではs」


『余計な事をしゃべるんじゃないよ』


背後から男の声がする。同時に、通路の上部から鉄格子が降りてきて、リュー達は閉じ込められてしまった。


マリク 「スージル! くそ…見つかってしまったか…」


振り返ると、数人の男が通路を塞ぐ鉄格子の向こう側に立っている。


ヘレン 「……ジャカール!」


よく見ると、男達の後ろにジャカールの姿もあった。


ジャカール 「ヘレン? 何故来た……それにベアトリーチェ様に……学園長まで?」


スージル 「せっかくジャカールが必死で庇って近づけないようにしていたのに、無駄になってしまったな? 来てしまったからにはもうここから出す事はできない」


ジャカール 「約束が違う、彼女達には手を出すな!」


学園長 「彼女達って、儂は入っとらんのか?」


スージル 「そうはいかないさ。なかなか高純度の魔力を持った貴族の娘達じゃないか? これは良い材料になるぞ」


学園長 「…入ってなくてよかったみたいじゃな」


そう言いながら後ろに下がっていく学園長。


リュー(ジト目) 「学園長……」


ジャカール 「くそ、そうはさせるか!」


スージルと呼ばれた男に殴りかかろうとしたジャカールだったが、背後に居た別の男に後頭部を殴られ倒れてしまう。


スージル 「馬鹿な奴だな。もうちょっと利用できるかと思ったが、もういい、こいつも材料にしてしまおう…」


マグダレイア 「ちょっと! こちらは無視なのかしら?」


オークルも元騎士で学園の警備員ではあるが、歳で引退した人物である、この中では、竜人であり、ベアトリーチェの護衛でもある自分が出るべきだと、マグダレイアは進んで前に出てきたのだった。


スージル 「いやすまんね……ほう、これはまた、なかなか素晴らしい魔力量じゃないか。まずはお前から材料にしてやろうか」


マグダレイア 「材料って何の事だか分からないけど、できると思ってるの? こんなモノ…」


だが、不用意に鉄格子に触れたマグダレイアは、小さなな悲鳴とともに膝をつく事になった。


ベアトリーチェ 「レイア!?」


スージル 「馬鹿め。その扉には電撃の防御魔法が掛けられているのだ。触れればただでは……


…思ったより元気そうだな? 並の人間だったら泡を吹いて気絶してるはずなんだが、さすが高位貴族の娘達というところなのか?」


竜人であるマグダレイアは並の人間より遥かに耐久力があるため、少し痺れたくらいですぐに回復する事ができたのだが。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


リューの出番です


乞うご期待!



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